表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/272

第32話 ドラゴンと人間

 ミーシャと共に、千尋峡谷の果ての建物に転移してきたのだが、ミーシャは魔素が尽きて眠りに落ちた。

 そして俺は、竜王の友だと言うおっさんと再会する。





 俺が行ってきた獅子の穴。

 そこはおっさんの知る獅子の穴とは、違う物らしい。


「そうか、獅子の穴に何かがあったんだな。」

 おっさんは俺の話しから、そう導き出す。


「それに、学長代理に何かあったとしか思えないな。」

「学長代理?そんなヤツ居なかったぞ。居たのは教頭先生ってヤツだったぞ。あ、俺は会わなかったけど、校長も居るらしかったぞ。」


 俺の発言に、おっさんの怒りがこみ上げてるらしい。

 ひたいをピキピキさせながら、何とか怒りを抑えてる。


「なあ、その教頭って、どんなヤツだった。名前は?」

「名前までは知らんよ。」


 俺はおっさんの迫力に気圧されてしまう。

 何がおっさんを駆り立てているのだろうか。


「まあ、ちょっと神経質そうで、生え際が少し後退してたな。」

 俺は教頭の特長を思い出す。

「やっぱりエドーガじゃねーか。」

 おっさんはパシんと右手で顔をはたく。

 おっさんはあの教頭に、心当たりがあるらしい。


「訓練施設の学園化は、質の低下を招く。だから歴代学長は反対してたんだが、エドーガの野郎、学長代理に何かしやがったな。」


 おっさんの話しっぷりから、おっさんが獅子の穴の関係者である事は、確かだと思う。

 だけど、いつまでも獅子の穴の話題を続ける訳にもいかない。


「おっさんの知ってる獅子の穴がどういう所だったかは、もうどうでもいいよ。俺が体験してきた事が全てだからな。」

「そうだな。おまえは洗脳される事もないから、男を鍛えられる良い機会だと思ってたんだがな。」


「男を鍛えるか。だからドラゴンに戻ったら死ぬ首輪をつけられたのか。」

「何、ドラゴンになったら死ぬ?それで何を鍛える?」

「いや、俺が知るかよ。千尋峡谷を登りきったら、いきなりつけられたぜ。首輪を。こいつみたいに大きさは変わらないみたいだから、ドラゴンに戻ったら首がしまるみたいだぜ。」

 俺は左手首の降魔の腕輪を見せる。

 こいつは俺の身体に合わせて大きさが変わる。


「そうか。俺たちは人間に変化出来るとは言え、基本はドラゴン。ドラゴンの状態で鍛えないなら、獅子の穴の存在価値は、最早皆無だな。」

「まあ、人間の状態でも、鍛えられるとは思うけどな。」

「ははは、確かにおまえの言う通り、時間に無駄だな。」

「全くだ。」

 こうして獅子の穴の話題に触れるのも、時間の無駄だ。

 話しの進行が、止まってしまったからな。


「で、おっさんはミーシャの事知ってんのか。ミーシャ様とか言ってたしな。」

 やっと獅子の穴の話しから、話題を切り替えられた。


「ミーシャ様について話す前に、おまえに聞きたい。なぜミーシャ様をここに連れてきた。」

「そりゃあ、ミーシャが来たがってたからな。途中でのたれ死んでもかまわないって言うから、転移魔法で連れてきた。」

「それはおかしい。呪いを背負ったミーシャ様は、千尋峡谷で生きる事を余儀なくされている。ここに来る理由がない。」

「ああ、その呪いなら、俺が解いたよ。」

「なん、だと、?」


 おっさんは驚いて俺を見る。

 だが、すぐに納得がいったようだ。


「そういえばおまえは、状態異常の類いが効かないんだったな。おまえの体内を流れる魔素のおかげか、血液のおかげか。そいつを体内に取り入れれば、状態異常は治る。かもしれんな。」


 なんと、おっさんも俺と同じ事を思いつく。

 だが、これが実際そうなのだとバレたら、俺の危険が危ない。


「ふ、図星か。」

 びっくりして言葉が出ない俺を見て、おっさんは確信する。


「なあ、この事は黙っててくれよ。」

「そうだな。おまえの身体が万病に効くって噂が広まったら、いや、広まりそうになったら、俺はおまえに殺されるだろう。」

「分かってるじゃねーか。」


 やはり、おれが状態異常に耐性があると言う事は、知られてはいけない事だろう。


「で、ミーシャはなんで呪われたんだ。」

 俺の事より、ミーシャの話しに戻そう。


「それはミーシャ様が、帝国の王子の求婚を断ったからだ。」

 へ?帝国?王子?

 この世界のドラゴンは、国を作ってるのかな。畜生道の生き物なくせして。


「何も驚く事はないだろう。ミーシャ様のあの美貌なら、いい寄るヤカラも後を絶たない。」

「いや、俺が驚いてるのは、ドラゴンが国を作ってるって所だ。」

「ふ、俺たちは人間に化けれるんだ。人間の様に暮らしても、おかしくはないだろ。」

「という事は、ドラゴンって全員、人間に化けれるのか。」

「それが出来ないヤツが、千尋峡谷に落とされる訳だが?」


 ああ、そう言えば、そういう設定だったな。

 ん?という事は、

「じゃあ、なぜミーシャは千尋峡谷に居たんだ。ミーシャは人間になってたぞ。」


「ああ、あそこは人間になれないヤツばかりではない。人間に追われたヤツが逃げこむ場所でもある。」

「ミーシャも人間に追われてたのか?」

「ミーシャ様がふった帝国の王子が放った刺客。それを返り討ちにするのに、ミーシャ様はドラゴンに戻るしかなかったのだ。」



 なるほど。人間にドラゴンである事がバレたため、ミーシャは千尋峡谷に逃げて来たのか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=44752552&size=200
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ