死の王 天魔・死愚舞降臨
「ハッハハ!!見ろ、俺の力を!魔王様に賜りしこの力をォ !」
天魔の力か地面が揺れる!
「ご、ご主人様ァ!危険です、逃げましょう!」
加賀美は
崩落……生き埋め……そうでなくともこいつに勝てるか?
最悪の結末ばかり頭に浮かぶ。
だが。
「逃げてばかりじゃあ、あの頃と変わらないだろうが!」
いじめられるのが嫌で隠れて過ごしていたあの日々と!
「……ご主人様、ついていきます」
不思議なもんだよな、その先導者と今は並んでるなんて。
「雑談は済んだか?寝させてくれるなら帰してやってもいいんだぜ?俺は」
天魔は未だに臨戦態勢だったが律儀に待ってくれてたようだ。
答えは。
「NOだね!」
「だったらぁ!今度こそ死にくされェ!」
震動がより激しくなる。
立っていられないほどだ。
「この鉱山……一体どれほどの人間が死んだんだろうなぁ。崩落、滑落、生き埋め、病死。色々あるだろうがそれが俺の力になる」
地面が割れ骨が溢れ出てきた。
「お前らが狩ってきた入り口のスケルトンどもは魔王様が配備したただの骨よ……俺が扱うならそいつらは倍ほどの強さになる」
骨は起き上がり五体ほどのスケルトンになった。
「ご主人様……気をつけて、そのスケルトンのレベル110だよッ!」
『マッピング』を継続していた加賀美がそう言う。
「スキル『死舞踏』……簡単に言やぁ死霊やその類を操作するスキルさ。てめえらは俺に指一本触れることなくその骨にやられて仲間入りするんだよ!」
量も質も明らかに劣るこの状況は絶体絶命だ。
だけど俺は諦めるわけにはいかない。
「加賀美、珠美……すまない。俺に命を預けてくれ」
「「はい!」」
先頭のスケルトンに斬りかかる。容易に受け止められ左右から別々のスケルトンが襲いかかってくる。
「させませんよ!」
右の方を加賀美、左の方を珠美が防ぎ引きつける。
その間に俺は切り結んでいた一体と残りの二体に囲まれることになったがこれでいい。
この中では俺が一番HPが高いからだ。
「クッソォ!」
この世界でレベル差がない戦闘は初めてだ。この装備では大したダメージが入らない。
相手のダメージもそんなに入らないが囲まれてるのが厳しい。
『奴隷魔術』も試してみたが相手のスキルのせいで上手くいかない。
「ただの人間にしてはぁ!上出来だな、お前らぁ」
天魔はまだ元の場所から動いていない。
「だが、もう。飽きた」
バラバラに動いていたスケルトン三体が意思を持ったかのように連携し始めた。
「今までは自動だったがここからは俺が操作してやるよ」
確実に削られていくHP。
どうする、ここからの逆転の手は……
「くっ、うぉっ」
前に出ようとした所で足がもつれる……しまった!!
スケルトン三体を巻き込むように転んでしまう。
態勢を立て直せ、反撃がくるぞ。
素早く起き上がり相手の出方を伺う。
「……?」
しかし相手は動かない。
「てめえ、今なにしやがった……!」
そうか!スキルで生み出されたスケルトンになら俺のスキルが通用するんだ。
「仕方ねえな、動かねえものに頼ってもどうにもならねえ。俺は」
天魔の足元が爆発した……!?いや違う。跳躍したのだ。
「スキルを使わなくてもてめえを倒せるからよぉ!」
跳躍からの自由落下だが正確にこちらの頭に向けて踵を落としてくる。
両手を交差して頭の上でガードをする。
ビシッと骨から悲鳴があがる。
「まだ、だぜ!」
着地から距離を詰めての凄まじい連打、なんとか凌いでいるがダメージは確実に蓄積している。
吹き出る血、抉れる肉。
「どうした!どうしたァ!反撃もできねえのか!」
「……ご主人様!」
「今そちらに向かいます!」
スケルトンが動かなくなったことにより2人がこちらに来ようとする。
「……手を、出すなッ!」
これくらい1人で倒せないでどうする。
すでに手は打ってあるんだ!
「ハッハハハ!スケルトンも動きだしたぜ、これで終わりだァ!」
天魔は今まで使わなかった大鎌を引き抜き俺に向かって振り抜こうとした。
しかし。
「なんで、てめえが……」
天魔の攻撃を止めたものを四人は見ていた。
「なんでスケルトンごときが俺の攻撃を受け止めてるんだァ!?」
スキル『死舞踏』はすでに俺のものであった。
これは使うだけでとんでもない時間とMPを消費するものであったが俺は五体分のスケルトンを掌握した感触はあった。
そこにさらに『奴隷魔術』をかけてスケルトン五体を一体に集約したのだ。
スケルトンロードと名付けよう。
「はぁ……もう動けねえ」
HPとMPを極限まで削ったスケルトンロードのレベルは。
「すごいです、ご主人様!あのスケルトンのレベル180じゃないですか!」
『マッピング』ご苦労。
「というわけだ。本当に終わりなのは……お前だ!」
スケルトンロードが動く、今までのスケルトンとは全く違う速度だ。
「くっ、てめえらごときに!」
天魔はスケルトンロードの激しい剣の突きに防ぐこともできず最後は前向きに倒れた。
「はぁ……はぁ……なんだよ、こっち見んな。てめえらの勝ちだよ」
天魔は息も絶え絶えという感じでこちらに言葉をかける。
「最後に教えてくれ」
「あん?なんだよ、一つくらいならいいぜ」
すでに身体の消滅が始まっている、一つが限界だろう。
「魔王ってのはいったいなんなんだ?」
「さぁなぁ?一つ言えるのはてめえらに似てるってことくらいだな、ハハハ!」
天魔はそのまま笑いながら消滅した。
「さぁ行くか」
スケルトン達を埋葬して鉱山を後にした。
向かうは更に西の町だ!