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アノマリー・ライフズ  作者: カジタク
一章 鮮やかなる国 ブライト
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第一章 第一章 第三十四話 土塊の巨人

「そういえば忘れていた」


 行き止まりの道の帰り、フェルンが足を止める。

 案の定先は何もない行き止まりで、馬鹿でか芋虫こと、ジャイアントワームを倒した部屋まで戻ってきてしまったわけだが。


「忘れたって何を?」

「ワームに関して、ちょっとね」


 見ているのは、ワームの亡骸だ。

 分かれ道を行く前、特に何かに使う事はないからコイツの亡骸はスルーする事になったんだけど、欲しい物でもあるのか。


「死せる者よ、我が身に残された権能を以って安らぎへ導かん——」


 細くそう呟けば、ちりちりと白い片翼の周囲が火花を散らす。

 そして黄色がかった白の魔法陣が足元に円から中央へ沿って描かれると。


「ヘヴンロード!」


 亡骸の下から光が差し込み天へ登っていく。

 どことなく暖かで、懐かしみを感じる光だ。


「ところでこれになんの意味が?」

「浄化魔法さ」


 堕天使なのを自嘲してか、悪戯に「天使らしいだろう」と笑うフェルン。

 入院中に図書室でそんなタイトルの魔道書や資料があったな。えーと効果は。


「確か使わないと、死体や魂がアンデッ……」

「すごーい! それ固有名魔法じゃない!」


 ごふぅっ。

 痛い、主にお腹がじくじくと痛い。

 勘弁してくれよサナ、何が悲しくて意味もなく突き飛ばされなきゃならんのだ……。


「それっ、アノマリー級の上でとっても敬虔な神官か天使くらいしか使えない奴だよね!?」

「おやこの魔法が珍しいかね……って、おいおい。近い、近いよ?」


 うん近い、すごく近い。

 もう少し余裕ある振る舞いするフェルンが微笑みすら作れてないのだけど、サナは構わず続ける。


「うひゃあぁー……。小さい頃、教会の神父様のを見た以来だぁ! こうしてみると、やっぱりフェルンって天使なんだね!」

「あ、ああ。な、何故か残ってただけなんだが、ボクもそんなに喜んでるもらえると光栄だなぁ!」


 サナが「尊敬しちゃう」とはしゃぐ対し、フェルンは棒読みで何となく素っ気ないのが不思議だ。

 うんけどまあよ、今はそんな事より突っ込みたい事が幾つか。


「イテテ、あのさ。そろそろ先に進もうとか突き飛ばした俺の事とか思い出さない?」

「あっ、ごめんねー! 懐かしくってつい!」


 まあ悪気なさそうだし突っ込みはいいとして、真面目に進まないと。

 ここまで苦なく進めてこれたものの、何が起きてもおかしくない迷宮を、下見として攻略するよう依頼されて今ここにいるのだから。


「よしじゃあ先に進もー!」

「うーんこの……」


 気の抜けた号令と共にもう片方の道に入り、人二人入るくらいの通路を進んでいく。

 地図は書き足されてこそいるものの、未だ半分が白く、ここまで宝箱や罠といった目立つものが現れていないのが不思議だ。


「ここまで珍しい物見つかってないなぁ」

「まあ一階だもの。もっと下の階層へ行かないと宝箱は出てこないよー」

「やっぱりもっと下があるのか。階段とか?」


 相槌で肯定。

 ありがちだけど迷宮、というからには一階程度終わるはずもなく何十と深い層へ潜り大ボスを倒してお宝ゲット、だもんな!


「うんうん、こういうのだよなあ。うんうん」

「楽しそうだね? タクマ」

「そりゃあな。正直冒険者としての経験はずっとワクワクしっぱなしだ」


 今更語るまでもない。

 こうして形を変える不思議な迷宮で、仲間と探索を今してる、と考えるだけでも胸が熱くなってくるんだ。まあ危険は承知だから落ち着く為に敢えて思考から外してるけど。


「そっか。じゃあタクマに冒険必至な悪い知らせ」

「げっ何か罠でも……」

「そんな所。ちゃーんと——」



ズン。



 言い終わる前に横へ退くサナ。

 通路が開けて部屋が目の前に広がる。

 しかしそれ以上に。


〈ゴガゴッ!〉

「避けろってか!? 無茶言うなよ!」


 正にすぐ目の前。

 部屋の天井ぎりぎりの土塊の巨人。

 所謂ゴーレムが頭上で拳を振りかざしていた。




_☆_☆_☆_☆_☆_☆_☆_☆_☆




「シールド!」

〈ガァァアァアァァ!〉


 パンチ受けれたけど、駄目だ力が強い!

 これじゃシールドが耐えきれない。

 破られる!


〈ガァッ〉


パシャン。


 破られた!

 拳がもう目の前。

 次のは間に合わない、なら避ける?

 無理、体が付いてこない……!



〈ゴォ!〉



 がぼごっ……。

 腹、腹痛い。

 血が込み上げてくる。

 やばい、吹き飛ばされて壁に。

 それは、駄目。


「シィ……ルドォ!」


 体を包める程の水の盾を背後に展開。

 ひんやり背中が冷える。

 しかしそれ以上は飛ばない。


「ごぶっ。げほっ、かふっ」


 うっ、おえぇ、気持ち悪い。

 着地した途端血だまり作っちまった。

 でも不意打ちは受けれた。

 致命傷にはならず痛い思いするだけで済んだだけマシだろ……!


「んで、こいつはなんだ!」

「ゴーレムだね」

「そして今俺放り出して避けた理由は!」

「まさか受けに行くと思わなくって……。あはは」

「ああもういい、とりあえず回復頼む」


 まあ尤もな理由だな。

 今の所防御ってシールド頼りだったし、あんなの躱す以外無いのに受けに行ったのが馬鹿だった。


「よし動ける。治療ありがとよサナ」

「流石に相手が悪いね。今回は加勢するよ」


 言いながら前に出ると様子見をしていた正行、フェルンも前に出る。

 ゴーレムといえば、魔法や特技といった技術的な事は出来ない代わりにとにかく硬くて力が強いイメージで、ホーンシープやジャイアントワームより遥かに危険だろう。出し惜しみは出来ない。


「不意打ち防げたんなら、もう全員で全力だ」

「丁度俺も思ってた。皆でボコっちまおうってな」

「あのタイプ、弱点の胸のコアを壊さないと削られた所を再生する厄介者でもあるからね」

「ここでその情報出すんか……」


 しれっと怖い事を言っているのが居るが、全員思い思いの得物を構え攻撃態勢を取る。

 胸のコアは隠れてる上に身体を再生するとなれば、攻撃するだけではジリ貧だ。襲いかかる前に担当を決めておくべきだな。


「役割どうしようか。削る役とトドメ役」

「トドメはボクがやる。それ以外削るでどうかな」

「異論は無え。任せておけ」

「私も無いよ。危なくなったら皆言ってね」


 フェルンの意見に皆反論はない。

 なら言うべき事は一つ。


「やるぞ皆、攻めろぉっ!」


 号令と共に皆がが飛び出す。

 全員攻撃を始めたな。

 俺も先ず水の刃を足払いするようにして。


「そらぁ、ウォーター!」

〈ガゴガ、ゴゴゴ〉


 ちっ、足を浮かせて躱したか。

 胸のコアを防御手段がある状態で露出させたところで反撃されるだけ。

 なら足首切って無力化させてやろうとしたんだけど、流石にそこまで脳筋じゃないか。


「やっぱ地道に削るしか無いか!」

「それが確実だろ。俺はそうするつもりだ」

「私も無力化狙ったけど、躱されちゃうね」


 何箇所か傷がもう付いているが、正行の攻撃した刺した傷が三箇所くらいで一番通ってる。

 どの位で再生が始まるかはまだわからないものの、風穴が開いても治らないのから察するに、傷を負ったらすぐにという厄介さは無いようだ。


「とにかく削れるだけ削るか」

「ああ、トライアンドエラーあるのみだ」

「まあ、考えるより身体動かすか」


 ゴーレムといえば硬い。

 そう思っていたが、コイツは土と石ころで構成されているから脆く出来ていているから、再生されても削るのは簡単だ。


「ファルク・ウォーター!」

「それっ、おらっ、そこだ」

「コアを一度見てみない、と……」


 皆同じ考えなのか。

 ちくちく刺したり斬ったりして削っていく。

 また反撃についても。


〈ガゴ!〉

「へっ鈍いぞデカブツ!」

〈ゴゴ……〉


 パンチをひらり躱す正行。

 皆が絶え間なく動いているから、翻弄されてしまい攻撃が出来ないようで時々闇雲に大振りにパンチをするだけだ。これを繰り返せば行ける。


「……ん?」


 そう思った矢先。

 ゴーレムの胸の辺に火花がチラついた。

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