旅立ち
「……!?」
台座とイエローサファイアは固定されている為、持ち出すことができない。
すかさず、クロードが蹴りを見舞う。
「らあっ」
床に仰向けに倒されると、そのまま馬乗りになり、フードを外して顔を改める。
「……男?」
フードの中は、金髪の青年。
クロードは、キャットの変装を疑い、ほっぺたを引っ張った。
「いでででっ」
(こいつ、キャットじゃねぇ!)
すると、イエローサファイアの置かれている台座から火の手が上がり、先程の中年の女性の一人が、宝石を手にして走り出した。
「……あっ!」
クロードが叫ぶ。
この青年はクロードと同じように利用されていたに過ぎず、本物は中年の女性に扮していた。
女性が逃げ出そうとするも、クロキが扉の前に立ちはだかる。
(ナイス、クロキ!)
「レッドストーンを返してもらおうか」
「……」
後ろにはクロード、正面にはクロキ。
中年女性は、身を翻して階段を駆け上った。
(やべぇ! そっちには親父が……)
クロードが慌ててキャットを追うと、2階では剣を手に持って、女性を追い詰める父親の姿があった。
父親は、イエローサファイアでキャットをおびき出すと聞き、念のため自分も戦える準備をしていた。
「ゴホッ…… お前たちの足を引っ張る訳にはいかねーからな」
「あーあ、これまでの苦労が水の泡よ」
中年女性の姿をしているが、声はキャットのそれであった。
「正体を現しやがったな…… 石を渡せ、キャット」
すると、キャットはイエローサファイアを掲げ、口の中に放り込んだ。
「……! てめっ」
「ニャ~ン」
キャットは、猫に姿を変えると、素早く窓から飛び降りた。
「キャットは逃がしちまったけど、これ……」
キャットが猫に変身した際、身につけていたものが床に残っていたが、その中のポーチに、今まで集めた3つの宝石が入っていた。
「これは俺の物だ」
クロキがレッドストーンを手に取る。
「残り二つは?」
「こういう時は、揉めないように山分けがいいだろう。 お前と親父さんで、一つずつだ」
クロキの提案で、クロードがブルースフィアを、父親がグリーンパールを手に取る。
「じゃあな」
クロキは目的を果たし、家へと帰って行った。
この後、クロードはブルースフィアをクロキに売り、1万ゴールドという大金を手にすると、それを父親に渡した。
「これで、当分はやってけんだろ」
「……行っちまうんだな」
クロードは、本当は自分は冒険者に向いていない。
大人しく店を継ぐのがいいと、ゴブリンにやられたあの日から思っていた。
しかし、闘牛と戦った夜、考えが変わった。
(俺だって、やれる!)
クロードが家の扉を開けようとした時、父親に呼び止められ、あるものを手渡された。
「持っていけ。 金に換えて武器を揃えてもいいし、これ自体を冒険に役立ててもいい」
それは、グリーンパールであった。
「……貰っとくわ」
クロードは、扉を開けて一歩を踏み出した。
おわり
やっと終わりましたー。
感想、ダメ出し待ってます!




