表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/272

第18話 くそ女神の名前は

 ソーマの泉の濃密すぎる魔素を取り込んだ俺は、ずば抜けた強さを手に入れた。

 本来なら精神が壊れる程の魔素だったが、俺はこの世に転生するにあたり、どんな病魔にも侵されない身体になっている。

 そのおかげで、無事だった。




「ぐ、」

 ドラゴンの姿に戻ろうとした俺だが、すぐに人間の姿に戻る。


 ソーマの泉の魔素で超絶パワーアップした俺は、気分も高まっている。

 この高まりを、ドラゴンの姿に戻った時、抑える事が出来ない。

 戻ったらそのまま、おっさんを襲うだろう。

 おっさんもそれが分かってるのか、抵抗体勢をとって身構えている。


「くそ。」

 目の前のおっさんは、今は殺しちゃだめだ。

 だけど畜生道を生きるドラゴンの本能は、後先考えず、おっさんを襲う。

 人間としての理性が、それを抑えているが、この部屋に漂うソーマの泉の魔素は、今も俺の身体に吸収され続けている。

 つか、ドラゴンに戻らないと大気中の魔素は吸収出来ないはず。

 それが今や、人間の身体でも魔素を吸収している。

 これも、この部屋の魔素が濃すぎるせいだろう。


「なあ、人間の姿に戻ってくれないか。」

 俺はドラゴンに戻ったおっさんに頼む。

 相手が人間とドラゴンの姿では、ドラゴンの方が気持ちが高ぶる。

 人間の姿の時は、そうでもなかった。

 でもドラゴンの姿のおっさんを、襲いたい衝動が激しい。

 俺がおっさんを襲うのも、時間の問題だった。


「いやだ。俺も殺されたくないからな。」

 おっさんも、身を守るための武装を、放棄する気はない。

「ばか、分かれよ。ドラゴンのままなら、俺はおまえを襲う衝撃に耐えられる気がしない。でも、人間のおまえとは、普通に話してただろ。」

 とは言え、人間の姿の方が安全だとは、普通思わないだろう。


「いや、口では何とも言える。俺を油断させる嘘だろ。」

「嘘をつけるのは、人間だけだろ。」

「今のおまえは、人間だろ。」

「く、こいつ、」


 おっさんの口ごたえに、俺の気持ちが高ぶる。

 今おっさんを殺したら、この世界の謎が、分からなくなる。

 まあ、それでもいいか、とも思うが、俺は同族殺しはしたくない。


 とりあえず一旦、気持ちを抑えるため、部屋の外に出る。


「ふう。」

 魔素の強制供給が止まり、俺は落ち着きを取り戻す。


 そのまま例のステンドグラスの元まで戻る。


「はあ、過ぎた力なんて、持ちたくねーな。」

 俺はステンドグラスの青いドラゴンに話しかけていた。

「たくぅ、あんたの手下にされそうになって、無理矢理力をつけさせられたよ。」


 俺の後方に、おっさんは戻ってきていた。人間に姿を変えている。

 何やらバツの悪そうな顔をしている。


 魔素の強制供給が途絶えたので、サイズを抑えたドラゴンに戻りたいのだが、それはやめておく。

 まだ、魔素の過剰供給状態だった。

 ドラゴンの本能を、抑えきれる自信はない。


「大きさを調整出来るのなら、部分的なドラゴン化も出来るのかな。」

 俺は独り言のように、おっさんに聞いてみる。


「それは、可能だよ。ほらこの通り。」

 人間に戻っているおっさんは、右手だけドラゴンに戻してみる。


「それも、大きさ変えられるんか?」

「ああ、この通り。」

 おっさんはドラゴンの右手を振り上げ、ひと回りほど大きくする。

 そして人間の腕に戻すと同時に、大きさも元に戻す。


「なるほどね。」

 俺は左腕を見つめる。

 おっさんの部分竜化を見て、おっさんに感じた通りに気力を調整する。


 俺の左腕が、竜化する。

 ドラゴンの本能が刺激されるが、腕一本分、それも利き腕ではないので、人間の理性で抑えこめた。


「なるほどな。」

 俺は左腕を人間の腕に戻す。


「ビービルサム。天啓を受けた子供。」

 そんな俺を見て、おっさんがつぶやく。

「神は一体、何をさせようと言うのか。」


 それを聞いて、あのくそ女神を思い出す。

「別に、なんも考えてねーんじゃね?」


「それはおかしい。ソーマの泉の魔素をあれだけ受けて、まともでいられるはずがない。それにカスミーティア様は聡明な神。何の意味もなく、天啓をお授けになるはずがない。」


「カスミーティア様?あのくそ女神、カスミーティアって言うのか。」

「な、お会いになったのか、カスミーティア様と!」

「あ、やべ、」


 あのムカつくくそ女神の名前が分かったので、思わず口に出してしまった。

 これ、言わない方がいい事だよね。


「カスミーティア様から、特別な能力を授かったのではないのか。今生で何かを成すために。それこそが天啓。おまえが天啓の子供と言われる所以だ。」

「特別な能力っつっても、どんな病魔にも屈しない身体ってだけで、普通のドラゴンより、ちと丈夫、ってのと、あ、やべ、」

 って思わず答えてしまったが、これって言わない方がいい事だよな。


「ほう、どんな病魔にも屈しない身体、か。」


 まずいかも。

 俺が転生者である事が、バレるかも。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=44752552&size=200
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ