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アノマリー・ライフズ  作者: カジタク
一章 鮮やかなる国 ブライト
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第一章 第五話 ギルドとは

 よ、ようやくギルドの前に着いた……

 俺ギルドどこにあるのかわからないのに逃げ出したのが馬鹿だった。

 結果、無駄に城の近辺を走り回って到着が遅れてしまっただけになってしまった。


「ふん、ふふーん、ふーん、ふーん……」


 しかもとてもサナがご機嫌そうに頬に手を当て、鼻歌を歌い、によによしながらこちらを見てくるのだ。


「私が綺麗、かぁ。えへへっ……」

「へいへい、なんであんなこと言ったんだろ……」

「もう言われたから引っ込めらんないよー? 嫌がってもずっと覚えてるからね?」


 あーもう、勘弁してくれ。

 ラノベじゃないんだからさ。

 俺がサナの健康の要になったのは事実だし、こうなったのも褒められ慣れてないのが起因かもしれない。しかし、これらを加味したとしてもちょろすぎやしないかな。


「んぐぐ……近いよ」


 おまけに距離も肌が触れ合うほどに近い。そも、俺はこういうバカップル見たら罵声を浴びせる側だったから嬉しいというよりも。


「慣れないんだ……こういうの」

「えっ、そうなの?」

「全く免疫がないから少しくらくらするぐらい」

「そうなの? じゃあ離れよっと」


 言いつつ、サナは二歩くらい距離を取った。

 が、眉を下げ何故かじーっ、とこちらを覗いてきている。そんなに見つめたらさっきと大して変わらんだろうが。もういい、話題を変えよう。


「しかし、ギルドってでかいんだなー……」

「うん。たくさんの冒険者が入るんだもの!」

「ああ、言われてみればそりゃそうか……」


 ギルドは見た目自体はさして他の住宅と変わらず、強いて言うならば屋根に剣と杖のマークのついた看板が取り付けられていることぐらいだが、大きさが違う。

 周囲の建物は現代の平均的な一戸建てぐらいの大きさで、多くは一階のみ、あって二階建てだがギルドは小さな校舎のようにすら思える大きさで四、五階建てはある。


「ここに冒険者達が、かあ」

「このおっきな建物でクエストをこなすんだよ。タクマとクエストこなすの、私楽しみ!」

「クエスト、ねえ」


 クエスト。

 言われた言葉を口に出し、噛みしめる。

 意味としては探求や探索だが、ギルドにあるクエストといったら魔物の討伐や街の人々からの雑事の依頼のようなRPGもののソレだろうか。


「だとしたら、ちょっと馴染みやすいけど」


 まあいくら考えても推測の域を出ない。

 早く入って確かめよう。


「お邪魔しまーす」


 木製の両開きの扉を手前に引くととぎっ、と音がして開く。

 内装はサナの家と大差なく、壁は石で天井と床は木。ただ、そこは沢山の冒険者達が集まる想定してる為かとても広く、いくつもテーブルと椅子が設置されている。


 また奥に床から天井まである大変大きな掲示板がありそこに大量の紙が貼り付けられていて、その前に受付と見られる赤髪の少女と少年が居る。

 先程サナが言っていたクエストってやつの内容が書かれているものだろう。


「おう、インテンスちゃん。今日も元気ィ?」

「あ、はい」

「そっちはどーよ、リュート君?」

「はい。今日も快調ですよ」

「おう、酒が足りねえゾォー!?」

「お客様、ここは酒場ではございませんよ」

「ちっ、今日はあんま美味いクエストが来てねえな。出直すか」

「だな、兄弟。今日は休もーぜ」

「あんたら昨日も同じ事言ってなかった?」


 実際、非常に多くの冒険者達が男女関係なく席を全て埋める程に集まり、とてもむさ苦しい。ついでに酒盛りしてる人間もいるせいで酒臭いと来た。受付であろう二人も何か話してるようだし、そもそも先ずギルドに来たら何をどうしたら……


「よぉーく来たなぁっ、新入りィ!」


 背後に気配。

 馬鹿でかい声。

 抜かった、何を……!


「い、でぇっ……」


 おぉ……!

 い、たい、いたい……?

 ああうん、痛い!

 強過ぎる痛覚に、一瞬だけ理解が追いつかなかった。コンクリート塊でもぶつけられたか?


 参ったな。

 目眩がする。

 視界もあやふや。肩の感覚は無くなってきてる。

 周辺に何かぶつけた物の飛散物が全くない事から体のみの攻撃だ。

 やった奴はかなり力が強いはず。


「ふぁはっはっはっはっ! ブライトギルド名物、ムロウスの洗礼だ。効いたるぉー?」

「あ。かっ、ききっ……!」


 一体どんな性悪が居るんだ。

 悲鳴を何故か笑える肩の向こうから聞こえてくる声の主の傲慢さに心底腹が立つ……!


「んぐ、があぁぁ……!」


 声に出ない罵声が漏れかけるが何とか堪え、後ろを振り返る……!


「ほお。補正無しに後ろ振り向くぐらいの根性はあったか、褒めてやらんでもねぇ」

「アン、タは……!」

「俺ァ、ムロウス・レムナントだ」


 振り返ったそこには、全身生傷だらけで黒い皮鎧を身に纏い、短く切り揃えられた黒髪の酷く細い赤眼をした筋骨隆々の男が居た。

 名乗った男は馬鹿笑いの主とは思えない酷薄な声色で続ける。


「これでも一応副ギルドマスターでな。冒険者ならこのぐらいの痛みはしょっちゅうなんだよ」

「耐えれない奴は、要らねえって事か?」

「そういうこった。見ない顔の人間にゃ、必ずやってんだ」


 酷いふるいのかけ方だ。心底呆れるよ、魔法とか戦略だとかの頭脳に長ける者も必要だろうに。

 けど入り口前の立ってるて事はひょっとして。


「アンタ、案内役か何かも務めてたりするか?」

「そうだが?」

「ウッソだろ!」


 見た目詐欺だろ、こんなの!

 こんだけ厳つい奴がギルドの第一印象も言えるここの受付なんて思わねえよ。そもそも、それ以前にこんな初対面の人間に暴力振るう筋肉ダルマを受付にしていいんか……!




_☆_☆_☆_☆_☆_☆_☆_☆_☆_☆_




「大丈夫タクマ? 他に痛いとこない?」

「うん。大丈夫だけど」


 サナの掌から放たれる淡く青い光が、肩を包んでいる。曰く傷を癒し、痛みを和らげる魔法らしい。

 尚ムロウスは俺が思い切り叩かれた一部始終を目撃したのをきっかけに、理性が吹き飛んだサナに形容し難い詠唱の魔法で拘束され天井からぶら下がっている。


「うおぉぉーッ! サナてめえやりやがったな!」


 あんな圧迫面接をしたのだから、内心ざまあみろとは思うものの、それ以上に血が頭に行って大層体に悪そうで心配だ。

 これでは被害者なのに、まるでこっちが悪いみたいじゃないか……


「ソイツから強そう魔力と、特殊な契約を感じてつい力試ししちまったのは悪かったって! だからさぁー、降ろしてくれよぉー!」

「だめです。タクマに危険を及ぼす可能性があるなら例えムロウスさんでも容赦はできません」


 すげなく切り捨てるサナに、幼児のような態度でねだったムロウスは落ち込んだ。サナが詠唱を始めた時周囲が「ああ……」という雰囲気から察するにいつもの事っぽいから放置しても良さそうだが。

 あの人は強そうな奴を見ると構いたくなる戦闘狂っていう残念な種類の人間かもしれない。


「ま、あそこの馬鹿は放っておいて」

「馬鹿って言った!」

「うるさいですよ。拘束魔法をより強化されたいんですか?」

「スミマセン」

「よろしい。それでねタクマ」


 無感情な笑顔を向け、ムロウスを黙らせてから続けるサナに少し引きながらも俺は頷く。


「ここでは先ず、ギルドに登録をするの」

「ギルドに登録か……カードが貰えたり?」

「正解だよ。やっぱりわかるかぁ。じゃ、インテンスさんの所で登録済ませちゃおっか」



 半ばジョークのつもりだったギルドカード説が当たるとは。おまけに「やっぱり」と言っているのだから、件のヴィジョンの魔法で見ていたと考えて良さそうだ。

 なんて考えていたらにいる奥にいるインテンスと呼んだ赤毛の少女の方へ向かっていったので俺もそれについて行く。


「ギルドへの登録ですか」

「はい、お願いします」

「わかりました。ではこちらを」


 手渡されたのは、のたくった文字が大量に書かれた何枚かの紙だ。相変わらずなんて書いてあるか読めないから書類を書けと言われても困るんだが……


「くっ!」

「あ。そういえば」


 なんだ……今の痛みは……

 頭蓋に針が刺さったような鋭い痛みが一瞬だけ走ったぞ。

 まあ近頃変化ばかりで身体が疲れてるだけだろう。


「あれれ、読めるぞ。お名前に年齢と性別か」

「ああー……ごめんね。言い忘れてた」


 視線を逸らし、頬を掻く。

 今ので疲労じゃないのは察せるが……

 また何か説明し忘れたなこのやらかし召喚士め。


「今の頭痛は文字を理解したり、書けたりできるように予めかけておいた魔法が発動したの」

「記憶にないけど、いつの間に?」

「召喚された時。言葉自体は初めからわかるんだけど、文字は強く読もうとしないと駄目なの」

「ほー。そんな仕様が」


 今まで言葉はわかっても文字は読めないものと思いこんでいたが違ったらしいが、読み書きが可能になってもなあ。


「転移者である俺が、家系だとか母国だとかどう書けばいいんだ、これ」

「まあそうなっちゃうよね。私が代筆しておくから、タクマはクラスについて説明を受けて」

「んん? クラスって何ぞそれ」


 質問を投げかける俺をよそに、せっせと書類と共に渡されたペンを走らせるサナをインテンスと呼ばれたこの人は、表情を変える事なく止める様子が微塵もない。


 しかしこっちとしてもクラスがなんなのか知りたいのは同じだ。時間的にも、説明の詳細度的にもこの人に聞いておくのが得だし従っておこう。


「ではクラスの説明をします」

「あ、ども」


 やり取りを聞いていたらしいインテンスさんがやたら鋭い八重歯のある口を開いた。


「クラスとは、冒険者における職業です」

「職業ですか」

「はい。或いは役目と言い換えることもできます。前衛、後衛を分けるものでもありますからね」


 むむ、ゲームによくある奴だ。

 仮にそうなら、特化する以上は何かしら欠ける部分が出てくるのが必然だし……念の為聞くか。


「そのクラスって奴、その職業に就くと何かしらよくない部分が発生したりしません?」


 話の腰を折るのは悪いけど、自分にとって発生したらどうしても困るものなので早めに突っ込む事にした。

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