表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/272

第23話 獅子の穴

 千尋峡谷に落とされた俺は、ついに千尋峡谷から脱出する縄梯子をつかむ。





 俺は縄梯子を登る。

 周りは真っ暗で、上も下も、何があるのか分からない。


 この縄梯子がちぎれた箇所も、結構上の方だと思ったけど、そこから更にありやがる。

 これ、並の体力だと、無理なんじゃね?


 とか思ってたら、縄梯子が終わる。

 俺が手を前に伸ばすと、そこには何もない。

 前に伸ばした手を、下に降ろしてみる。

 地面らしきものに触れる。

 俺は真っ暗な中、その地面らしき所に、はい登る。

 俺はその場にしゃがみこむ。


 俺の後ろは、千尋峡谷の切り立った崖。

 他の方位はどうなってるのか、見当もつかない。

 なので、ここから落ちたら、転移魔法で戻る事も出来ない。

 ドラゴンになって飛ぼうにも、暗すぎて上も下も分からない。


 このままここに居続ける訳にもいかないんで、俺は四つん這いになって、手で地面を確認して進むしかない。


「ふふふ、」

「誰だ!」

 暗闇の中から突然、誰かの声がした。


「久しぶりだねぇ、千尋峡谷をはい上がってきたヤツは。」

「どこに居る!」


 声の出どころを探ろうにも、なぜか声は反響していて、その出どころが分からない。

 周りを壁らしき物で、囲われてるのだろうか。

 つか、やられた。

 キョロキョロしてたら、千尋峡谷の方向が分からなくなった。


「おい、どこだよ!」

 俺は気配を探ってみるも、これまたよく分からない。

 ならば、ドラゴンに戻ってみるか。

 辺りの魔素の流れを読む能力は、ドラゴンの方が優れている!


 ガシ!

「ぐっ」

 俺がドラゴンに戻ろうとしたら、首に痛みがはしる。

 俺の首に、何かぶつけられたらしい。


 ピカ!

 俺が首に手を回すと、突然スポットライトに照らされ、俺の目がくらむ。


「ドラゴンに戻らない方がいいよ。」

 俺は声のする方を振り向く。今度は反響していない。

 一瞬目がくらんだが、俺はあらゆる状態異常に耐性がある。

 今は普通に見える。

 だけどそれは悟られたくないんで、俺は半目のまま声のした方を見ながら、首に手を伸ばす。


 俺の手が触れた物。

 それは首輪だった。


「死にたいんだったら、戻ってもいいけどね。」


 そう、ドラゴンに戻れば、人間の五倍くらいの大きさになる。

 首輪をしたままドラゴンに戻れば、首が引きちぎれるだろう。

 まあドラゴンの大きさは変えられるので、人間と同じ大きさのドラゴンに戻れば、引きちぎれる事もない。

 つか、俺は最近、人間サイズのドラゴンにしか、戻っていない。

 この事も、バレない方がいいだろう。


 俺に浴びせたスポットライトが消える。

 辺りは月夜くらいの明るさになり、ここの様子も、ある程度分かるようになった。


 ここはそこそこの広さの体育館みたいな場所だった。

 かまぼこ型の天井。

 前方にある舞台。

 うん、どう見ても体育館です。

 あれ、千尋峡谷はどこ行った?


 そして俺に話しかけてきたのは、品の悪そうなおばさんだった。

「ひひ、付いてきな。」

 おばさんは体育館の左後方の扉を開ける。


 この先は長い廊下だった。辺りは月夜くらいの明るさしかない。


「あんた、えらく慎重なんだね。」

 おばさんは歩きながら、俺に話しかけてくる。

 だけど俺は、話す気になれない。

 ここはどこなのか。このおばさんは何なのか。

 この警戒心から、雑談など出来ない。


「大抵のヤツは、私に襲いかかろうとドラゴンに戻って、死んじゃうんだけどね。ひひっ。」

 おばさんは警戒中の俺に構わず、話してくる。


「慎重なだけでは、ここでは生きてけないよ。時には大胆に行動しなくちゃね。ひひっ。」

 おばさんは、とある部屋の前で立ち止まって、扉をノックする。


「私の案内は、ここまでだよ。あとは勝手にやんな。」

 おばさんは俺を残して立ち去った。


 残された俺は、とりあえず扉を開けて、中に入る。

 奥に立派な机があり、その向こうには後ろ向きで、誰か立っている。


 この部屋の感じは、校長室ってところか。

 さっきのは体育館だったし、多分そうだろう。


「君、名前はなんと言うんだね。」

 後ろを向いたまま、突然話しかけられた。

「えと、サムですけど。」

「あー済まなかった。」

 俺が言い終わる前に、セリフをかぶせてきた。


「君みたいな捨て子に、名前なんて無いよな。」

 と言って男は振り返る。

 この男、神経質そうでヒステリックそうだった。


「えと、名前ならありますけど。」

「ほんとに済まない!私が無神経な事を聞いてしまった!」

 こいつはまた、俺の発言にセリフをかぶせてきた。

 俺の話し、聞く気はないみたいだ。


「あー、憎いよね、君をあんな所に突き落としたヤツらが。」

「えと、別にそんな事ありませんけど。」

「そうか、やっぱり憎いよね!復讐してやりたいよな!」

「えと、どちらかと言うと、もう関わりたくないです。」

「そんな君のバックアップしてあげるのが、ここ、獅子の穴だ!」

「えと、獅子の穴ですか?」

「そうだ、ここ獅子の穴は、捨てられた子ども達の心技体を鍛えて、世間に復讐する手助けをするのだ!」


 なんだこいつ。

 俺の話しを全く聞かないし、勝手な思い込みで話しを進めやがる。

 ムキになって突っ込むのは、やめた方がよさそうだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=44752552&size=200
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ