次の町に向かう途中
そのあと朝になって何事もなく俺たちは村から出た。
見送りはなく昨日あんなにいた村人はついに1人も見かけることはなかった。
「……ご主人様よろしいのですか?」
何も命令してはいないのだが珠美が口を開いた。
「珠ちゃん、ご主人様の行動に口を出すなんて!」
加賀美は絶句している。
「一体なんなんだ、よろしいもなにもないよ。俺は復讐に忙しい。なんならお前をそこらへんに売っぱらってやろうか」
「……すみません。出すぎたことを言ってしまいました」
スキルに抗うほど言いたかったことなのだろう。
「ところでご主人様、今はどちらに向かわれてるんですか?」
加賀美が割って入るように聞いてきた。
「え?鉱山に行くんだけど?」
「へぇ、鉱山に。……」
「「えええええええええええええ!!!」」
見事なシンクロだ。
「な、な、なんで。鉱山なんですかぁ!?さっき断ったって!」
「加賀美落ち着け。確かに断ったさ」
復讐に忙しいからな。ただ……
「ただ進行方向の先に障害があるならたまにはぶつかってもいいだろ?」
「……ご主人様」
珠美が安堵の笑みを浮かべた。
何年ぶりだろうか、この笑顔を見るのは。
そもそもどうして俺たちはあんなに拗れてしまったんだ。
長年の疑問を晴らす気分はまだない。
そうこう歩いているうちに鉱山についてしまった。
入り口からでも分かる程度にワラワラと魔物がいる。
『マッピング』から読み取ると魔物のレベルは50前後と言ったところか。
主にスケルトンやゾンビが多い。
この辺りはせいぜい10前後しか出ないはずなのにこれでは村人は対処できないだろうな
「加賀美、珠美。お前らも一応転移者なんだ。働いてもらうぞ」
2人とも頷いた。
相手も気づいたのだろう。こちらに向かってくる。
俺はただの剣だがないよりはマシだろうと思い拾っていた剣を使う。
加賀美はナイフ、珠美は……メリケンサックを装備している。
「ふっ!」
手始めに一番最初のやつの首を切り落とす。
このレベル差だ、相手は反応もできない。
他の2人も似たようなものだ、やはりこの程度のレベル差は問題にならない。
入り口から出てきた最後のスケルトンにトドメを刺す。
30体も倒してようやく鉱山の入り口は通れるようになった。
「さぁ行こうか。気をつけてな」
鉱山には俺が先頭で入り口をくぐった。
その瞬間にすさまじい殺気を感じた。
「加賀美!『マッピング』だ!」
加賀美の『マッピング』は鉱山などには入らないと機能しない、だからまず最初に使わせようと思っていたのだが予想外の事態に声が大きくなってしまった。
「え……ご主人様、この人?レベル120だよ!」
入り口からおよそ100m先にそれは立っていた。
人……?
「……はぁ。ふざけやがって」
人型のそれは俺たちと同じ言葉を使った。
「なにが寝てるだけでいいだ。破られてんじゃねえか!あの野郎適当な仕事しやがったな!」
1人激昂しているそいつはこっちを見た。
「てめえらもてめえらだ!なに人が安眠してるところに入ってきたんだ!あぁん?!」
どうやらここで寝てたらしい。
「す、すまない。まさか人がいるなんて思わなくて」
「人……まぁそうだけどよ。俺は人は人でも魔人だぜ。もっというと九降天魔の1人よ」
魔人だと……カミサマよぉ。魔人は絶滅したって言ってたじゃん。
「俺の眠りを邪魔した罪は重いぜ」
天魔はそう言うと人間態から変化する。
角と翼を携えた死霊の王がそこにはいた。
「俺の名前は天魔・死愚舞。スキルは『死舞踏』。尋常に死逢おうか」
スキル…!?
こいつもスキルを使うのか……!