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アノマリー・ライフズ  作者: カジタク
一章 鮮やかなる国 ブライト
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第一章 第三十六話 交わった文明の産物

「これがどういうものか、かい?」


 問いに対して返された問いに、頷く。

 これが元の世界の連中が関与しているのは理解したけど、武器の威力然りワイズ・ギアの特性然り分からないことが多く、勝手がわからない。


「最初の召喚者、大賢者の負の遺産さ」

「大賢者……。またその名前か」

「おや聞いたことがあるのかい」

「前にサナのお父さんと話した時にな」


 確か今の王様より十五代前の時代だっけ。

 王様の平均寿命が五十年かそこらだとして、少なく見積もっても七百年以上前の話だ。そしてこの杖がその大賢者の遺産。それも負の。


「それで……。具体的にはどういう物だ?」

「見てみようか。その方が早いかもしれないしね」


 そう言って、通路へフェルンは出る。

 小部屋の外は何体かメイドロボットがうろうろしていて、それを品定めするように見回すと。


「フォルク・エンチャント!」

〈ガ……ビピッ!〉


 黒い一閃で鉄の首を切り飛ばしてまった。

 おいおい、今のメイドロボット小部屋の外を通りがかっただけで敵意は無いように見えたけど、やっちゃって良かったのか?

 うーん……。いやまあ気にしないでおこう、こんな迷宮に出てくる位だ。ロクなモンじゃないだろ。


「じゃあ皆運んでくれるかい?」

「よしきた、重いモンは任せろ」

「あ、私もなのね」

「そこは手伝わせるのな」


 というわけでメイドロボットを運んできた。

 ちゃんと人型してるけど、こうして改めて見ると酷い状態だ。

 構造からして装甲があるのだろうが、今は骨格がのみの状態で、回線があちこちから飛び出してる上に所々途切れてるし、眼は片方破損している。見てると悲しくなってくる……。


「フェルンがさっき話したからわかってるかもだけど、このロボットもワイズギアだよ」


 彼女が言外に言った事をサナは肯定した。

 俺がワイズギアの応用についての話をした時に、そんなこと言ってたっけ。


「役割違うと思うんだけど。ロボットと武器て」

「動力が同じなの。ちゃーんと見ててね」


 胸のハッチを開けると、ガラス玉らしきものが。

 杖のくぼみよく観察すると一定の大きさごとに丸い溝が彫られており、今取り出したガラス玉は一番小さい円の溝に丁度嵌まりそうだ。


『ヴン』

「おおっ……」


 ガラス玉が嵌ると、外装がくぼみを埋め杖が電子音を立てた。

 電子機器が起動した音にそっくりだ。耳に入ってくる駆動音も静音タイプの扇風機みたいだし。


「それがワイズギアの特徴の一つだ。どんな代物であれ、動力は共通している」

「へえ。規格があるってのは便利だな」

「そしてその動力の玉がワイズ・コアさ。大中小三つの大きさに分けられる」


 このガラス玉はワイズ・コアって名前なのか。

 形状から察するに、サナが使ってるような魔法で用いられる杖にある、魔力制御を補助する石の役目をコアに果たさせようってわけだ。


「でもこの杖の事はわかったけど、ワイズギアについてはまだよくわかんないな……」

「くすっ。もっとわかりやすくかい?」


 またくすくす笑うフェルンに「いやいや」と手を左右に振る。

 今のでワイズギアについて理解できたのは、説明されのと魔法の杖を真似たって所なんだけど……。まあわかりやすくしてくれるのはありがたいか。



「『コンピュータを魔法で再現した。それがワイズギアの始まりだ』」



 酷く納得できる理由だな。

 メイドロボットなんかも、元の世界にあった物を参考にしているなら、合点もいく……。だけどフェルンらしくもなく言葉に自信が籠っていなかったような。何だかまるで。


「誰かの受け売りか?」

「へえ、よくわかったね。他ならぬ大賢者本人の手記が出典さ」


 ゆるゆる小首を振り「コンピュータという単語の意味はわからないね」と零すフェルンに俺は。


「……良かった、普及してたらヤバかった」


 科学と魔法の融合。

 そんな超兵器の類が広がっていなくてただただ、安堵した。




_☆_☆_☆_☆_☆_☆_☆_☆_☆_☆_☆




 ワイズ・ギア。

 俺たちの世界から来た「大賢者」なる人物が、元の世界の機械を魔法で摸造したのをきっかけに生まれた、科学と魔法の融合による産物。

 未だブラックボックスな所が多く、その全貌を窺い知るのは不可能だろうが「どのような物でも動力の規格は共通である」のと「装甲と骨格二つに分かれている」のは確実。


「これでよしと」

「あれタクマ、何を書いてるの?」

「ワイズギアだよ。覚える事が多かったから」


 通路を歩く中サナが話しかけてきた。

 フェルンやサナから説明してくれたのを無駄にはしたくないし、忘れたくない事だったからメモしておこうと考えた次第だ。


「にしても、一層下ると地図白くなるのな」

「裏面が迷宮の地図だからな」


 ふと地図を見ればさっきまでの地形は無く、今あるのは小部屋と少し伸びた通路のみが記されている状態だ。

 一層目みたいにすぐ見つかればいいが、九割九分白くまだまだこれからといった感じだ。


「タクマ、杖に違和感はない? 大丈夫?」

「今んところ問題ない。後それ三度目だよ?」

「あれっ? そんな聞いてたかあ。あはは……」


 おどおどとサナが杖を見てそんな事を言う。

 曰くギルドは、迷宮といった未開の地で手に入れた物は発見者の物とするらしいが、サナは持っていて、フェルンは必要なく正行は戦士故使わない。

 よってこの杖の所持者は消去法的に俺になった。


「ごめんねー。つい心配で!」

「なーんか変な所で過保護だよなあ、サナって」

「タクマが居なくなったら私は身体も心も辛いもの。もう不健康な身体も一人も嫌なの」


 おおう、目が暗くなってるようなー……。

 こうしてみると健康の執着と孤独への嫌悪は、恐怖すら抱くレベルになってきてる。何かの形でそこを突かれたりしなければいいけど……。


「まあ大丈夫だと思うよ、なあ正行?」


 先頭を進む正行に声をかける。

 特にこれといった意図は無いがまあ何となく。


「……おい、見てみろ皆」

「どうした何かあったか?」

「ん? 前に何かあるのかい?」

「どれどれー」


 暫しの空白の時間の後、震える声色で正行は曲がり角の先を示した。

 皆言われるがままに、覗いてみると。


〈ビー、処分対象。ショ、ブン……タイショ〉

「なんだあれ……!」


 大部屋の中には右腕にサーベル、左腕にスパイク付きの盾、頭に棘だらけの兜と魔改造されたメイドロボットが一体。

 おまけに胸には相変わらずErrorの文字があり、バグっているようで素通りするのが無理なのがよーく伝わってくる。


「はぁ、ぜぇ、かふっ、こほっ……。ま、だわたしが居る、立てるもん!」


 しかしそんな事よりも、人が、人が居る。

 周囲の仲間が昏倒する中一人だけ、杖を頼りに立ち上がろうとする、目深に被ったローブから金髪が覗く少女が一人。



「私は【変身】の能力者アリサ・瑠璃・クラーク。助けてくれたサナさんや、皆の為にもまだやられる訳にはいかないの……!」



 しかも声高に挙げられた名前は、どことなく見覚えはある名前だった……!

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