神様、もし居るなら俺の頼みを聞いてください。どうか妹や、家族に、俺が魔法少女だという事がバレませんように。ほんとマジでお願いします。
伏見 彩斗は27歳、フリーターの男性。
ふとした成り行きから、魔法少女の力を得てしまう。
自分が美少女の姿になって、戦うのには色々と思う所もあるけれど、
そうしないと、自分の住む街や、人々に危害が及んでしまうわけで・・・
仕方なく、魔法少女として活動をしていた。
そこへ新たに魔法少女とした現れた新人が、どう見ても歳の離れた妹だった。
どうしよう・・・正体がバレたら。
兄がふりふりの衣服を纏う魔法少女とかドン引きされない? 大丈夫?
という感じのお話です。
元々、未発表の長編予定の話を短編に無理に纏めた?ので不自然な所があったらすいません。
少しでも楽しんでいただけたら幸いです。
追記
自分でもびっくりしたのですが
2018年2月17日に日間ランキングで10位に入っていて目をゴシゴシして3度見するくらい本当に驚きました。
評価を下さった方、ありがとうございます!!
悲しきかな、人が生きていく上では、やはり労働は必要不可欠なようだ。
何故ならば・・・
生きていくには衣・食・住が必要であり、それにはお金が居るのは当然な訳で、お金を得る為には労働をするしかないのである。
最も、自分に特別な知識でもあれば、株やら投資やらで稼ぐ事も出来るかも知れないが、生憎とそういった知識は持ち合わせていない。
なので、人生のウチの貴重な自分の時間を提供して労働をし、対価を貰うという労働をせざる得ないわけだ。アルバイトだが。
(あと2個・・・終わりが見えてきた)
慣れた手つきでプロジェクターを磨いて、電源を入れて動作の確認をする。
「よし、問題なし」
壊れないように箱に詰めて梱包すると、予め用意していた宅配伝票を貼る。
色々とアルバイトを経験したがこの仕事は非常に楽だと思う。
友人らに「今何の仕事をしているの?」と聞かれるとする。
その際「レンタル屋」と返答すると、大体はBDやDVDディスクのレンタル店?と問われるがそれは違う。
プロジェクターやら、印刷機やら、大型シュレッダーやらのオフィス用品から
プロジェクションマッピング用の機材から大型モニターに、音響に、発電機と扱うものは多岐にわたるが
そういった商品を企業を相手にレンタルする会社にアルバイトとして勤めている。
企業が使う電化製品は大型で、一般家庭のモノと比べると非常に値段が高価であり、建設現場のプレハブ小屋など
一定期間をすぎると取り壊すような場所の為に買うのもバカらしいのでレンタルで導入したり、
野外でイベントを開くので一時的に使いたいので借りたい等と意外とニーズがある。
この仕事で、何が一番楽かと言うと接客なんて殆どない事だと思う。
コンビニなんかで働いた日には常時、人が来て疲れるし、延々と品出しだけしていると他のバイト仲間から良い顔はされないし。
客として利用する立場なら「うわー超便利!」で済むけれど、自分が働くとなるとやる事が多すぎる上に自給も安く、
労力と対価が見合っていなくて非常に馬鹿馬鹿しい。正直、都内であれば自給2000円くらいでいいと思う。
誰もやりたがらないから外国人ばかりになっているし。
飲食関係だともっと地獄である。
ピーク? 同じ時間に押し寄せるの辞めてくれます? ちょっと来店をずらしてくださいよって感じ。
それで色々やって、流れ着いたのがこの会社だった。
バイトがやることは基本的に機材の点検と清掃のみで、客の相手をする必要はないし、
発送は大きなモノは配達業者に依頼して、他は店の車に載せて近くの契約している配達業者に持ち込むだけ。
何度か社員登用を誘われたが、社員になれば、今よりも多少やる事は増える事になるだろうし、
現状はアルバイトでも無駄遣いをしなければ、一人暮らしをしていても衣食住に困る事はない。
今日みたいに大型連休が間近だと、野外イベントで機材を借りたいという会社が殺到し、
平時より仕事が増えて、残業が1~2時間ある事もあるがそれも稀である。
そんなわけで俺、伏見 彩斗、27歳フリーターは自分のペースで楽にゆるく適当に生きていて、
恥ずかしながら、今の温い現状に満足しているわけだが、最近になって懸念事項が1つ増えた。
ソレのせいで『色々』と仕事以外でやる事も多いので若干疲れ気味だった。
肉体的にではなく精神的に。
(今日は何も無いといいな・・・)
色々考えているウチに業務は全て終了した。
あーっ!! 今日も仕事終わったっー!
と内心叫びたい気持ちを抑え、相手を労う気持ちもこめて「お疲れ様でした」と口にした。
「ああ、お疲れ様。遅くまでありがとうね伏見君」
白髪交じりの壮年の男性が落ち着いた口調で返した。
彼はこの店の店長だ。何時もニコニコと優しそうに微笑んでいる印象が強い。
若干、頼りが無さそうに見える男性ではあるが、
その外見とは裏腹に、非常に頼りになる大人である事はこの店で働いて半年もすれば、嫌という程理解できた。
店長からは色々と学べるとこも多いので個人的にかなり尊敬していた。
「悪いね。こんな時間まで・・・残業代は出るから安心して」
と店長は頭を掻きながら少々申し訳なさそうに言った。
「いえ、どうせ明日は休みですし・・・この後の予定もないので大丈夫ですよ」
時刻は22時過ぎ。普段は20時に閉店なので2時間残業と言う事になる。
「もう遅いから先に着替えて上がっちゃって」
「はい、ではお言葉に甘えて、お先に失礼しますね」
男の着替えなんて早いもので、更衣室に入ると仕事着をさっさと脱ぐと、あっという間に私服に着替え終わった。
「お疲れ様です。お先です」
「はい、ご苦労様。気をつけてね。最近は変な事件が多いから」
「そうですね。なるべく早急に帰りますよ」
店から出て帰路に着く。
確かに、近年は変な事件ばかり立て続けに発生している。
でも、それは人が起こした『普通』の事件だ。
面倒なのは『普通じゃない』事件。
誰もが、それを事件だと認識は出来ないし、普通の人からすれば天災のようなもの。
(そして何故かそれを解決しているのが俺なんだよな・・・)
大きなため息をつく。
今の自分がやっている事は多分良い事のハズだし、誇らしい事なんだろうとは思う。
まぁ間接的には人助けではあるし、自分の力で誰かを守る事が出来るのは子供の頃に憧れたヒーローの様だ。
だけど・・・アレだけはどうも受け入れがたい。
アレさえなければもっと違った気持ちで向き合えるのだろうか。
自宅までもう少し。自宅近くの商店街を歩く。
東京都ではあるが、適度に田舎な街なので22時をすぎればどの店も閉まっている。
昼間はそれなりに人が往来して、賑やかな場所だが夜になると誰も居なくなる。
何時もの帰り道だが何度通っても、まるで日中とは別の場所みたいで不思議な感じがする。
「っ!!」
ざわりと何か嫌な空気を感じた。
(チクショウ!! また現れたか・・・昨日も出たんだし休めよ!)
と心の中で悪態を付く。同時にポケットが震えた。携帯電話のバイブレーションだ。
携帯を手に取ると、画面には自宅と表示されている。
もう一度大きなため息を付くと電話に出た。
『アヤト? もしもし? でいいんですよね? 端末にアプテムの反応があります。多分すぐ近く』
電話からは少女の声。
フィア・エミューラと名乗る同居人であり、一応相棒でもある。期間限定の。
本来は少女ではあるようだが、出会った時から人間の姿をしておらず、率直に見たままの評価をするならば喋る猫である。
「うん。こっちも気配を感じた。まだ、あまり大きくないみたいだけどな」
『多分、まだ種のままですね。悪いんですけど、すぐに対処して貰えますか? 開花すると不味いですし、仕事帰りで申し訳ないけど』
「分かっているよ。放置したらヤバいだろうし。気付いた以上はなんとかしてみる」
『私も一緒だったら多少はサポート出来たんだけど・・・頑張ってください!』
「急ぐから電話を切るぞ。以後の通話はあっちの『電話』に切り替える」
電話を切り、愛用のスマートフォンを乱暴にポケットにしまう。
また大きくため息を吐く。本日三度目だ。
「これは人助け。仕方がない。やるしかない。仕方がないんだ」
周囲に意識を向け、誰一人居ない事を確認すると右腕の袖をめくる。すると腕に巻かれた装飾品が姿を見せた。
それは金属で作られた無骨な腕時計の様に見える。
しかし文字盤も無ければ、時間を示す針も秒針もない。
幾つもの歯車が組み合わさったような装飾の中央に石が埋め込まれている。
それはこの世の物とは思えないくらいの透き通った輝きを放つ、美しい翡翠色の宝石だった。
その宝石に左手を乗せて一言、言い放つ。
『変身』と。
途端に周囲の風景は消え失せて、自分は何もない真っ白な空間に居た。
重力から開放された不思議な感覚。体中から力があふれて漲ってくる。
光が身体を包みこみ、衣服が瞬時に替わる。
身体のあちこちに、金属の装甲が勝手に取り付けられていく。
眩い光が消えると同時に、現実の世界に戻る。
時間にして一瞬の事だった。何度やっても慣れないし慣れたくない。
すぐに『忘却』と『無関心』の『魔法』を展開する。
これで自分の姿が誰かに見られても、一般人であれば誰も自分に意識を向けないし、気にもしないし、まるで何も無かったかのように忘れるだろう。
「これでよし」
自分のモノとは思えない可愛らしい少女の声。
店主が帰宅し、無人となった薬局のガラスに映る自分の姿を見て、本日4度目の大きなため息をついた。
月明りに照らされたガラスに写る自分は、控えめに言わなくても超美少女だった。
背丈が小さくなり、年齢は14~15歳程度に見える。
綺麗な翡翠色の瞳にサラサラの銀髪。嫌でも今の自分が女性である事を認識させる胸。
詳しくは知らないがCカップくらいはあるのだろうか。
腰下まで伸びる左サイドテールは自分でやったわけではない。仕様との事。
女性の服はあまり知らないが、ミニドレスと言うのだろうか? 白と黒のフリフリした衣服。
若干少女趣味ではあるが、ガラスに映る少女は容姿に優れているせいか恐ろしい程に良く似合っていた。
まるで物語に出てくるお姫様のような可愛さがあるが、この姿ではお城で開かれる舞踏会には出られないだろう。
何故なら、衣服に不釣合いな金属の装甲が随所にあるからだ。
手足の一部や、腰に取り付けられた白銀に赤いラインの入った、ロボットのような、鎧のような、無骨な装甲。
身体を動かしても不思議と干渉はせず、重さは感じない。
魔法少女というモノらしいが、少女モノのヒーローのようにも見える。
アニメのキャラクターの「コスプレ」のようにも見えるが、金属の武装の重量感と存在感は作り物には到底見えなかった。
「さて、さっさと片付けようかな」
軽く地面を蹴り、ジャンプすると重力に逆らってぐんぐんと上昇していく。
何が悲しくて、男なのに魔法少女に変身なんてやっているんだろうかと思う。
しかし、そういった葛藤が全て消えて、純粋に楽しくなるときがある。それが今だ。
重力を無視して夜空を駆け抜ける。
かなりの速度が出ているハズなのに、微かに風を感じるだけで、息苦しくも無ければ、目を開けていられないような事も無い。
なんでも障壁? もしくはバリアーみたいなもので保護されているらしい。
また、太ももに二の腕や胸元と露出が多く、ひらひらした薄い衣服なのに不思議な事に寒さも感じない。
最近は暖かくなったとはいえ、まだ3月で肌寒いハズなのだが、これは衣類に付加されている魔法の効果らしい。
魔法というのはなんでもアリなんだろうか。
下に見える町並みは、まるでミニチュアの玩具のようにも見える。疎らに灯る光が綺麗だった。
同じ様な夜景を『見るだけ』なら飛行機にでも乗れば見れるだろうし、展望台に登れば似たような風景を見ることは出来るだろう。
だけど、身体全体で風を感じながら、自由に空を飛ぶなんて経験は果たして、この世界で何人が経験しただろうか。
きっと居ないだろう。スカイダイビングのような自由落下ではきっと味わえないそんな特別な経験。
本当にこれだけは楽しい。自分が女の子になっていることを忘れる程に。
『アヤト、聞こえてます? そろそろ近いですよ』
「ああ、目視にて確認した」
まだ攻撃を仕掛けるには少々遠いが、敵の姿を捉えることが出来たのはそれがあまりに巨大だったからだ。
それは闇夜の空に溶け込むように存在した。赤い目玉がギョロギョロと動く半透明な巨大な怪鳥。
まるで悪魔のような禍々しい翼を広げ、空中の一点に静止している。
羽ばたきもせずに、その場に浮いているのはどういう原理か知らないが、どうせ魔法関連の非常識な存在なので考えても無駄だと判断した。
翼の先端から先端までで30メートルくらいあるのではないだろうか。
すぐにでも空を見上げた誰かが気付き、通報されたり写真が撮られそうではあるが、この化け物は普通の人間には見えないらしい。
仮に街を駆け抜けても、突風が吹いた様にしか感じないし、建造物が壊れても老朽化で壊れたか事故にしか感じないだろう。
これが見えるのは特別な力を持つ魔法少女のような存在だけあり、また倒せるのも魔法少女である。
この怪物は人のマイナス感情をエサに成長する。そして人に悪影響を与えるらしい。
正直な所、分かっている事は少ないが放置すれば人間の社会に深刻な悪影響が出るから、倒さなければならないとだけ認識している。
なんの因果か、俺は魔法少女に変身して、この怪物共を倒す生活を昨年末から続けているのだ。
それも27歳の男であるのに、ふりふりした衣装を着た可愛い少女の姿へ変身して。
色々思うところはあるし、全てを望んでやっているわけではないにしろ、力がある以上、他の誰かに頼れない以上、今それが出来る自分がやるしかない。
今の社会をメチャクチャにされたら、結局困るのは今を生きる自分や家族や友人達なのだから。
「確かに子供の頃にヒーローに憧れたよ」
『ヒーローですか?』
俺の独り言にフィアが返答した。と言っても近くに居るわけではない。
先ほどの携帯電話とは違い、俺の家に居る彼女の声が直接脳内に響く。
魔法を使える者同士が思念を送り合って、遠く離れていても会話が出来る魔法らしい。
魔法少女に変身していなくても使用が可能ではあるが、仕事中にいきなり使われるとびっくりするので
変身している時以外はなるべく携帯電話での連絡をする事で落ち着いた。
この魔法、正式名が地球の言語での発音ではなく、舌を噛みそうなレベルで言いづらいので単に『電話』と呼んでる。
最初は魔法の思念の通話だし『電話』だと普通の電話と混ざるので、魔法思念電話を略して『魔念話』と呼んでいた。
しかし、外で口にすると厨2病みたいで恥かしいのと、言いづらいので何時しか『電話』としか言わなくなった。
「でも、まさか魔法『少女』になるとか想定してなかった」
『私もビックリですよ。普通は女性しか変身出来ないハズなんですけどね』
「じゃあなんで俺は変身出来るんだろうな」
『突然変異? イレギュラー? きっと長い長い歴史の中でも男性で魔法少女になったのはアヤトだけですよ』
ある意味当たりですかね? おめでたいですね! と言われて「うるさい・・・」と返した。
愚痴っても仕方が無い。何時ものようにさっさと倒して、家に帰ってメシ喰って風呂入って寝る。
今日は朝からバイトで疲れているのだ。
「しかし、こんな姿を家族や友人に見られたら軽く死ねるよな・・・」
と口にした時、何か違和感を感じた。怪鳥が何かを攻撃するような動きをしている。
誰かが戦っている? 誰が? 自分以外にこんな事が出来る存在がいるのか?
「フィア、どうやら誰かが先行して戦っているようだが、俺の他に魔法少女がいるのか?」
『え? あっ確かに、アヤト程は魔力は強くないですが小さな反応があります・・・これは魔法少女特有のモノですね』
「・・・聞いてないぞ? 他にも居たのか」
『もうしかしたら、私と同じ様に誰かが現地で協力者を得たのかもしれません』
距離を詰めていくと少しづつ、その存在が鮮明に見えてきた。
淡いブルーの衣装に、自分と似た金属の装甲を随所にまとう魔法少女。
腰まで伸びる綺麗な金髪のツインテールを靡かせてキャーキャー叫びながら怪鳥の攻撃を避けてる。
というか逃げる一方だ。戦い慣れていないのか非常に危なっかしい。
(・・・え?・・・・えええ??)
その顔に見覚えがある。
なんて事だ・・・マジで? なんで? どうして?
『アヤト? どうしました? 加勢して倒しちゃいましょう』
「いや、緊急事態だ」
『どうしたんです?』
「なんかさ、あの魔法少女さ・・・どう見ても俺の妹みたいなんだけど・・・」
『結花さん? 姉妹で魔法少女になるなんて魔力が高い血筋なんですかねぇ・・・』
「いや、兄妹な、兄妹!」
『それは失礼』
可愛い声で全く悪ぶれる事もなく、心の篭らない謝罪を受けた。
通常、魔法少女になれるのは『少女だけ』で俺は本来ありえないイレギュラー。
基本的に普通の少女が変身すると、容姿は原型を留めないほどには変化はしない。
俺みたいに性別も容姿も別人になることは無く、髪の毛の色に変化があったりするが
大体は変身前の姿を知っていれば、認識できる程度のモノらしい。
だから髪の毛の色は違うけど、あの魔法少女が妹の伏見 結花である事は分かってしまった。
幸い、目の前の事に必死なのか、こちらには気付いていない。
「・・・質問いいかフィア」
『なんでしょうか』
「今の俺の姿を見て、俺だってバレると思う?」
『バレちゃ不味いんですか?』
「当たり前だろう!?」
仮に俺が妹なら、歳の離れた兄が隠れて魔法少女をやってます!とか知ったらドン引きするよ多分。
『容姿も性別も声も違いますし、アヤトと結びつけるのは難しいんじゃありませんかね?』
「そうだよな・・・そうであってほしい」
『ただ・・・』
「ただ?」
『親や姉妹や友人や近しい人々にバレそうな要素はありますね』
「どんな要素?」
『仕草や口癖や口調、その人しか知らない情報を喋ってしまうとか?』
言動に注意すれば大丈夫だろうか?
『だからです、普段の口調は辞めて、この際女の子みたいな口調にしちゃいましょう。そしたら絶対バレないですよ多分、きっと』
男のプライドとか、恥とか、羞恥心とか、色々なものがあったけど、迷う事無く即座に投げ捨てた。
(一番困るのは正体バレ・・・それを避けれるなら俺は・・・俺は・・・)
何かが吹っ切れた。もうどうにでもなれーと思った。
そんな兄の葛藤と覚悟は知らず、伏見彩斗の妹である伏見 結花は半泣きのパニック状態だった。
ほんの少し前に、帰宅途中に近道で通った公園で、喋る黒猫に出会った。
びっくりして持っていたカバンを落として数秒フリーズする程度には衝撃的だった。
黒猫さんの話によると、何やら悪いモノが街をメチャクチャにするかもしれないから助けて欲しいとの事。
「いや・・・いきなり言われても困るよ・・・」
自分は普通の少女であり、戦う術なんて知らないし、怖い事はしたくない。
なんでも私には魔法少女としての力があるらしく、協力者になって欲しいと言われた。
「協力者?」
「詳しい事は後ほど説明します。でも今は時間がないの。もう目覚めてしまっている・・・」
黒猫さんは可愛らしい声で協力を求めてくる。
声からして女の子なんだろうか。
「本来なら私がやるべきなんでしょうけど・・・今の私では変身ができないのです」
これは夢なんだろうか。
私は塾からの帰宅途中だったハズだけど・・・頬をつねると痛みがあった。
あんまりにも黒猫さんが必死に懇願してくるので、根負けして「一度だけなら」と言ってしまった。
それから私は魔法少女?に変身して、空を飛び、今はオバケみたいな大きな鳥に襲われている。
もう何が何だか分からない! つい30分前まで塾で勉強をしていたのに!
こういうアニメは小学生低学年で卒業したのに!!
というか私、来月から中学生だよっ!!?
白昼夢を見るにしても、もっと歳相応のを見せてよ!!!
頭の中がパニックでグチャグチャになる。
気が付くと目の前が真っ白になった。それがオバケ鳥が撃った光線だと分かった時、
私は死んだと思った。やけに時間がゆっくりに感じた。
お父さん・・・お母さん・・・両親の顔が脳裏に浮かぶ。
そして・・・
「兄さん・・・」
大好きな兄の顔が浮かんだ。
これが走馬灯って言うやつなのだろうか。しかし、突然光は消えた。
「・・・え?」
オバケ鳥の撃った光線は上空に跳ね返された。颯爽と現れた美しい乱入者によって。
「・・・大丈夫?」
突如として私の目の前に現れた人物は、こちらを心配そうに振り返る。
綺麗な銀髪のサイドテールが風に揺れる。
月夜に照らされた少女の姿は神々しく、神秘的だった。
容姿はまるでお姫様。だけど、その堂々とした佇まいは頼もしい騎士のようにも見えた。
(・・・すごい綺麗な娘)
まるで芸術品のような美しさに、同性であるハズなのに息をするのを忘れるくらいに魅入ってしまう。
「・・・怪我はない?」
「ひゃい! だいじょうぶれふ!!」
変に緊張して噛んだ。私のバカ。
彼女も魔法少女なのだろうか? 年齢は私より2~3程、上にも見える。
私が噛んだのが面白かったのか、口に手を当ててクスクス笑った。
不思議と不快にはならず、その笑う姿も、仕草の一つ一つも、可憐で絵になる。
「あの・・・貴女は?」
「貴女と同じ魔法少女よ? 新人さん?・・・新人さんでいいのよね?」
私のほかにも魔法少女が居たんだと驚いた。
「はい! つい先ほどなったばかりです! 新人です! 不束者ですが、よろしくお願いします!!」
「まるで新妻さんみたいな挨拶ね」
と彼女は笑う。
「すいません。女の子のお嫁さんにはなれません。私には兄さんが居ますんで!!」
「・・・・・・うん?」
一瞬、彼女が変な顔をしたが気のせいだろう。
私は緊張と混乱で、自分でも何を言っているのか分からなくなってきた。
「とりあえず、色々と分からない事も在ると思うし、混乱もしていると思うわ。だから今日は少し離れて見ていて」
そう言うと、彼女はオバケ鳥の攻撃を避けながら懐に潜り込み、光の剣のような武器で斬りつけた。
オバケ鳥は怒って攻撃の相手を彼女に切り替えた。
私も何かしなくちゃ! と思ったけれど、その心配を他所に彼女の強さは圧倒的だった。
まるでダンスでも踊るように華麗に舞い、肉薄する度に大きなダメージを与えていく。
その姿に魅入られて動く事が出来なかった。
あっという間にオバケ鳥は倒されて、その巨体は最初から存在しなかったかのように霧になって四散した。
後に残るのはオバケ鳥が居た場所に浮かぶ、ビー玉くらいの大きさの赤く輝く丸い宝石のようなもの。
彼女は手馴れた仕草で不思議な事をした。
右手に持つ光の剣はステッキのようなモノへ姿を変えて、それで赤い玉をコツンと叩くと、玉の上に魔方陣のようなものが浮かんだ。
玉は吸い込まれるように魔方陣の中へと消えて彼女は「よし。封印完了」と言った。
「今、何をしたんですか?」
「簡単に言うと悪い力を封印したって感じかな?」
まるでマンガのような出来事のオンパレードに、何を言っていいか言葉が出てこない。
「まずは貴女を魔法少女にした子に話を聞いて見て? 貴女はまだ何も知らないのでしょ?」
私も全部知っているわけじゃないけどねと彼女は付け加えた。
「もう遅いから帰りましょうか。帰り方はわかるかしら?」
「はい! 公園にカバンを置きっぱなしなのでそこに戻りますね!」
「そう、じゃあ気をつけてね」
そう言って彼女は立ち去ろうとした。
「あの!!」
気が付けば、私は大きな声を出して呼び止めていた。
「・・・何かしら?」
怪訝そうに彼女が振り返る。そういう顔も可愛いってちょっとズルいと思った。
「助けてくれて、ありがとうございました!」
「ええ。どういたしまして。貴女が無事で良かったわ」
そして彼女はすごいスピードでどこかへ飛んでいってしまった。
また会えるかな。
魔法少女なんて、非現実的なモノが存在していたのは驚いた。
「一度だけ」と言ったけど、また彼女に会えるなら・・・もう少し続けても良いかも知れない。
まだ黒猫さんから詳しい事情を聞いてないし、分からない事も多い。
だけど、もし事情を聞いて、それに納得が出来るのであればもう少しだけやってみようかなと思った。
出来れば、あの可愛くてカッコイイ魔法少女と友達になりたいと思った。
妹にそんな事を思われているとも露知れず、彩斗は全速で自宅に向っていた。
自分の周囲には結界を張っているので、視認される事もなければ、カメラに写る心配もないので人目を気にせず堂々とを飛ぶ。
「めちゃくちゃヤケクソだったけど普通の少女に見えたかな?」
『大丈夫じゃないですか? 多分』
「最後呼び止められたとき、心臓が止まるかと思った。バレたのかって」
しかし、何故こうなった。
「なんで妹が魔法少女になってんだよ。どこのバカだよ。ウチの妹を勧誘したの」
『魔力が高かったんでしょうね。羨ましい限りです』
「さっさと一連の事件の元凶をとっ捕まえて、全部終わりにしたい・・・」
フィアと会話をしていると家に付いた。
自宅はマンションの5階。ベランダに降り立つと、屈んで壁に身を隠して変身を解除した。
やっぱり元の身体はいい。股間にツイているものが認識できると安心感がある。
「お帰りなさい」
「ただいま。連日は簡便してほしいんだけどな」
器用に前足で窓の鍵を開ける1匹の白い猫。彼女がフィア・エミューラである。
信じられない事に彼女は此処とは別の世界、魔法の発達した世界の住人であるらしい。
魔法を私欲の為に使う魔法犯罪者がこの世界へ逃亡、それを追ってきたが罠に掛かり魔力の大部分を損失。
魔法少女どころか人の姿にすら慣れなくなって、途方にくれていた所、強い魔力を持つ俺を見つけたらしい。
訳もわからず、なし崩し的に協力する事になり、何故か俺が魔法少女に変身出来てしまった。
魔法犯罪者を放置すれば、この世界に悪い影響が及ぶかもしれないとの事で、
彼女の魔力が完全回復するまでの間、不本意ながら代理で魔法少女をやっている。
「何はともあれ、お疲れ様です」
どうやって発声しているのか、猫の姿で流暢に喋るのは中々にファンタジー過ぎる光景だった。
「ありがとう。で? 魔力の回復はどうなの?」
「順調に回復中ですよ! ほらこの通り!」
ぴかっと光ると白い猫は小さな女の子の姿になった。
「ふー。 ようやく人間の姿に戻れるまでに回復しました!」
外見年齢にして9歳くらいだろうか。フィアは白ネコから幼い少女の姿に変わった。
腰まで伸びる薄い桜色の髪の毛は、ウィッグや染色のように不自然だったり、毒々しい色ではなく
そういう髪色もあるんだと認識できるくらいの自然な色で、彼女に良く似合っていた。
日本人とは異なる西洋人のような顔つきも、奇抜な色をした髪色が妙に似合う要因かもしれない。
その髪色がフィアが別の世界の住人であることを示しているようにも見えた。
「でも魔力が足りないから、こんな幼い姿に・・・残念です」
フィアは本当なら14歳だという。
今は9歳程度の外見だから、あと5年分の魔力が居るのか・・・
「どれくらいで溜まるんだ?」
「3ヶ月くらいですかね・・・でも元の姿に戻れても暫く変身は無理ですよ?」
なんでも魔法少女への変身は、膨大な魔力が必要であるらしい。
だから完全に元の姿に戻れるまでには3ヶ月程であるが、自由に変身できるようになるには半年くらいは掛かるとの事。
「私はアヤトみたいにバカみたいな魔力を保持してませんし。アヤトが羨ましいですよ」
「あげれるものなら、全部あげたいけどな魔力」
現代で暮らすのであれば必要ないし。
「ほぉ・・・良いですね。無自覚に才能がある人は。才能のない人の気持ちなんて分からないんでしょうね!」
あっなんか変なスイッチが入った。意外とめんどくさい奴なのだコイツは。
元から、どこか自分に劣等意識があったようで、自分を認めて欲しいから無茶をして独断専行で犯罪者を追ってこの世界へ来たのに、
捕獲に失敗した上に敵の罠に掛かってしまった事が、さらにそれを加速させたらしい。
「悪意はない。悪かった」
「ふーん」
わざわざ口に出してそっぽを向く。話題を変えよう。
「というか人に戻れたって事は、猫の姿にはもうならないのか?」
目線を居間の隅の猫用のエサに向ける。結構高かったんだけどなアレ。
フィアが猫の姿の時は、身体も味覚も普通のネコと殆ど同じである為、人間用の食事だと塩分が高かったりと健康に悪く、
そのまま食べさせるワケにもいかず、ネコ用のエサを買ったのだった。
フィアには「まるで家畜になったみたい!!屈辱っ!!」とえらい不評だった。
しかし誰だって腹は減るし、食事をしなくては生命活動の維持ができないワケで、渋々フィアはネコのエサを食べていた。
「ネコの方が省エネで魔力の回復は早いんですけど、人に戻れるなら、人で居たいですよ」
そりゃそうだよな。好き好んで動物の姿になって3食ペットフードとか嫌だろうし。
「それにもう、カリカリは嫌なのですよ。こっちの世界の言葉で言うなら、マジでガチでってやつです!」
つるぺたの胸を張り、幼女はふふんって感じでそう言った。
俺はさっきから普通に会話をしているが、彼女は気付いていないのだろうか。
そろそろ言ったほうがいいのだろうか。
「そうか。だいぶこっちの言葉を覚えたな。それより一ついいか」
「なんです?」
「服を着ろよ。なんでずっと『全裸』なんだよ。恥かしくないの」
「恥かしくは・・・あんまりないかもしれませんね。アヤトは男の人って感じがあまりしないですし・・・痛ぁっ!?」
無言で全裸の幼女にデコピンをした。
昔から女顔でからかわれて居たので、そういうのは本当に嫌でイラっとしたのだ。
単に女顔で済んでいるならまだ良かったが、最近では性別まで少女になることが多い。
最近毎日だ。どんな罰ゲームだこれ。
「いいから、なんか着てくれ」
「じゃあ着る服をくださいよ」
デコピンされて涙目のフィアは、むーと睨んでくる。全く恐くない。
「・・・魔法で出せないの?」
「この姿を維持するだけで精一杯ですからねぇ」
「女児の服なんて実家に帰らないとないぞ・・・」
「・・・実家にならあるんです?」
スッと俺から距離を取るなフィア。変な意味じゃない。
「多分、妹の奴があるんじゃないかなぁ・・・母さんはそういうの取っておく人だし」
とりあえず全身が隠れるようにシャツを渡した。
「暖房が効いているとはいえ、冬場にシャツ1枚は寒いだろう? ネコに戻ったら?」
「嫌です! せめて今日の晩御飯は人間のゴハンを!! カリカリはもう飽きました!! 人の尊厳が奪われます!!」
それに加えて最近「ちょっと美味しいかも」と感じる自分が許せないのと、
あと、たまにはお風呂に入りたいらしい。
「じゃ、あ風呂に入って、メシを食べたら今日はネコに戻りなよ。服は明日以降なんとかするからさ」
「そうですねぇ・・・まぁ仕方ないですね」
「今から晩メシ作るから先にお風呂に入っておいで」
そう告げると、よっぽどお風呂に入りたかったのか、全裸幼女はトテトテと浴槽に走っていった。
「・・・さてメシを作るか」
時間も遅いし、少量でいいかなと冷凍食品のオカズを暖めて、後は手製のサラダを作る。
最近の冷凍食品は美味しいし、種類も豊富で中々に便利だ。
慣れた手つきで食事を用意していると、シャワーの音が聞こえた。
「ちゃんと、浴室のドアを閉めているんだろうなアイツ」
洗面所に水が飛んで、壁紙にカビが生えたら掃除が面倒だ。
フィアが全裸であっても、直ぐ近くでシャワーを浴びていても、特に何も感じない。
別に自分はロリコン趣味ではないし、歳の離れた妹とお風呂なんて何度も一緒に入っているし、
幼い少女が裸になろうが欲情なんてしないし、邪な感情は沸かない。
だが、自分がそうであっても、この光景はどう見られるだろうか。
この状況を第三者に・・・
『誰かに見られたらヤバくないか?』と脳裏に過ぎった。
たぶんと言うかアウトだろう。
(まぁそんな都合よく、こんな時間に来客なんて来ないだろうさ。もう23時半過ぎだし。大丈夫さ・・・)
と思った瞬間である。
ガチャ・・・ガチャと家の鍵が開けられる音がした。
あれ? 今日、何曜日だっけ?と壊れたロボットのようにギギギと首を回してカレンダーを見る。
ああ、そうだ・・・金曜日だ。
肌寒いハズなのに、ダラダラと汗が流れる感覚を感じた。冷や汗だろうか。
状況を整理しよう。
電車で2つ隣の町に実家があり、家族はそこで暮らしている。
妹の結花は、俺の住んでいる町にある塾に月・水・金曜日に電車で通っている。
結花の通う小学校は基本的に土曜日は休みで、第4土曜日の午前中だけ授業があるらしい。
そして今日は第2週の金曜日であり、明日は休みになる。
金曜日は翌日が土曜日で休みだからか、自主的に何時もより遅くまで勉強する生徒が多く、結花もその一人だ。
そして翌日が休みである場合、結花はお泊りセット持参でウチに来る。高確率で。
(やばい・・・・)
慌てて風呂場へ向う。
半開きのドアを乱雑に開けると、ちょうど浴室から出て、洗面所の足拭マットの上で濡れた身体を拭いているフィアが居た。
「突然どうしたんですか!? キャーって言った方がいいですか!!? 欲情しちゃいました!? 浴場だけに!」
「五月蝿い! とりあえずネコになって!! 今すぐ!!!」
「なんでです!? ゴハンは!!?」
「今日が金曜日なんだよ!!!」
「あっ・・・結花ちゃんが来るんでしたっけ」
「もう結花が来ているの!! ヤバイいの!! マジで!!」
「マジでの使い方がそれっぽいですね! 本場っぽい!」
「いいから早く!!」
「待ってください。身体を拭かないと・・・余計な不純物は取り除かないと上手く変身できませんし私」
「ああっ!!もうっ!!」
なんでコイツは何時もマイペースなのだろうか。状況を正しく理解して欲しい。
フィアからタオルを奪うように取り上げると、フィアの身体をゴシゴシと拭く。
「ちょっ・・・もうちょっと優しく・・・」
正直余裕がない。フィアには早くネコになって貰わないと俺が死ぬ。社会的に。
「あんっ・・・」
あまりにゴシゴシ擦ったせいかフィアがちょっと卑猥な喘ぎ声を上げた。
ちょうどその瞬間である。
「兄さん、洗面所で何をしているんですか? 台所の火が付けっぱなしですけど・・・」
妹の結花がひょいっと浴室に顔を出した。
「あっ・・・」
「・・・何 を し て い る ん で す か 兄 さ ん 」
「いや・・・その・・・」
洗面所でヤバイ感じに赤面した全裸の幼女の胸元を、
タオルで拭いている27歳の男ってアウトだろうねと他人事のように思った。
「・・・その女は誰です?」
何時もは可愛らしい妹が恐い。具体的に言うと目がヤバイ。妹の眼に光がない・・・。
「その・・・あのな・・・」
それから誤解を解くのに1時間掛かった。
いや・・・解けたのか? 誤解。
フィアは特に気にする事無く、用意された食事を美味しそうに食べた。
「やっぱりネコのエサじゃなくて、人間のゴハンはいいですね!! アヤトは何時もネコのエサしかくれないですし!」
「おいやめろ・・・」
「・・・兄さん?」
本当に困った相棒だ。
このバカ幼女め・・・まだ俺を追い詰めるかコイツは。
フィアは食事が終わると勝手に布団を敷いて、ネコにならずに人間の姿で先に寝てしまった。
(フリーダムすぎる・・・)
今からフィアがネコになると、妹の結花の視点では家に居たハズのフィアが突然消えたことになり、
こんな時間に幼い幼女が家から消えたら・・・下手したら大問題になる。
だからフィアの事はまぁいい。今はそれ所じゃないのだ。
俺は正座で結花に丁寧に説明した。もちろん嘘の説明を。
「つまり兄さんの会社の方の娘さんなんですか、フィアちゃんは」
「そうなんだ」
「フィアちゃんのご両親が、仕事で海外に行っている少しの間だけ預かっていると?」
「そうなんだよ」
「フィアちゃん、外国の方ですか? 容姿といい名前といい」
「・・・奥さんが外国人らしいぞ。日本にはまだ色々と慣れていないらしい」
「それで日本のお風呂の使い方が分からなくて、さっきみたいな事に?」
海外旅行なんてした事がないので、海外のお風呂事情なんて分からないが、とりあえずそれで押し切った。
「そうなんだよ。さらに言えば濡れた身体で家の中を歩き回ろうとしたから、慌てて洗面所に戻したら・・・」
「ちょうど私が来たと?」
「そうなんだよ。いきなり来てビックリしたよ。電話が一本欲しかったかも」
「・・・いきなり来られると不味い事をしていたのですか?」
「いえっ! 滅相もない!!」
いつもは可愛くて、甘えてくる結花が恐い。
まるで浮気が見つかって、妻に怒られている夫のようじゃないかコレ。
結婚はしてないし、相手も居ないけど、そういう気持ちが今、分かった気がする。
「兄さん? 聞いてます?」
「はい! 聞いてます!!」
「それと、なんでフィアちゃん、兄さんのシャツを着ているんです? 私だってまだなのに」
「・・・うん?」
「フィアちゃんのご両親が、兄さんに面倒を見てくれることを頼んだのであれば、最低限、数日分の衣服くらい持参するでしょう」
「そっ・・・それは・・・手違いで、荷物が別の場所にいったみたいで明日以降に届くと思うよ」
「そうですか。では今日着ていたフィアちゃんの衣服はどこです? まさか全裸でここまで来たわけじゃないですよね」
「あんまり汚れているものだから・・・その・・・クリーニングにだな・・・」
「ふぅん。・・・それと兄さんが飼っているシロはどこへ?」
シロとはネコ状態のフィアの事。
結花がシロと勝手に名付けて、撫でたりして可愛がっていた。
「フィアが猫アレルギーなんで友達に数日預けているよ」
「残念です・・・」
尋問のような応答を繰り返し、やがて納得したのか開放された。
兄貴の家に来たら、全裸の幼女と居るとかドン引きだろうな。まさか犯罪ではないかと疑われたのだろうか。心が痛い。
結花は一連の追求に、とりあえずは満足したらしい。
自身のツインテールを解きながら振り返り、こう言った。
「じゃあ最後に、兄さんは罰としてお風呂で愛情を込めて私の背中を流す事!」
「なんの罰だよ・・・悪い事なんてしてないぞ俺」
「誤解されるような事した!」
「あーハイ。悪かったって」
大体、幼女に変な事なんかするかと。
「そんな変態じゃないし、年下には一切なんの興味もないよ。眼中にないよ」と言ったら結花の目が再び鋭くなった。
さらに
「仮に結花が裸で居ても、何かする気に絶対ならないし!」と安心させようとしたら結花に無言でつねられた。
マジで痛かった。
それから結花にはフィアは少しの間だけ預かっている上司の娘さんで、
海外暮らしが長く、日本での一般常識に欠ける少し変な娘で落ち着いた。
実際変な娘だからよしとしよう。もうめんどくさい。
それから俺は結花と一緒に風呂に入って、背中を流した。
これで機嫌が直るなら安いものだけど、そろそろ年頃になるんだしもう少し恥じらいを持って欲しい。
「実は兄さんに相談したい事があって・・・」
「相談? 珍しいな」
狭い湯船。俺の膝の上にちょこんと座っているせいか結花の束ねた後ろ髪が顔にチクチク刺さる。
「お父さんとお母さんに、ネコを飼ってもいいか頼んで欲しいんだ」
「ネコ? 捨て猫か何かか?」
「う~ん・・・そんなとこかなぁ?」
「今どこにいるの?」
「公園で一晩、待っててもらっているんだけど・・・」
「・・・ネコに?」
「え・・・いや・・・そのね? 多分、私を待っているかなって」
「よく分からないけど、明日にでも父さん達に電話で話してみるよ」
「ありがとう兄さん!」
多分、大丈夫だろう。娘にはめっちゃ甘いし。
それから他愛のない話をした。
「それと、あんまり詳しくは話せないけど・・・」
「何?」
「今日、すっごい可愛い娘にあったんだ。どっかのお姫様みたいだったよ」
「へ・・・へぇ・・・」
・・・それ多分、俺です。オマエの兄ですとか絶対に言えない。
「あんなに可愛い子、初めて見た。びっくりしちゃった」
「そうなんだ・・・良かったな」
良くないけど。
俺と妹との仲は他所の家に比べると、かなり良いと思う。
まだ反抗期になっていないのか、よく学校での事や、塾での事を話してくれる。
だから、これもそういう一環だろう。正体がバレてはいないと思いたい。
分かった上でカマをかけてきているなら恐すぎる。
「何時か友達になれるかなぁ」
「なれるといいな」
「うんっ」
そうなる前に全部終わらせて、フィアに犯罪者と共に元の世界にお帰り頂いて、魔法少女を辞めたいです。
平和を取り戻して普通の生活に戻りたい。
「どうしたの大きなため息ついて? 幸せが逃げるよ?」
「今日は色々疲れてな・・・」
「お仕事? お疲れさま?」
「・・・ありがとう」
ぽんっと結花の頭に手をやると、眼を細めて気持ちよさそうに微笑んだ。
風呂からあがると結花はすぐに寝てしまった。
常夜灯が灯る寝室に布団を3枚敷いて、俺と結花とフィアは川の字になって寝た。
視線をフィアに向ける。
当の本人は、悩みなんて何一つ無さそうな顔で眠っていた。
どうでもいいが寝相が悪い。フィアが蹴り飛ばしたであろう掛け布団を戻してやる。
(ネコの時もすごい体勢で寝ていたなコイツ・・・)
先ほどの会話を思い出す。
(ネコを飼いたいか・・・ソイツが結花を魔法少女にさせた奴か?)
フィアの同郷の者だろうか。フィアとは別で動いているのだろうか。
会って話を聞きたいが、そうすると俺が魔法少女なのがバレる可能性もある・・・どうするか。
(・・・まぁ明日は休みだし、明日ゆっくり考えよう)
俺は望んで魔法少女になったわけじゃない。
成り行きだ。
たまたま、そうなってしまい、それが出来るのがとりあえず今は自分であり、
自分がやらなければ、周りの人間が何か悪い事に巻き込まれるかもしれない。
だから仕方なくやった。
魔法少女として世間の平和を守っても、その姿や活躍は地球では記録に残らない。
まぁ俺の場合、残っても困るが。
どんなに英雄的な活躍をしても、誰かに褒められるわけじゃない。
功績が評価されるわけでもない。
幾度人々の生活を守っても、誰にも知られず感謝もされない。
だから過去、何度か存在したらしい地球の少女が変身した魔法少女は長く続かなかったと聞いた。
どんなに頑張っても、誰からもそれを知られないというのは案外辛いものらしい。
確かにそういう人も居るだろう。
だけど・・・
誰からも知られなくてもいいじゃないか。
誰かの何気ない日常を守れたのなら。
世の中、誰だって人は知らないうちに助け合って生きている。
俺の生活だって、きっと見えないところで多くの善意に支えられているのかもしれない。
悪行は何時か自らに返って破滅を招くし、善行はきっと何時か自分に返ってくると信じたい。
そうやってこの世界にはまだ希望があるんだって思えば、きっと世の中は素晴らしいものになるだろう。
俺、結構頑張っているよ?
だから―――
神様、もし居るなら俺の頼みを聞いてください。
どうか妹や、家族に、俺が魔法少女だという事がバレませんように。ほんとマジでお願いします。
後これ以上、余計なトラブルは勘弁してください。お願いします。
翌朝、目が覚めると全裸のフィアが腰に抱きついて寝ており、それを目撃した結花の目から光が消えた。
「神様!? 頼むっていったよね!?」
「何言っているんですか兄さんは・・・寝ぼけているんですかっ!」
顔にぽすんと枕が投げられた。
「あー よく寝たー」
「いいから、早くシャツを着ろフィア!」
まだまだ災難は続きそうだけど、出来る範囲で頑張って行きたいと思います。
後書き
まずはお読み頂き、ありがとうございました。
この小説で2作目になります。1作目は作者ページから読めるかと思います。
元々は25話分くらいで考えていた連載用の小説でした。
プロットは出来てましたが私に実力がない上に、遅筆である為に
時間が掛かりすぎて8話目くらいが出来た段階で放置しておりました。
このまま人目に触れないまま、闇に葬るか迷ったのですが、
つい最近インフルエンザに掛かったのが転機になりました。
とりあえず体調は回復したのですが、ウィルスの体内潜伏期間があるので
会社からは期日まで休むように言われまして(当たり前)
体調はいいのに何もする事がなく暇すぎた結果、
この小説を手直しして1本の短編小説にして見ようかなと思い至った次第です。
やはり折角書いたのだから、誰かに見てもらいたかったのです。
プロローグや序盤を削り、第一部であった1~5話の
「とりあえず最低限は見せれるレベルかも」まで出来ていた話を切り貼りして1つに纏めた感じです。
なるべく自然になるように纏めたつもりですが、実力が伴っていないので不自然に見えるかもしれません。
誤字や脱字も気を使いましたが、もうしかしたら見落としもあるかもしれません。
でも、それが今の実力であるので暖かい眼でみて頂けると幸いです。
上手く纏まったのかと言われれば、妹を魔法少女にした黒猫や、魔法犯罪者は拾いきれておらず、
敵の目的も不鮮明な序盤の段階での打ち切りのようにも見えてしまうかもしれません。
これから色々な事が起こるかもしれないという導入で終わっている感じになってます。
一応、続きは少しだけ書き溜めたモノがありますが、人目に触れていいレベルではないので
手直しや再構築に時間が必要で、すぐに続きを投稿するかも、このまま終わらすかも未定です。
このまま短編として終わる可能性もあれば、
気が向けば続きを書くかもしれませんが、今月末から6月まで海外赴任が決まりましたので
多分直ぐには無理であると思います。
現状はこれで1本の作品として再構築した感じです。
男が魔法少女になるというニッチなジャンルであるし、これを面白いと言ってくださるかは謎ですが
今の自分で出来ることは全てやったので個人的には満足しております。
長々とお付き合い頂き、ありがとうございました。
あと、下に設定資料集があります。
未発表の設定も含まれるので嫌な方はスルーしてください。
以下、一部設定の暴露
(激しくネタバレあり)
人物
伏見 彩斗
主人公。27歳フリーター。
企業向けの機材レンタル会社に勤める。
善良な一般市民であり、サイフを拾うと交番が近くに無くても届ける善人。
子供の頃はヒーロー番組が大好きで、正義のヒーローに憧れて居た。
まさか自分が魔法少女になるとは考えても居なかった。
男性であるが優男で、顔も一見すると女性のようにも見えて中性的。
色々な意味で中々に良い性格をしているのでイジメられる事は無かったが
女顔である事を結構気にしている。
自分が大人に成りきれて居ないと感じており、
立派な大人を尊敬し、自らもそうなろうとしている。
けっこうのんびりした性格で時間に追われる事を極端に嫌う。
両親や妹とは血の繋がりは無いが、実の子と同じ様に大事にして貰ったので
親に感謝しており、何時までも甘えるのも忍びないと独り立ちをした。
何かあった時に両親の力になりたい事もあり、直ぐに行ける距離に住んでいる。
実家までは電車で2つ目の駅で、行こうと思えば自転車でも行ける範囲。
本来、女性にしか変身出来ない魔法少女に何故か変身が出来る稀有な存在。
変身すると15歳前後に外見年齢が下がる。
正義感が強く、時に熱いのは子供の頃に脳裏に焼きついたヒーロー番組の影響。
お人よしで善人である故か、男女問わず無意識に他人を誑し込む傾向がある。
気まぐれに受けた占いで青い顔をした占い師から
「女難の相が恐ろしく強い・・・何時か刺されると思うマジで」と言われた。
魔法少女になることに抵抗があるものの、割り切っている。空を飛ぶのが好き。
『黒』の魔法少女に変身する。魔法少女時はアヤと名乗る。
フィア・エミューラ
一応メインヒロイン。
地毛に見える淡いピンク色の髪色をした少女。
地球とは別の世界、魔法の世界の住人。
そして『白』の魔法少女に変身する現役魔法少女。
本来は日本語を話せないが、言語翻訳の魔法で会話をしている。
魔法を私欲で悪用する魔法世界の犯罪者を追って地球へ来た。
魔法世界では成績が悪く、落ちこぼれ気味で劣等感を持っている。
今回の犯罪者の追跡を正式な任務として請け負っておらず、
手柄を取って、皆に認めてもらいたいと言う強い想いで独断専行した結果失敗した。
追跡が来ることを想定していた犯罪者の罠にはまり、魔力を殆ど失い弱体化。
危うく消滅しそうな一歩手前で、白ネコへ姿を変えて少ない魔力で生き延びた。
この失敗で自分は駄目な奴だと腐り、色々やる気がなくなって適当娘に。
一応は自ら決めた使命を果たすべく、変わりになる魔法少女候補を探し彩斗に協力を申し出た。
初対面で彩斗を男だと知らずに魔法少女になって貰ったが、変身出来てしまったので
男だと知った後も「まぁいいか」と協力してもらっている。
劣等意識が強く、自分の嫌な部分を見たくなくて無理に明るく振舞っており本来の性格ではない。
バカなキャラを演じているが、内心はしっかりしたいと思っているし周囲に認められたいと願っている。
とりあえず人間の姿になれるくらいには魔力が回復したが、
完全回復していないので、9歳の幼女の姿をしている。本来の年齢は15歳。
周囲には彩斗の知り合いの娘さんで、少しの間だけ預かっていると説明しているが
こっちの世界で戸籍がないので職質されるとヤバい娘。
ネコの姿をしていた時はネコと味覚が同じなので、人間用の食べ物は塩分が強い為に食べる事が出来ず
キャットフードが主食になっていた。そのせいで自身も知らないうちに彼女の自尊心が傷つけられており、
今でも不満に思っていて「アヤトがくれるのは何時もネコのエサばっかりだったから人間の食べ物は美味しい」と
周囲にしみじみ話す事がある。その度に彩斗に迷惑をかけている。ささやかな復讐なのかもしれない。
なんだかんだで彩斗とは相性がよく、性格のめんどくささを無視すれば良い相棒である。
伏見 結花
『青』の魔法少女に変身する魔法少女。
12歳の小学生。綺麗な栗色の髪の毛とツインテールが特徴。
もうじき小学校を卒業して中学生になる。
何時も優しい兄が大好きなブラコン。
本人にもブラコンの自覚はあるが止められない止まらない。
勉強もスポーツも出来て、見た目も文句の付けようもない美少女なので
学校で優等生として評価も高く、友人も多い。
だけどブラコン過ぎて兄の話になると延々と喋るので
疲れた友達からは「ああ・・・そうだね・・・良かったね」と死んだ魚の目で生返事される事もしばしば。
男子からはそれなりに人気はあるが、ブラコンである事が全学年に知られているので
特に告白される事もなく、男子が嫉妬から彼女の兄の悪口を言ったものなら
口にする事も恐ろしい、普通に生活をしていれば、けして味わえない1日で黒髪が白髪になりかねない程の
恐怖体験が待っているので校内での絶対禁止NGワードになっている。
兄が絡まなければ超いい娘。
関わると地雷。
兄と血のつながりがないことは母親の意向で
「知られたらヤバそうだから言わないでおこうかしら」と明かされていない。
趣味は料理。歳相応に可愛いものが好き。
ひょんなことから魔法少女になった。
兄が変身した魔法少女を兄とは知らずに、憧れて友達になりたがっている。
無自覚で魔法少女状態の兄に恋愛感情のようなものを持ってしまい、
自分に特殊な性癖があるかもしれない事に悩むが、
結局は兄である事を本能的に無意識に感じている可能性があり末期かもしれない。
リア・ヘルイム
黒いネコに姿を変えた『赤』の魔法少女に変身する少女。
フィアと同じ魔法世界の住人であり現役の魔法少女である。
逃亡した犯罪者を追って魔法世界から来た。
フィアとは幼馴染であり親友であったが、能力主義な世界ゆえに少しずつ溝が出来てしまい
何時しか会話すらしなくなった。というよりは周囲の人間関係のせいで迂闊に近づけなくなった。
フィアとまた友達になりたいと思っているが
成績優秀なエリートであり、周囲の期待やプレッシャーもあり中々思うように振舞えない。
正式な任務として受領して地球へ着たが、フィアが独断専行で地球に来ている事を知った為に
彼女の身を案じて焦った結果、冷静さを失い、らしくないミスをしてフィアと同じく罠に掛かり魔力を失う。
その後は黒ネコに姿を変えて生き延びていた。
堅苦しくなく、自由にありのままの自分で居られる地球での生活を気に入っている。
できればフィアとの関係を修復したいが、フィアの方が遠慮して避けているので実現しない。
正式な任務として来た事もあり、許可を得て現地協力者用に自身のモノとは別に
予備を含めて変身デバイサーを5個持ってきている。そのうちの一つは伏見 結花の手に渡った。
両親
血の繋がらない彩斗を実の子と同じ様に育ててくれた良いご両親。
家は比較的、裕福なほう。
結花が兄の事になるとアレなので心配しているが特に対策はない。
娘に対してかなり甘め。
店長
彩斗のバイト先の会社の店長。
温和で気配りの出来る良い人で社員やバイトに慕われている。
「娘さんを嫁にくださいよ」と冗談で言うと恐い目にあう親馬鹿な面もある。
しかし娘さんは三十路でそろそろ相手探さないと不味いかもしれない。
実際の所、娘さんは結婚に飢えており何時でもOKな様である。
ドゴルフー博士
地球へ逃亡してきた魔法世界の住人で魔法犯罪者として追われている。
筋肉質な中年の男性。
今の所は出番はないが、現在地球で発生している魔法事件全てに絡んでいるとされる存在。
追っ手がすぐに来ることを見越しており、その為に魔法世界からこちらに増援が来れない様に細工をした。
細工が完成前に2人の魔法少女が追手でやってきたが、それも見越していたので
強い魔力反応を持つ者が魔法世界から地球に来た場合に発動し、その魔力を喰らう
いやらしいまでに隠蔽され、感知されづらくした術式をトラップとして仕掛けた。
地球と魔法世界を繋ぐ次元の通路は彼の攻撃によって使用が出来ない状態であり魔法世界から増援が来ることはない。
世界、単語、その他
魔法世界アルテア
フィアとリアが居た世界。
科学の変わりに魔法の発達した世界であり、地球とは対になる鏡のような存在。
惑星にある大陸すべてが同じ国家であり、すべての大陸で共通言語を話す。
正義を愛する国民性で基本的に善人ばかりで悪を極端に嫌う。
魔法少女という存在が国を導いてきたので女性の権力が強い世界。
行き過ぎた正義と、徹底した能力主義の為、社会に馴染めずあぶれた者も少なくなく、
派閥による対立も発生しており不穏な空気がある。
魔法少女
アルテアで開発されたシステム。
一種の人間兵器であり、一騎当千の武を誇る。
人の身ではけして到達できない奇跡を起こす存在。
能力は個人の持つポテンシャルやメンタルに大きく左右されてしまい、
単に兵器として見る場合、能力の均一化がされていないので不安定で不安が残る。
変身すると、その姿はまるで女神のような神々しい美しい少女の姿へと代わる。
体内に強い魔力を持ち、尚且つ未成年の女子しか変身できないが
極稀に成人していても変身できる特異な者もいる。
しかし男性が変身した事例は過去にない。
変身できるのは穢れを知らない若い乙女のみ。
異性と交わると変身は出来なくなる。
なので彩斗が異性と交わった事がない童貞であることは、魔法少女の存在を知っている者達には筒抜けである模様。
魔法世界アルテアの人間以外でも、強い魔力を持つ者であり条件を満たせば変身が可能である。
変身には魔法少女の能力を解放する特殊な鉱石が埋め込まれた変身デバイサーが必要になる。
一度デバイサーに登録すると専用機となり他者は使えない。
変身する者によって武装や装飾や色は変わるが、
特定のメイン色を持つ魔法少女は通常よりも才能があると噂がある。
ティアが疎まれたのは落ちこぼれであるのに『色持ち』だった事が大きいらしい。
種
赤いビー玉のような外見をした魔道具。
生物のマイナス方面の思念や感情を喰らい成長する生きた道具。
元々は負の感情を吸い取り、人間の生活からストレスを消し去る目的で作られた道具だった。
しかし欠陥品であり、マイナス思念が意思を持ち、やがては悪意に溢れた邪悪な生命体を作り出してしまい
過去に魔法世界アルテアに置いて全魔法少女が出撃して鎮圧する大問題になり、起動したアプテムは全て破壊された。
しかし破壊を逃れた未使用品も存在しており、地球に逃亡した犯罪者は何らかの目的で使用している模様。
アプテムとは魔法世界アルテアでの言葉で「種」を意味する。
生き延びて進化し、最終的に開花まで至ると危険度が上がる。
基本的にそうなる前に対処が必要であるが過去に1件だけ開花が発生している。その際、発生した世界が崩壊し
当時最強の魔法少女がなんとか滅ぼしたが自らの命も失う結果になった。