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第30話 ふたりで転移

 人間に変化するのに時間がかかるミーシャは、何かの呪いを受けていた。

 その呪いが解けないか試してたら、ミーシャは怯えだし、そして怒りだしてしまった。





「うおっ。」

 俺の目前で、ミーシャは突然ドラゴンに戻る。

 密着する程近くにいた俺は、身体の巨大化に吹っ飛ばされる。


「サム!って、あれ?」

 ドラゴンに戻ったミーシャは、なぜか吹っ飛んでる俺を、目で追った。

 俺は後方宙返りを決めて着地する。


「なんであんたが吹っ飛んでるのよ。」

 ミーシャにはそれが、理解出来ないらしい。

 ミーシャがドラゴンに戻るのに時間がかかり、俺は余裕で離れてるはずだからだ。


「ミーシャ、人間に変化してみな。」

「う、うん。」

 ミーシャは瞬時に人間に変化する。


「よし!」

 成功だ!俺は思わず両手を握る。


「な、何よこれ。」

 ミーシャは驚いてる。


「呪いが解けたんだよ。」

「呪い?じゃああんたが言ってた実験って。」

「他人の状態異常を治せないかなーってね。」

「そう、そう言う事ね!」


 ミーシャは遠くをにらむと、一瞬でドラゴンに戻る。

 そしてそのまま飛びたった。


「おい、待てよ!」

 俺もドラゴンに戻ると、ミーシャの後を追う。


 ミーシャは千尋峡谷の廃墟群のはずれに来ても、スピードを落とさない。


「おい、待てって!」

 この先にあるのは、果ての建物。

 その間数百キロ。この間、一切の補給は出来ない。


 俺はミーシャに抱きついて、そのまま地面に落とす。


「離して、離してよ!」

 暴れるミーシャを抑え込む。


「落ち着け!なんの準備も無しに行ける距離じゃないだろ!」

「私は、こんな所に居たくないの!呪いが解けたなら、ここから出たいの!」

「だから落ちつけよ!」


 そんなやり取りの最中、俺の腕の中からミーシャが消える。

 ミーシャが居なくなって、俺はバランスを崩す。

 だけどミーシャは、居なくなった訳ではない。瞬時に人間に変化したのだ。

 バランスを崩して顔面から地面に激突しそうになる俺も、人間に変化して着地する。


「サム、あんたには礼を言うわ。ありがとね。」

 着地した俺の目の前に、人間に変化したミーシャが立っている。

「確かにドラゴンのままだと、途中で力尽きるわね。気づかせてくれて、ありがと。」

 ミーシャはそのまま歩きだす。


「だから待てって。」

 歩きだすミーシャの腕を掴んで、引き止める。

「離してよサム。邪魔しないでよ!」

「だから無謀だって言ってんだよ!」


 以前俺が果ての建物に行った時は、餌の子羊二匹の補給でやっとだった。

 対して今のミーシャは、餌どうこうの前に、全身アザや傷だらけで、ヤツれている。

 途中での補給なしで、行ける距離ではない。


「無謀でも、行くしかないのよ。ねえサム。呪いを背負った私が、どんな思いでこんな所に居たと思う。」

「それは、」

 そんな事、分かるかよ。


「あんたくらいしか、話せる相手が居ないのよ。明確な意思を持たないヤツらと一緒にいるのが、どんなに苦痛だったか、あんたに分かる?」

 ミーシャの言葉に、俺は返す言葉がない。


「無謀でも私は行くわ。こんな所に居る理由がなくなったんだから。例え途中で力尽きても、本望よ。」

 どうやらミーシャの意志は硬いようだ。


「分かったよ。だったら俺が連れてってやるよ。」

 ここは、俺が折れるしかない。


「連れてく?」

「俺、転移魔法が使えるんだ。」

「て、転移魔法って、あんた時空系魔法が使えるの?」

 なぜかミーシャが驚いてる。


「時空系?とりあえず俺が使えるのは、転移魔法だけだけど。」

「そうなの。時空系を使える術者って、多くはないのよ。」

「へー、そんなにレアだったんだ。」

 俺はミーシャの身体を抱きよせる。


「きゃ。」

 一瞬ミーシャの身体がこわばる。

 それを受けて、俺の股間も硬くなる。

「ちょ、当たってる。」

「当たってるって、何が?」

 俺はミーシャのケツに回した手を引き寄せる。

「きゃ。」

 ミーシャは両手で俺の胸を押して、俺から離れようとする。


「おいおい、密着してないと、転移魔法で連れてけないぞ。」

 別にそんな事はない。

 子羊を手に持ったままでも転移出来たし。


「わ、分かった。」

 ミーシャは両手を俺の背中に回す。俺の股間の硬さが増す。


「ま、まだなの。」

 ミーシャは俺の股間の塊から逃れようと、腰をモジモジさせてる。

 それが更なる刺激になる。


「集中出来ないから、黙っててくれよ。」

「わ、分かった。」

 すでに転移先のイメージは、出来ている。

 後は転移するだけだが、もう少し今の状況を堪能したい。


「ね、ねえ、ドラゴンが迫ってきてるんだけど。」

 ミーシャは俺の集中を邪魔しないよう、小声でつぶやく。

 胸元でささやくミーシャの声が、これまた俺の欲情をかきたててくれる。

「ああ、分かってるから、黙れ。」

 俺はミーシャの腰を更に引き寄せ、股間を更に密着させる。

 本当は腰を振ってやりたいが、転移魔法の隠れみのでは、そこまで出来ない。


 廃墟群のはずれから、かなり離れているとはいえ、そこに無防備な人間がふたり。

 それが目についたら、普通に襲うだろう。



 俺はぎりぎりまでドラゴンを引き寄せてから、転移魔法を使った。

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