思わぬ情報屋
西に進んで来たが特になにも見られない。
鉱山の激闘から皆すこぶる脚が重い。
加賀美は陸上部の長距離走のエースなのだがそれでも戦闘となると違うらしくいつもより元気がない。
「これなんだろうな」
手元に光るのは天魔が落としたものである。
光り具合と材質的に鉱石なのはほぼ間違いないだろう。
「……すいません、私にもわかりません」
珠美も分からないのか。
鉱石には少なくとも俺よりは詳しいかと思ってたのに。
「とりあえず、ステータス開示」
久し振りにステータスを見てみたくなった
哀田剣牙 LV.115
転移者 復讐者 死ノ王
HP1486/1553
MP1108/1108
スキル 『全能無効&吸収』『奴隷魔術』『死舞踏』
コンビネーションスキル 『骸骨卿』
「おぉぉ!ご主人様すごいです!レベル115なんて!」
加賀美が飛び跳ねて喜ぶ。
「……ですがコンビネーションスキルとは一体?」
「あぁ……恐らく天魔を倒した時のスケルトンだろう」
スキル名も俺が思っていたとおりだ。
おそらくコンビネーションスキルとは本来2人以上で発動するものなのだろう、スキルは1人1つだからだ。
他にも気になることがある。
死ノ王とは一体なんなんだ。
思慮に耽っていると上空から影が落とされた。
「はぁーい、転移者たち」
そこにはバサバサと翼を広げながら飛んでいる女悪魔がいた。
「魔物がなにしにきたんだよ」
「ん?あーそうか、君たちは魔族と魔物も知らないんだね」
悪魔はそう言いながらも未だに飛んでいる。
「魔物っていうのは主に魔王様が産み出す低脳な奴らのことだね、魔族ってのはそれとは別に天魔候補となる種族なんだ」
「なるほどありがとうよ。だけどお前が敵なことには変わりないだろ」
そういうと悪魔は舌を出した。
「ち〜が〜う〜!もう話聞いてよ、君たちと話に来たんだよ」
「とりあえず、私の名前はルヴィ。見ての通りサキュバスだよッ。君の名前は?」
ルヴィと名乗った悪魔はやたらフランクだ、しかし……
「まずは降りてこいよ、話すだけなんだろ?」
未だに降りてこない。
「それもそうだね。いやー失敬失敬!人間たちはいつも話聞いてくれないからつい、ね!」
ふわっと降りてきたルヴィの格好はサキュバスと名乗ったイメージとおり扇情的なものだ。
胸元は開いており谷間がのぞき下は超ミニのスカートだ。
「いや、こっちもいきなり喧嘩腰で悪かったな。俺の名前は哀田剣牙、こっちは加賀美と珠美だ」
「ふむふむ。じゃあまずは上から見てた感じの推測を確認したいんだけど。君は天魔を倒したんだね」
いきなり切り込んできた。
「やっぱりやる気なのか?」
静かに剣の柄に手をかける。
「んー話が進まないよー、そこの2人もなんか言って!」
「ご主人様の行動に間違いはないよ」
「……えぇ」
「はぁ……話しかけるグループを間違えたかな。とにかく剣牙は天魔を倒したんだよね?実はそれ非常にマズイんだよね」
やたら真剣な表情をしているルヴィ。
「天魔ってのは魔王様の幹部ってことになってるんだけど天魔になるための方法は決闘なんだ」
つまり?
「じゃあなんだ。もしかして今の俺は」
「うん、君は天魔なんだよね。まぁ死愚舞は元が悪魔の血筋だったからあんな姿だったわけで剣牙はそこまで変わらないと思うよ」
知らぬ間に魔王軍の幹部になってたとは。
「それでここら一帯を牛耳ってた死愚舞がやられてちょっと問題が起きてね。具体的に言うと」
ルヴィは一拍置いて言い放った。
「剣牙に向かってここらの魔物と魔族が集まってきてるよ。数は1万くらい」
いきなりブラック企業就任からのストライキとは。
「自分、やめていいっすか?」
逃げ出してぇ。