キャットの宿
禿げ上がった船長は、オレンジの照明を反射させながら、熱弁し始めた。
「お、恐らく、スフィアを体内に取り込んだ生物は、その力で過剰に成長したに違いないっ! だから、ワシらは20マイリーでその生物の体内に潜り込み、スフィアを手に入れるのじゃあああっ! はあっ、はあっ……」
(な、なんだこいつ)
急にテンション高めで語り始めたハゲ(船長)にドン引きのクロードであったが、いつものことだから、とキャットに諭された。
「お酒入ると熱くなっちゃうのよ、この人」
「怖いって……」
「それより、魚の体内はどんな敵がいるか分からないんだから、ちゃんと守ってよね?」
クロードのことを上目遣いに見やるキャット。
「……えっ」
酒が入っているせいか、妙に色っぽい。
思わず生唾を飲むと、今度は小さく耳打ちしてきた。
「今夜は、私の宿に来て」
「……!」
料理を堪能し、店を出ると、辺りはすっかり闇に包まれていた。
オレンジの街灯が港町を優しく照らす。
「二次会行く人おおおーっ」
「船長、明日早いんだから、帰った方がいいわ。 じゃ、私らこっちだから」
「えええっ!? 帰り道、ワシ一人? さーみーしーいー」
(うぜえ……)
キャットの宿泊している宿に到着したものの、
クロードは気が動転しそうだった。
(……これは、罠だ)
と頭で理解しつつも、自分が何をしてしまうのか、予想がつかない。
つい、ふしだらな考えも浮かんでしまう。
(……チャンス、だよな)
「201号室よ」
キャットの後に着いていく。
冷静な考えと、よこしまな考えが葛藤している内に、キャットの部屋の中に到着した。
「きゃっ……」
クロードは、そのままキャットをベッドに押し倒した。
「私、賢者の石が欲しいのよ」
シーツに包まりながら、キャットは、自分が宝石を集める理由を語り始めた。
「全ての石を原子レベルで解析して、それぞれの長所を組み合わせることで、賢者の石が生み出される。 大学の教授がそう言ってたわ」
「キャットって、大卒だったのか」
「……まあね」
キャットは、ベッドから這い出ると、服を着替え始めた。
時刻は早朝で、薄明かりがカーテンから漏れている。
「ブルースフィアを手に入れたら、次はイエローサファイアよ」
「……俺が、見つけてやるよ」




