なんだかんだでついてねぇ
1章ノースウッドでの生活
商業国―ロマエ国の王都—プロネミエンスから馬車を乗り継いで10日ほどの距離にあるのノースウッドへ着いた青年―モートはついて早々に絶体絶命のピンチに陥っていた。「見つけたぞ!あいつだ」「右の路地に入った!」「先回りして回り込め!」警備兵=辺境軍の連中に見つかったのだ。―もうここまで手配されているのか…。モートはため息を吐きつつ苦笑をしながら街の中を駆け抜ける。-こんなはずじゃなかったのに…。
モートは元々はプロミネンスの出身ではない。隣国のリフレシア共和国の出身で3年前から冒険者をして生計をたてていた。もとい、採取依頼ばかり受けていて他の冒険者からは「採取しかできない無能」と称され「チキンのモート」と言われていた。本人は気にしていなかったが。(薬屋や冒険者ギルドからは絶大な信頼とほぼ100%の採取成功率から「採取の天才」と言われていたのだが)。それがその日もいつものように街の郊外にあるビーツ草の採取依頼を受けていたのだが、(ビーツ草は主に傷薬の原料となる)。そこで採取の途中に突如悲鳴が聞こえてきた。モードはなぜこんな場所で悲鳴が聞こえるのかが不審に思ったのだが聞いてしまった以上放置するのは後味が悪いと思い気配を消しつつ音のなる方に近づいていった。そこで見たのは自分の腰くらいの身長の少女がスモールウルフに迫られていた場面であった。モードは慌ててスモールウルフを追い払ったが、そのタイミングで城の兵士と遭遇し、自分は少女の誘拐犯の疑いをたてられ、逃げて逃げて逃げまくった結果、今いるノースウッドまで逃亡してきたのだった。ここまで逃げられたのは彼の「採取の天才」としての名前が売れていたのと、少女は実は王族で、無実の罪にかけられてしまった彼にお礼を言いたくて探しているのだが、彼はその事実を知ることはないだろう。
なんとか追って(辺境軍の兵士)を撒いたモートは思った。ここですべてを変えて新たに生活を始めようと…。ここは人の笑顔があふれるいい街だったからだ。
まず彼は自分のステータスに偽装を施した。パッシブスキル「ジャミング」を発動させた。これで高ランクの冒険者や要人にしか偽装は見破れないだろう。次に自分の髪をバッサリと切り、印象を変えた。路地から大通りに姿を現してみたが、上手くいったようだ。兵士には素通りされている。兵士が探索に奔走しているなか、彼―モートは堂々と街に溶け込んだ風に装い、冒険者ギルドに行き、再度ギルド申請を行った。その時につけた偽名ジョン・ウィックとして、しばらく生活していくことに決めた。ここ、ノースウッドは確かに辺境都市ではあるが、街に活気があり、住民には笑顔がある。その2つで彼はここにしばらく拠点を置くことを決めた。「気ままに生きてきにむくままに」それが彼の理想の生活であり、リフレシア共和国ではギルド等からの依頼で碌に休みもとれなくなっていたのだ。今更戻る理由もないし、戻っても罪人扱いなど真っ平ごめんだ。
ここから彼モートの、いやジョン・ウィックの新たな生活が始まる。後の「蜃気楼」「断罪の処刑人」の二つ名を得る偉大なる冒険者のストーリーが…