名探偵たかあき -5-
前回何してたか
・スキンヘッドの依頼人
・白のポルシェ
・三週間前に失踪した組長の愛人
・死体になった捜査対象
・300万円の高額な依頼金
・薄い茶色のセカンドバッグ
・猫好きな依頼人の一面
これが、今回集めることができた情報のピースだ。
これらを元に私は推測を立てることにした。
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私が次に考えたのは【スキンヘッドの依頼人】と【三週間前に失踪した組長の愛人】……
そして、【死体になった捜査対象】についてだ。
一つ確かなことはこの二人が、組長の愛人と、組員という関係ではないということだ。
その程度の関係であるならば、私に気前よく追加の前金など渡しはしないであろう。
男女関係にあったと考えるのは容易であるが、今のところその核心は得る事が出来ない。
女が死体になったと聞いた時の依頼者の男の反応は、少し動揺していたように思う。
そして、少し気になることを彼は話していた。
[じゃあ、女が水死体になってプカプカと浮かんでいる映像でも見えたのかよ?]
これには、些かの違和感を覚えた。
冗談を言っているようでもあったが、もしかしたら真実であったのかもしれない。
依頼人は死体の彼女を喜ばしく感じていた。
それは、弾まれた前金が示している。
(依頼人は女が死んで良かったと思っている……そして、その死体を見つけて欲しがっている……?)
どうにも奇妙な話に思えた。
(やはり、女と依頼人の関係を洗うのが先かもしれない……恐らく、彼は女の死体の在処を知っている)
私の直感では依頼人は大きくこの事件に関わっていると見えた。
干渉する脳波をあっさりと依頼人が受け入れたことが、それを真に近づけている。
(しかし、謎は深まるな。なぜ、依頼人は私に女の死体を探させるんだ?)
「どう思う?ペケ?」
私がそう尋ねると、ペケは尻尾を振りつつ ワン と吠えた。
……どうやら、そろそろ出かけたがってるらしい。
私はスマートフォンを取り出すと、裏アプリを起動した。
”タンテイくん”と呼ばれるそのアプリは、相手のスマートフォンの位置をGPSを使って特定することが出来る。
この、私にふさわしい名前のアプリは勿論――違法だった。
だが、段々と便利になる世の中だ。使わない手はあるまい。
先ほど依頼人と交換した連絡先をアプリに打ち込む。
暫くの待ち時間の後、依頼人の居場所が赤いビーコンで表示された。
(まだ、そう遠くに行っていないな)
私はコートを羽織り直すと、ペケに声を掛けた。
「じゃあ、またあのスキンヘッドの男に会いにいくとするかね」
ペケは ワンワン と吠えた。
名探偵たかあき -5- 終