魔族の結末
「え、じゃなぁあああーーい!」
衛兵は、クロキの腕を振り払おうともがく。
「クロキ、謝れって!」
しかし、大人しく非を認めれば、城に連行されてしまうだろう。
クロキは、どうにかしてこの場の難を逃れる方法を模索し、一つ方法を思い付いた。
「衛兵、取引だ! これから俺が話す情報を城に持ち帰れば、あなたは出世出来るかも知れない」
「……!」
ピタリ、と衛兵の動きが止まった。
押さえつけていた腕をほどくと、衛兵が立ち上がる。
「出世に繋がる情報、だと?」
クロキは、その前に自分たちを見逃せ、と言い、衛兵はそれを承諾した。
「ただし、でまかせならすぐに連行するぞ」
「……取引成立だな」
クロードには、これからクロキが何を話すつもりなのか、全く想像がつかなかった。
(一体、何を話すつもりだ?)
「この井戸の底に、魔族の長が住んでいる。 奴らは、地上に返り咲く機会を伺っているらしいが、力が整う前に、城にいる兵隊を総動員すれば排除できるハズだ」
衛兵は、口の中で、魔族だと…… と呟いた。
そして、にわかには信じがたい、といった表情をする。
「……本当なのか?」
クロキがクロードの方をチラ、と見る。
(……そうか、魔族を殲滅させちまえば、石を展示する許可を取る必要もないし、今後連中と戦争になるリスクも回避できる)
クロードは、クロキの話を裏付けるため、昨夜の出来事を語った。
「昨日の夜、俺たちは魔族の老人とここで戦った。 もし必要なら、証拠も見せてやる。 魔族の死体が家の裏に埋めてあっからよ」
衛兵は腕組みをし、じっと考え込む素振りを見せたが、腕を振りほどくと、クロードを見据えた。
「……本当、なんだな。 それならば、我々は直ちに対処しなければならない。 ご協力感謝する」
先程の態度とは打って変わり、衛兵は足を揃え、2人に向かい敬礼した。
(……これで、良かったのか?)
後日、国の兵団が街になだれ込み、井戸の底を調査することとなった。
結果は新聞で知ることとなったが、その内容を読むと、クロードの食欲は一気に失せた。
朝、用意したパンが全く喉を通らない。
「魔族の長は、6歳の子供……」
恐らく、ベル坊ちゃま、と呼ばれていた者のことであり、魔族は皆、処刑されることが決まっているという。
(いくら魔族っつったって、こんな子供まで……)
しかし、罪悪感に浸っている間もなく、クロキが家に現れた。




