絶体絶命
「1万だって……?そもそもお前はなんでそのことを教えてくれるんだ?利益もなにもないだろう」
「利益?そうですね……強いて言うなら強い方につきたかったんですよね。それに貴方からなら……ジュルリ」
舌舐めずりしながらこちらを見定めるルヴィはサキュバスのそれだった。
「ともかく私はあなた方の味方ですよ」
真偽はともかく今はそれを信じるしかないようだ。
「1万といっても質はどうなんだ?」
まず相手のことを知らないと話にならない。
「そうですねぇ、剣牙のレベルに通じる相手なら多くて3人くらいですね」
スキルはもらってないもののレベルは高い奴がいるらしい。
「しかしなんだよこの制度は。入れ替わりが激しくなるだけじゃないか」
率直な疑問だ。
側近は強いに越したことはないがこの制度だといずれ味方が1人もいなくなるだろう。
もしかして……
「魔王の目的は……」
いや勘違いだろう。
そもそも俺は魔王についてまだなにも知らないのだから。
「あとですね。これは定かではないので伝えようか迷ってるんですけど」
とルヴィは前置きをして話す。
「この地に眠るものを蘇らせ従えようとしている者がいるみたいなんです。古き神と呼ばれた者なんですが。」
古き神とはこの地に最初に降り立った者らしい。
女神とも争い敗れここに封印された蛮神。
この地の神話ではいまだにその神に対する信仰が根付いているらしい。
「伝承によると生娘を2人捧げることにより神が眠りより目覚めるとのことです」
「なんだそれは、ずいぶんな神様もいるんだな」
どうやら俺を倒すために躍起になっているらしいな。
嬉しいやら悲しいやら。
「ご主人様、そろそろ」
加賀美はずっと『マッピング』を使って周囲を探索してたようだ。
「方角はどっちだ?」
「北ですね。数は1000は超えてます」
いきなり1000か……んーこれが先遣隊なのか、ただの烏合の衆なのか分からないな。
「北の方からなら間違いないですね。ちょっと私は失礼します」
ルヴィはそう言うと飛んでいってしまった。
案外薄情な奴だな。
「統率が取れてるにしろ、関係ないか」
そんなに俺に挑みたいなら相手してやるよ。
俺はスキル『死舞踏』を発動させた。
「本来お前らが相手する死ノ王の力をその身で味わってみるんだな!」
スキルを発動させた瞬間俺の姿が変わる。
黒いローブと大鎌。
死神を連想させる姿となった。
「……ご主人様、最高にイカしてます!」
珠美はなぜか大興奮している。
「はぁご主人様のスケルトンが4体。そろそろ接敵します。」
「手始めに80レベのスケルトンだ、せいぜい楽しませてくれよ!」
「すごいです!敵がみるみるうちに減っていきます!残り300……残り100……これで最後です!」
加賀美が跳ねた声でアナウンスをしてくる、しかし最後の一体になったところでスケルトンが消滅した。
「なるほど、早速お出ましってことか」
『マッピング』に残った反応に俺はほくそ笑んだ。