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ヒナ

作者: あきんとん

初投稿です。

まだ物書きをし始めて日が浅く文章も荒いですがぜひ読んで見ていただければと思います!

よろしくお願いします^ ^

卵の中でヒナが目を覚ましました。

ヒナはまだ幼く温められた卵の中で裕福に暮らしていました。

しかしヒナは好奇心旺盛な性格でした。

温室の中である程度満足し、体もほどよく形作られ、くちばしも鋭く尖ってきたら、今度は外の世界に興味を持ちました。

殻の外。

幼い頃から多くの親鳥の話を聞いていました。

広大で無限に続く“空”というもの。澄んだ空気の“匂い”というもの。 多種多様な“色”というもの。どれもこれもヒナの興味を十分に惹きつけました。

特に夜が来ると、空高くに“星”というものがいくつも輝いて、それがとても美しいのだそうです。

ヒナは星を見たくなりました。

早く外の世界に出てみたくてたまらなくなり、ヒナは親鳥に聞きました。


「どうやったら外の星を見れるの?」

「殻を破れば良いさ。そしたら星はすぐ近くだ。」


ヒナは殻を破ろうと思いました。

しかし殻は思っていた以上に硬くてヒナは四苦八苦しました。

どれだけ体を揺らしても、声をあげても殻はヒビ一つはいりません。

そこでヒナは閃きました。

そうだ自分にはこの自慢のくちばしがあるじゃないか。

ヒナのくちばしはとても鋭利で、ヒナはこれが自身の武器だと今さらやっと確信しました。

ヒナは殻をその自慢のくちばしでひとつきしました。

しかし殻は破れません。

もう一度ひとつきしました。

それでも殻に変化はありませんでした。

ヒナはすぐに諦めそうになりました。くちばしは強靭でも心は弱いのです。

頭上には星というものがありました。上へ上へと終わりなく、高く遠くに星があってとても美しい眺めがあるのだそうです。

ヒナは心は弱かったのですが、それが一体どんな景色なのか知りたくて心がうずうずとしだしました。

すると殻がパカッと割れて小さな隙間ができました。どうやら知らないうちにもうひとつきしていたようです。

ヒナは隙間から初めて外の世界を覗き見て、すぐに“星”というものを見つけました。


すごい。なんて美しいんだ。

上へ上へと、どんなに高く遠く上にあるのだろう。


初めて見た景色はヒナの心をしっかりと捕まえました。

それからヒナはヒビを広げ、遂に頭を殻から出しました。

するとどうでしょう。上へ上へと高く遠くの星は、広大に広がっていてとても美しい眺めでした。“匂い”というものも全く知らない新鮮な感覚で、心地良さも満足に味わえました。

しかしヒナが期待していた世界とはひとつだけ違うことがありました。

世界には多種多様な“色”というものが無限に広大に続いているはずなのに、周りは恐ろしいほどに無限に染まった真っ黒でした。

真っ黒は不安や恐怖を誘い今にも飲み込まれてしまいそうで、ひなは心が折れそうになりました。


ヒナは問います。

「どうすれば青くて広大な“空”というものを見れますか?」

親鳥達は答えます。

「それはお前が大人になるまで待たないといけないよ。」

ヒナはさらに続けます。

「そんな。ならばせめて上へ上へと、高く遠くの星のもとに近づきたい。」

親鳥達も答えます。

「それもダメだよ。なぜならお前はそんなにもひ弱な身体をしているのだから。」


そしてヒナは自分の体を見て絶望しました。

殻の中で強引に揺れ動いたせいか折れ曲がった羽が両腕についていました。

自慢だったくちばしも殻をつき続けたせいか傷だらけになって、もう鋭さのかけらも無くなっていたのです。

殻の中ではほどよい体になっていたのに…


ヒナは泣いて地面に崩れ落ちました。

すると目の前に一匹のミミズがいました。

ミミズはヒナにとってなんとも美味しそうに見えました。


ヒナは言いました。

「美味しそうな誰かさん。あなたを食べても良いですか?あなたを食べれば羽も治りそうだ。」

ミミズは言いました。

「ダメだね。君には僕を食べる資格がない。」

ヒナは問います。

「どうしたら食べさせてくれますか?」

ミミズは答えます。

「落ち葉を10枚持ってきてくれたら良いよ。」


ヒナは殻から出てなんとか足を動かして、落ち葉を10枚ミミズの元に持って行きました。

ミミズはそれをペロリと平らげました。


ヒナは言いました。

「美味しそうな誰かさん。それではあなたを食べても良いですか?」

「何を言ってるんだ。君にはまだその資格はない。落ち葉をあと100枚持ってきたら食べても良いよ。」

「そんなの無理だよ。もう足を動かす力も残ってないよ。」

ミミズは言います。

「そんなこともできないの?そのくせに僕を食べようとするとはなんて傲慢なんだ。君みたいな子供に僕を食べる資格はやっぱりないね。」


ヒナは悲しくなってウォンウォン泣きました。

周りでは時を経た他のヒナ達が孵っていきます。なんとも綺麗な体のヒナ達です。

他のヒナ達は、地面に倒れている哀れなヒナを見て嘲笑しました。

「バカだなぁ。もう少し待ってしっかり準備していればすぐに大人になれたのに。」

冷たい言葉が哀れなヒナに襲い掛かります。

哀れなヒナはとても悲しくなりました。


外の世界はこんなにも無慈悲で辛く寂しいところだったのか。

こんなことなら殻から出るなんて思うんじゃなかった。高望みなんてしなければ殻がずっと守ってくれていたのに。ずっと待って守ってもらっていれば僕もあんなに綺麗な身体で外の世界に出れたのに。

あぁ、もう戻れない。なんで外になんか出てしまったのだろうか。

殻の中が恋しくて恋しくてたまらない。

周りのヒナ達はとても楽しそうで恨めしい。

本当は孤独で何もできなかった自分が恥ずかしい。

できるわけがなかったのに夢を見てしまった。


哀れなヒナは悔しさのあまり空を見上げました。

星は上へ上へと高く遠く、そして美しく輝いていました。


あぁ、綺麗だ。


するとヒナは急に思い立ちました。

ミミズの方を見てそのくちばしで、パクッと一口。ペロリと飲み込んでしまいました。

再び空を見上げると星はとても近くになっていました。

治った羽を広げ、鋭利になった自慢のくちばしを真っ直ぐに上に向け、ヒナから大人になった鳥は高く遠い空めがけて、びゅんっ。と勇敢に飛び立ちました。


勇敢な鳥は全速力で上へ上へと飛んでいきます。

星は上へ上へと、高く遠く輝いています。

哀れなヒナ達は、勇敢な鳥を見上げるようになりました。

空も黒から青、青から赤へと多種多様に変わることが何度もありました。

勇敢な鳥は多種多様に変化していく“色”を横目で噛み締めながら、それでも上へ上へと星めがけて飛んでいきます。

星は上へ上へと、まだまだ高く遠く輝いています。

やがて勇敢な鳥の体力も限界に近づき、もう飛んでいるのか落ちているのかすらも分かりません。

デネブが横を通り過ぎ、オリオン座も今ではもうかなり後ろです。

勇敢な鳥はただただ笑って星めがけて飛んでいきます。

星は上へ上へと、さらに遠く輝いています。

そしてある時、遥か下の彼方から声がしました。


「どうやったら外の星を見れるの?」


大人になった鳥は言いました。

「殻を破れば良いさ。そしたら星はすぐ近くだ。」


鳥は上へ上へと、高く遠く輝いていきました。


ヒナの成長の話です。

童話のような雰囲気を書きたいと思い立ちこのように書き上げました。

フィードバックなどしていただけるとありがたいです^ ^

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― 新着の感想 ―
[良い点] ヒナの成長が丁寧に描かれていて良かったです。 後書きで書いていらっしゃった童話のような雰囲気、とても出ていると思いました。 地の文がですます調になっているため、とても優しい雰囲気があって好…
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