ゴブリンのアジトへ
老婆と酒を飲んだ翌日、ある物を準備してくるように言われ、大通りの店の前にやって来た。
看板には、「アイテムショップ」と書かれており、店内にはアクセサリーから食料品まで、様々なものが取りそろえてあった。
クロードは食料品の並ぶ棚で足を止め、黄色がかった透明な液体の入ったビンを手に取った。
「ハチミツ1リットル、銀貨1枚か」
昨日、冒険者居酒屋で2人は、このようなやり取りをしていた。
「森のグリズリーを利用するだって?」
アヒージョを口に運びながら、クロードは老婆に質問を投げかけた。
「迷いの森には懸賞金のかかった凶暴なグリズリーがおる。 奴をゴブリンの巣までおびき寄せるのじゃ」
店から出て左に進み、南下する。
石畳の床が途切れた地点で、老婆が待っていた。
「ハチミツはどうじゃった?」
クロードは革のリュックからハチミツを取り出すと、それを見せつけた。
「これで足りっか?」
「上出来じゃ」
舗装された道を1時間程進むと、分かれ道になっており、右が平野、左が森であった。
「森に進む者は、今は冒険者以外おらんな」
そう言って、老婆は森の方へと歩を進めた。
道中、ゴブリンの縄張りの位置の説明を受ける。
「ゴブリンはこの山道を登った滝つぼの近くを住処にしておる。 情報では、木に縄をかけて、侵入者が分かるよう、鈴をこさえておるらしい」
ゴブリンが賢いということは聞いていたが、その話にクロードは驚いた。
「ゴブリンって、そんな頭いいのかよ」
「分からん。 もしかしたら、コロボックルの入れ知恵かも知れん」
森はもはや、道なき道となっており、膝より高く生えた草木を、剣で刈り取りながら進む。
川の近くまでやって来ると、川上を目指して進み始めた。
「グリズリーは…… どこに、住んでん、だよっ、はぁ、はぁ……」
息を切らしながら、老婆に聞く。
「……分からん。 だが、その為のハチミツじゃ」
老婆は、ハチミツを木に塗りつけ、ゴブリンのアジトへの道しるべにする、と言った。
「……!」
その時、クロードが何かに気づき、歩みを止めた。
「……どうした?」
「縄、だ」