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3つの宝石  作者: oga
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深夜の攻防

 クロードは、急いで家の裏にある物置にやって来た。

中には採掘するためのスコップ、つるはし、不純物の混ざった鉱石などがある。

ガチャガチャとそれらをかき分けるも、斧が見当たらない。


「……外か?」


 外に飛び出すと、壁に立て掛けられている斧を見つけた。


「っし」


 大通りに面している鉱石ショップに背を預け、様子を伺う。

すると、魔族の老人が南の方から歩いてきた。


(……やっちまうか)


 柄を握りしめ、飛びだそうとした時、老人は懐から何かを取り出した。

おもむろにそれを口に運ぶと、突然、もがき苦しむように地面に膝をついた。


(何だ……)


 クロードは、老人の変化に釘付けになった。

老人は頭から角を生やし、大きく膨らんだ体が服をちぎり、闘牛のような姿へと変貌した。

背丈は、クロードの倍はあろうかと思われる。


(おいおい、あんなの倒せねーだろ!)


「クロードか!?」


 不意に、背後から声をかけられた。


「……おっ、親父!」


 そこに立っていたのは、物置きの音で目を覚ましたクロードの父親だった。


「……風の噂で、お前は死んだと聞いていたぜ。 ったく、心配させやがって」


「親父…… これが終わったら、本当のことを話すからよ。 今は家に隠れてろよ」


 クロードの父親が大通りの化け物を目にすると、魔物か、と小さく呟いた。


「……クロード、俺が数分稼ぐ。 斧をよこせ」


「なっ、無理だろ!」

  

 父親は病気がちで、闘牛を相手にすることなどできない、クロードはそう思った。


「俺はこれでも元冒険者だ。 今はあいつを仕留める程、腕力は残っちゃいないが、簡単にやられもしない」


 父親が斧をむしり取り、大通りへと歩を進める。

振り向きざまに、クロードに命じた。


「雑貨屋に行って、奴を仕留められる道具を揃えてこい! 裏口から、つるはしか何かで扉を壊せば入れるハズだ」


「……」


 クロードは、物置きからつるはしを掴み取ると、全力で雑貨屋へと向かった。







「っらあ!」


 ドガ、と扉につるはしを打ち込み、壊れた箇所から手を入れて鍵を回す。

店内にやって来ると、棚に目を走らせた。


(相手が闘牛ってんなら、まず素早い動きを止めねーとだよな)


 落とし穴のような大がかりなものは作れないし、トラバサミのような罠もこの街で売っているのを見たことは無い。

クロードは、ふと、目についたコショウを手に取った。


(……こいつを、牛の目の前で破裂させたら、効くんじゃねーか?)


 しかし、コショウは瓶に入っているため、破裂させることは出来ない。


(……破裂か)


 クロードは、もしかしたらと思い、バラエティグッズのコーナーにやって来た。


(……あった、風船だ!)


 



 

 店の台車を拝借し、中に手製のコショウ風船を6つ入れ、大通りへと姿を現した。

父親と応戦していた闘牛が、クロードの匂いに気付き、そちらを向く。


「た、助かった……」


 闘牛の攻撃を横っ跳びでかわし続けていた父親の足は、プルプル震え、限界に達していた。


「ンモオオオーーーー!」


 闘牛は、クロードに向かって猛然と走り出した。

クロードは、篭を逆さにして、道端に風船をぶちまけた。

  


 

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