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第40話 外の世界へ

 千尋峡谷の果てに建てられた、ホームという建物。

 ここから千尋峡谷の外の世界に、出る事が出来る。




 俺とミーシャは、大きな扉の前に立つ。

「いよいよ千尋峡谷の外に出るけど、覚悟はいい?」

「ふ、どんな覚悟だよ。こちとら早く外の世界が見たくて、うずうずしてるのに。」

「ふーん、なんか震えてるみたいだけど、気のせい?」


 確かに俺の身体は震えている。

 初めて見る世界に、不安がない訳ではない。

 だけど、外の世界への好奇心の方が、勝ってる。


「気のせいだ。とっととここからおさらばしようぜ。」

「ふふ、分かったわ。」


 ミーシャは扉の横に設置してあるカードリーダーに、カードをスキャンさせる。

 このカードは、通行許可証でもあり、身分証でもあると、ミーシャが言ってた。


 ガゴン。

 鍵が外れる音がして、大きな扉がゆっくり開いていく。


 ミーシャが歩きだしたので、俺も後に続く。


 ミーシャが扉を出ると同時に、扉が閉まりだす。


 ガゴン。

 再び扉に、鍵がかけられる。


 ここはどこかの室内らしい。

 部屋から出ると、廊下に出た。

 突き当たりの扉を開いて、中に入る。


 そこは大広間になっていた。

 数人の人間がたむろしていた。

 大広間の半分はイートインスペースらしく、机と椅子があり、何人か食事している。

 俺たちが出てきた扉の横に、カウンターらしき設備があって、中にはふたりのお姉さんが立っている。

 壁には大きな掲示板があり、多くの紙切れが貼られている。


 俺がキョロキョロしてるうちに、ミーシャはとっとと出ていく。

 俺は慌ててミーシャの後を追った。


 建物から出て、俺は初めてこの世界を見る。


 中世を思わせる西洋風の街並み。

 道路は石畳で舗装されているが、乗り物の類いは見当たらない。

 通行人が数人いるだけで、のどかな街並みだ。


 俺がキョロキョロしてるうちに、ミーシャはとっとと歩きだす。

 俺は慌ててミーシャの後を追った。


 ミーシャは無言のまま、歩き続ける。

 俺はミーシャの横を歩こうとするが、ミーシャが足ばやに前に行く。

 仕方ないので、ミーシャの後ろを歩くのだが、ミーシャはなぜかイラだっている。

 どうしたのかな?と思ってたら、建物と建物との間の狭い路地に、ミーシャは突然入っていく。


 俺も慌てて、角を曲がる。

 そこでミーシャは仁王立ちしてた。

「なんでついて来るのかな。」

 ミーシャはなぜか、怒ってるご様子。


「なんで、って言われても。」

 行く当てのない俺は、ミーシャについてくしかない。


「私の後をつけられても、迷惑なんですけど。」

 ミーシャは冷たく言い放つ。

「えー、俺、行く当てないし、ミーシャだけが頼りなんだけど。」

 俺の両親の家も、どこだか分からんしな。

「はー、ほんと、世間知らずね。」

「むか、」


 本当の事を言われ、俺もムカつく。

 そして思い出す。


「そう言えばミーシャ。身分証明書って、どこで手に入るんだ?」

 俺のひと言に、ミーシャの目が泳ぐ。

「教えてくれるんじゃなかったっけ?」

「あれー?そんな事言ったかしらー?」

 ミーシャは露骨にしらばっくれる。


「ふーん、ミーシャって約束破るんだ。」

 俺は左手を部分竜化させ、ミーシャに迫る。


「ば、ばか!」

 ミーシャは俺の左手を、両手で隠すように握る。

「こんな街中で、何考えてんのよ。早く解きなさい。」

「え?」

 いきなり言われても、俺にはミーシャの意図が分からない。

「ど、ドラゴンだってバレたら、殺されるわよ、人間に。」

「あ、そう言う事。」

 俺は左手の部分竜化を解く。


 ミーシャはホッとひと安心した後、慌てて両手を離す。

 だが逃がしはしない。

 俺は左手で、咄嗟にミーシャの右手首をつかむ。


「な、何よ、離しなさいよ。」

 ミーシャは左手で、俺の左手を引きはがそうとする。

「ミーシャこそ、約束守れよ。」

 俺は左手に力を込める。


「いた!わ、分かったわよ。分かったから離してよ。」

 俺は左手を離す。

 俺が握ってた所が、アザになっていた。

 俺はいたたまれない気持ちになり、そのアザに右手をかざす。


「な、何よ。」

 ミーシャは慌てて右手を逃す。

「おい、動くなよ。」

 俺は左手でミーシャの右手を握り、かざした右手の下に持ってくる。

「ひ、」

 ミーシャがなぜか怯えてる。

 だが、俺はミーシャに構わず意識を集中させる。

 そして回復魔法を使った。

 俺は右手をどけて、握ってた左手を離す。

 ミーシャのアザは、きれいに消えていた。


 俺はホッとする。

 全身アザや傷だらけのミーシャに、新たなアザを刻みたくなかった。


「え、何これ。あんたが治してくれたの?」

「う、うん。」

 ミーシャは素直に喜んでいる。

 元は俺が傷つけたのにと、少し申し訳ない気持ちになった。


「ありがとう。」

 ミーシャは弾ける笑顔でお礼を言う。

「いや、いいって。元は俺が傷つけたんだし。」

 俺は照れて、目をそらす。

 ミーシャの笑顔が、一瞬ニヤけるのに、俺は気づかなかった。


「そうね。それじゃあ教えてあげるわね。」

 ミーシャは一枚のカードを取り出す。



「このギルドカードの作り方。」

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