第43話 冒険者デビュー
この世界に転生して、俺もついに、ギルドカードを作る事になった。
俺の記入した登録用紙と、推薦人であるミーシャのギルドカードが、作成機にかけられる。
コピー機の様な見た目の作成機で、登録用紙とミーシャのカードをスキャンして、新たなギルドカードを排出する。
「これがあなたのギルドカードです。」
ルル姉にカードを手渡される。
おお、これがギルドカードか。
ここで、ルル姉からギルドの説明を受ける。
ギルドカードにはランクがあり、新規冒険者の俺はF級スタートとなった。
ちなみにミーシャはC級冒険者だった。
俺の魔力量の多さから、飛び級スタートもありえたのだが、そこは断った。悪目立ちしたくないし。
依頼の受け方、報酬の受け取り方、その他諸々、教えてもらった。
「で、このカードはどうすればいいんだ?」
カード一枚渡されても、持ち運びに困る。
つか、ミーシャはどうしてるんだろ。
「私?私は普通にポシェットにしまうけど?」
ミーシャはポシェットにギルドカードをしまう。
そんな装備、持ってたっけ?
つか、ドラゴンの姿の時は、どうしてんだよ。
「それなら、降魔の腕輪にしまえますよ。」
「はい?」
ルル姉が教えてくれたが、よく分からんぞ。
「その降魔の腕輪、一段階限定解除されてますよね。だったらアイテムを八つほど、保存できるはずです。」
まじかよ。
そんな機能があったのか。
試しにギルドカードを降魔の腕輪に近づける。
ギルドカードが降魔の腕輪に吸い込まれる。
おお、ほんとに保存機能があるのか。
あと七つ、アイテムが持てるんだな。
こうしてギルドカードを手に入れて、俺たちはギルドを後にした。
ミーシャの討伐依頼が、ギルドの掲示板に貼り出されていた。
もっとも討伐対象の名前はミシェリアで、似顔絵はドラゴンの姿の物。
その似顔絵は、全然似ていないが。
ミーシャがとことこ歩きだす。
俺もミーシャの後ろをとことこ歩く。
ミーシャが早足になる。
俺も早足になる。
ミーシャが立ち止まるので、俺も立ち止まる。
「なんでついてくるのかな?」
なぜかミーシャが、キレ気味に聞いてくる。
「え?だって俺、行く当てないし。」
そう、ここからの展開は、ミーシャ次第だ。
「あんたねえ、」
ミーシャは顔をヒクつかせる。
「あんたは、あのホームの書庫に出入りするために、ギルドカードがほしかったんじゃないの?」
「えー、本なんか見てないで、外の世界を見ろって言ったの、ミーシャじゃん。」
俺はすぐさま反論する。
反論出来ないミーシャは、いきなり殴りかかってくる。
俺は左手で受け止めると、右手を部分竜化させてミーシャの首をつかむ。
が、ここが街中である事に気づき、すぐに竜化を解除する。
「けほ、」
首に掌底を受けたミーシャは、反射的に左手で俺の右手首をつかむ。
「ぶ、部分竜化なんて、私にも出来ない。あんなに弱かったあんたが、なんで。」
ミーシャは悔しげに、表情を歪ませる。
「なんでって、ソーマの泉を飲んだから?」
俺が強くなった理由は、これだ。
「ソーマの泉って、あのソーマの泉?」
なぜかミーシャは、驚いてる。
「あのソーマの泉って、他にもソーマの泉はあるのかよ。」
って思わず返したが、この事って、言わない方がよかったか?
「な、なんで生きてるのよ。」
「は?」
なんか物騒な事を言われたが、意味が分からん。
「ソーマの泉は、魂の根源、ドラゴニックオーラを極限まで引き出すわ。」
「ああ、そういや、身体の奥底から、力があふれてきたな。あの時。」
ミーシャの説明で、俺は納得した。
「ドラゴニックオーラを極限まで引き出されたら、後は死ぬだけよ。」
「え?」
物騒な物言いには、そんな意味があったのか。
「あんた、何者?」
ミーシャは無表情で俺をにらむ。
何者って聞かれても、返す言葉がない。
「そう言えばあんた、私の呪いを解いたよね。まさか、あんたの血には、状態異常に耐性があるって事?」
やばい、ミーシャにバレた!




