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月ヶ瀬菜乃花、悪役令嬢に転生しました

 世の中には、生まれつき勝ち組の人と負け組の人がいる。

私は負け組の人間だ。

特に特出すべき特技もなく、美人でもない。(むしろ、美しくない人種であろう)

だから手に職をつけるべく、簿記の専門学校に通って安定の経理部に入った。

朝の9時から夜の21時まで毎日残業で、土日は惰眠を貪るだけで終わる日々。

周りが恋だの愛だの騒いでいるのを横目に、私は乙女ゲームにハマっていた。

しかし!私が心惹かれるキャラは何故か、モブキャラばかりだった。

そんな私がゲーム仲間から着いたあだ名は「モブ妻」という、なんとも光栄なあだ名である。

こんな私も、遂に運命の出会いをしたのだ。

それは、有名声優達が攻略対象を演じた「花の聖女と伝説の剣~Flower&Sword」略してフラソというゲームだ。

今までは、攻略対象のクラスメイトだとか、ヒロインの隣の席だとかチラッとしか出ないモブばかり好きだった私。

しかし、フラソでは違う!

なんと、チュートリアルでゲームの説明をするだけのキャラ「魔法学園の先輩」に恋をしたのだ!

サラサラの黒髪に、タレ目がちの目に掛けられた眼鏡にハートを射抜かれた。

ゲーム仲間には「チュートリアル先輩」と呼ばれ、攻略対象には今大人気の宮内護や波澤大地という早々たる面々があてがわれる中、魔法学園の先輩は「ポポポポ」っと悲しい機械音。

それでも私は、魔法学園の先輩一筋でゲームを全ルート網羅した。

ルートによっては、魔法学園の先輩がヒロインを助ける為にすぐ死んだり(これには発狂した!)、ヒロインに攻略対象との好感度を上げる手助けをしたり。

でも、魔法学園の先輩の声は「ポポポポポポ」っという機械音のまま。

何度……何度、画面に向かって

「私が攻略したいのは、魔法学園の先輩なのよぉ~!!」

と叫んだか分からない。

そこで私は、運営会社に手紙をしたためた。

どうか、どうか、魔法学園の先輩に声を!!と。

それはもう、分厚い手紙を毎週送り続ける事はや一年。

遂に、運営会社が動いたのだ。

フラソの続編をダウロード購入し、全てのルートを一番に攻略した人の願いを何でも叶えるというイベントだ。

フラソファンは、運営会社の発表に沸いた。

何を叶えてもらうか夢を語るフラソファン仲間の中で

『もちろん、魔法学園の先輩に声を当ててもらうわ!』

と叫んだ私。

みんなからは

『え~!モブ先輩の声なんて、誰がやるの?』

『モブに声なんて、要らなくない?』

そう罵られた。

でも、私は負けなかった!

一番をゲットする為に、それはもう!寝る間を惜しみゲームをした。

(本当は、会社を休んでゲームしようとまで思った程だった)

そしてフラソ発売から1ヶ月経たずに、私は全ルートを網羅したのだ!

すると、ゲームのアイテムボックスに手紙のアイテムが届いた。

『おめでとうございます。あなたが一番目の、全ルート攻略者です。あなたの願いを、この手紙に返信するをクリックして送って下さい』

私はその文字を見て、夜中なのも忘れて

「うぉぉぉ!!」

と雄叫びを上げた。

フラソ仲間にスクショを送りまくり、やっと!やっと!魔法学園の先輩の声が聞ける!!と、狂喜乱舞した。

もう、魔法学園の先輩が喋る度、「ポポポポ」っという機械音を聞かなくて良いんだ!

声優さんは誰だろう?

先輩は落ち着いたキャラだから、須之内さんかな?

出来れば、推しの鈴木達也が良いなぁ~と、私は達成感に包まれてベッドに潜り込む。

『願い事は、魔法学園の先輩に声を当てて下さい』

祈る気持ちで願い事を書き、ベッドの中で送信ボタンを押した。

私の人生で、幸せMAXの瞬間だった。

(運営会社からの回答は、いつかな?)

ゆっくりと目を閉じて


……そういえば、ちゃんと睡眠を取るのはいつぶりだっただろう?


そんな事を考えながら、目覚めたら運営会社から回答来てると嬉しいな~。

なんて、十代の恋する乙女気分で深い眠りに着いた。


『シャーッ』とカーテンが開く音が響き

「お嬢様、いつまで寝ていらっしゃるのですか!」

と、女性の声が聞こえて目を覚ました。

見覚えの無い天蓋付きベッド。

眠くて擦った手は……小さな子供の手だ。

私は飛び起きて、まるでゲームの世界の部屋のような煌びやかな部屋にある鏡に、自分の姿を写した。

そこに映っていたのは、年齢は5歳位のキリッとした切れ長で少しつり上がった目が印象的な美少女だった。

美しいブロンドの髪の毛に、アメジストのような紫の瞳が印象的なキャラ。……私はフラソのゲームで同じ顔をした登場人物を思い出した。

その名も、悪役令嬢のフレイアだ。

推しの声を聞く前に、フラソの悪役令嬢に転生してしまった私は、我を忘れて叫んでしまった。

「何で今なの~~~~!!」

 この日、フラソの悪役令嬢であるフレイアの5歳の誕生日に、私は前世での記憶を取り戻したのだった。


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