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アノマリー・ライフズ  作者: カジタク
一章 鮮やかなる国 ブライト
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第一章 第五十二話 南方以外の草原へ

「なあ皆。たまにはよ、南門以外も行かねえ?」


 眩しい朝日が食卓を照らす朝食中。

 フィーネさんが振る舞ってくれた食事をスピード、食べる物含めて皆思い思いに食べ進める中、ふと正行がそんな事を零した。


「もぐむぐ……ごくっ。南門以外、ていうと?」

「北、西、東だな。南門だけで今ん所俺らの冒険閉じてるから広げたいと思ったんだよ」

「ああ言われてみれば、そうだなぁ」


 クエストを引き受け、門を通り、魔物を倒して証拠品を持ち帰る。かかる火の粉があれば払う。そんな事の繰り返しだった。

 思い返せば解決したトラブルこそ多かったが、活動範囲だとこの街と南門を出てちょっとの草原だけじゃないだろうか。


「ホントだ……。私達全然動いてないじゃない」

「ボクやサナの影響は少なくないはず。すまない」


 頭の後ろに手を回し、自嘲する二人。

 王様達への報告、落下してきたのを受け止め入院、唐突な夢幻迷宮の探索依頼等、影響は確かに少なくないが、終わった事を語っても仕方ない。


「ともあれ、今日実際に行ってみよう。ついでにそこで出来そうなクエストも受けてさ」

「俺は賛成だな。二人共、手頃なのねえか?」


 そう振られてサナはこめかみに指を、フェルンは顎に手を添えて思考を巡らせていく。

 ちょっとかかるだろうから、次はサラダの中にある卵でも食べて……。


「あっ、東のコッケー討伐なんてどうかな!」

「はっ? こっけぇ? 名前かそれ」

「うん、鳥の魔物なの。茶色の体毛に赤いトサカ、あと飛べないのが特徴かなー」


 随分面白可笑しい名詞が出てきたぞ。

 特徴を聞いて浮かべたのはニワトリ。名前も「コケエ!」とか鳴くから付いたのだろうか。

 あと驚いて卵落として砕けたな……。皿の上だから食べるけど。


「待ちなさい。コッケーの生態において、補足が一つある」

「ラルトイさん。どのような話が?」

「妙な踊りをしてくるんだよ。それを見てしまうと、笑いが止まらなくなり、動けなくなる」

「へえ。まあウッドレイジよりはマシでしょうよ」


 普段話に入ってこないラルトイさんの補足に、忘れていた当人は苦笑して誤魔化す。俺も人の事言えない位忘れっぽいから咎めないでおくか。

 笑って動けなくなるのは引っかかるものの聞く限りでは正行が言うように、ウッドレイジなんかの大きな脅威は感じられない。


「んじゃ、今日は西にコッケー討伐だな」

「そうなりそうだ。この後出発しようか」



 そういうわけで朝食後皿洗いを手伝ったり、歯磨きをした後装備と荷物を整えてから徒歩でいつものようにギルドへと向かった。



「おはようございまーす!」


 ワイワイガヤガヤ……。

 挨拶をしながら木の扉を開けると、ギルドはそんなオノマトペが今日も似合う盛況ぶりだ。

 掲示板の前で悩む者、リュートさんにクエストの相談をする者、仲間とテーブルで駄弁る者、朝から酒盛りする者。


「オラァッ!」

「はい、当たりませんよ」

「ほぉっ。やるなァ小童ァ?」


 後、ワンパターンな者。

 ほんと懲りないなこのバーサーカーは。

 頼みや話があれば相手にするが、特に無さそうだし放っておこう。目当てのクエスト受けて稼ぐついでに新天地に行くと決めているのだから。


「さて殲滅クエストはっと……」

「俺達も探すか。先ずコイツは」


 黄色い掲示板の前に立つ。

 上からいつものホーンシープの殲滅クエスト、南の森のゴブリン殲滅に知らない名前の魔物のものに後ジャイアントワーム……。


「あれっ、無いな」

「コッケーだったよな。コイツだと思うけど」

「お、サンキュ。どれど……っ!?」


 なんだこれ……!?

 このニワトリなのに、やたらと尾羽が大きくて派手で。言語化するならニワトリにクジャクの要素を取ってつけた見た目。何というか、とても。


「凄え、滑稽……。だな、コイツ」

「ああ、滑稽がこの魔物の名前の由来だからね」

「ぶふぅおぉっ……。く、くふふっ……!」


 滑稽な魔物だからコッケーって……!

 なんて、いい加減な……。

 いかん、こんな駄洒落が、あはは。だめだ、おっかしい。笑ってしまうなあ!

 真面目に考えても滑稽な見た目だから的を射ているはずのに、安直過ぎて失笑が止まらない……!


「ぷ、ふふっ。滑稽だからコッケー……!」

「ひょっとしてこの魔物の名前が……?」

「そっ、そうだよ……。あは、あはははっ!」



 笑いが止まらないから言えないけど、何がツボったのか自分でもわからないって言いたい……!

 おかしいな、この程度のギャグでお腹痛くなるくらい笑う事はなかったはずなのに……!


「とっ、とにかく、ふふっ……。東門へ!」

「へえ。タクマは駄洒落に弱いと。覚えておくよ」

「いや覚えておかなくていいよ!?」


 しかし面白そうな弱点を見つけた以上、フェルン始め皆が放っておくはずもなく。

 この後俺があまり笑わないのもあってか、面白がった仲間からの駄洒落祭りで、延々と東門に着くまでの間笑わせられ続けたのであった。




_☆_☆_☆_☆_☆_☆_☆_☆_☆




「さ、さて。東の草原に着いたね」

「布団がふっとんだ」

「さっき散々止めてくれって言ったよな!?」


 正行が「わりわり」と苦笑い。

 昔から妙な所で飄々としてるよなあ。

 目標こそ弱いけどここからは魔物の生息地、油断してると危ないのに。


「にしても魔物の数と種類が多いな」

「南が一番楽ちんって言われてるらしいよ。慣れてる私達からすると、多く感じるよねえ」


 南と大きく変わり映えしない牧歌的な草原に、南と違う物騒な魔物達の影が多く目に付く。

 ホーンシープは勿論、緑のジャイアントワームに同サイズで赤いトカゲの魔物、そして。


「おっ! コッケーってあれだろ!」


 茶色の羽毛に身体に合わないやたら大きな尾羽の鳥が一匹。

 しかし絵で見ても滑稽だったが、こうして実物が動いているのを見ると、益々滑稽だ。さらに踊ると考えると、笑って動けなくなるのも理解出来る。


「おっしゃ。一番槍は貰うぜ!」

「おお早いねえ。ではボク達も行くとしよう」


 槍を持った正行が、文字通り一番に飛び出したのを合図に皆駆け出す。

 目標討伐数は合計三匹、討伐証拠は尾羽。周りを見ればすぐ魔物が見つかる環境下だ。大して苦労せずに済むと思うけど……。


「うおらぁっ!」

〈ゴッ……。コケケッ……〉

「へっ、先ず一匹だ!」


 と、考える内に助走をつけた突きがコッケーを串刺しにしていた。

 しかし成果なのはわかってるけど眼前で動いていたニワトリもどきが突然胸部を槍にぶち抜かれて死体にか。いかん、少し吐き気がしてきた……。


「うっ……」

「大丈夫か?」

「問題無いよ。慣れる気はしないけど」


 矛先にだらんとするコッケーだったモノから目を逸らす。心配した当人も手元が乱れているのか、柄が震えてるけど。

 とにかく早く倒してしまえば、その分早く済むし次を探して。



「うわ、あつっ!」

「どうした?」

「うっ……。カバンが……!」



 そう考え、視線を移した途端。

 カバンが熱くなった。

 カイロでも入れてあるみたいな発熱だ。

 とにかく熱源を確かめよう……!


「これってホットウッド……だよな」

「熱くなりすぎじゃね? 真っ赤じゃん」

「おかしい。普通はこうも熱くならないはずだ」

 

 開いたカバンの右手のポケットの底。

 昨日合成の後の片付けで紛れたらしいホットウッドが、ストーブよろしく赤々と熱を放っていた。周りに物がなくて良かった。


「これ、どうしたもんか……」

「あっ、サナさん達じゃないですか!」

「えっ?」


 悶々と処置を考えていた折、仲間の誰の物でもない聞き慣れない声が背後からした。

 まだ低くなりきれない中途な感じ。

 記憶には無いが、覚えはあるような。


「健助じゃないか!」

「どうも。あれからサナさんは元気ですか?」

「快調そのものだよ。心配ご無用だ」


 声の主は最初の異世界転移者の健助だった。

 大衆風呂であった時と違い、鈍く輝く鉄製の鎧に身を包んでいる。職業は戦士系だったのか。

 しかしそんな事実より後ろに目がいく。


「あーっと……。んー……」

「どうしました?」

「その二人は……なんだ?」

 

 後ろに控えている立派な物をお持ちな和装エルフとスレンダーな魔女っ子が気になる。後者はともかく、前者はおねショタでも始まりそうな雰囲気。

 こっちもホットウッドの件があるから詳しくは聞かないが、関係位は知らないと落ち着かない!


「ああ、僕の仲間です。右から順に」

「マサコ・カームと申します。以後お見知り置きを」

「ウィズ・アルメヒ。ま、よろしくね」


 仲間か。どういった経緯なのか凄く気になるけど、そこまでは聞いてられないな。

 何者かわかって満足したし、本題のホットウッドをどうにかしないと。耐熱手袋を持ってきたから、先ずこれで取り出すか。


「よし取り出すことはできたぞ……」

「あっ、これ人為的に発熱強化されてますね」

「ああそっか。状態とかわかるんだっけか」


 そうだった。健助はステータス閲覧という能力を持っているんだ。

 自分以外には見えないが、文字通り対象のステータスを見ることが出来る故に、こういった未知のものにはめっぽう強い。


「そうだ、原因の方はわかるか?」

「この場合強化してる魔力を排除します。火の魔力のようなので水の魔法をかければ行けます」

「それならウチには専門家が——」


 専門家がいるから安心だな、と言い終わる前に隣から手元へ水がぶっかけられた。そういえばウチの専門家、出番くるとすぐ行動しちゃうっけか。お陰でズボンがぐっしょりだ。

 まあバッチリ温度は消えたから良いか。素材としての希少性も一緒に消えてしまった気もするが。


「ありがとう。これでクエストに集中出来るよ」

「いえいえこの位は何とも。では僕らはこれで」


 健助一行に助力してくれた礼と別れを告げた後、仲間の早とちりのせいでズボンを替えに戻らねばならない、という大変下らない野暮用にこの後暫し葛藤するのだった。

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