ブラックについて
「ブラック、ダイヤモンド!?」
目の前の男は、一体何者なのか?
「君の頭の中を整理するために、経緯を説明しよう。 順番に話をした方が、分かり易いだろうからな」
ブラックは、これまでのことを語り始めた。
ブラックは、世界を放浪する医者であり、同時に、レアアイテムを集めるコレクターでもあった。
ある日、5つの宝石の話を聞き、それらを集めようと思い立つ。
レッドストーンがオークションに出品される話を聞きつけ、多額の資金を支払い落札したが、宝石を何者かに盗まれた。
その犯人こそ、会場の客になりすましたキャット
であり、その日から、ブラックは彼女を追っている。
しかし、相手は変装の達人であり、そう簡単には見つからない。
確かなのは、キャットがブルースフィアを狙っている点であり、ブラックは先回りして待ち伏せすることにした。
三面記事を読み、船長の近辺を張っていると、案の定、キャットが現れた。
しかし、同時にクロードも現れ、迂闊に近くことが出来なくなる。
諦めずに、レストランで隙を窺っていると、船長がナス湖の竜神に手を出そうとしている話を盗み聞きする。
以前、ブラックは、ナス湖のブルースフィアを手に入れるために、情報を集めていた。
サハギンのマントを売る店主から話を聞き、ナス湖の底にはサハギンの都があることを知る。
更に、その都を守るために、竜神がいるとのことだ。
ブルースフィアは、都の社に祀られている。
ブラックは、しめたと思った。
勝手に竜神に挑み、やられてくれれば、後で海の底を探って、キャットの亡骸から宝石を回収してしまえばいい。
店主から譲り受けたサハギンのマントを着れば、水中で呼吸できる上に、竜神の目を欺くことができる。
朝になり、船長一行を尾行していると、ゴブリン荒野でクロードが囮にされるシーンを目の当たりにする。
キャットは周りの男を手なずけ、利用する。
哀れだな、という気持ちもあったが、自分は医者である。
もし命が助かるのなら、そうするべきだと思い、ゴブリンが身ぐるみを剥いで立ち去った後で、地面に伏したクロードの元にやって来た。
「……という経緯だ。 理解出来たか?」
「……ん?」
鼻くそをほじるクロードに、たき火の木を一本取りだし、投げつけた。
「ぶわっ!? おまっ、危ねーだろっ!」
「せっかく分かり易く話してやったのに、聞いてなかったのかっ!」
「ふざけんな、お前の話、面白くねーんだよ!」
お互い立ち上がり、取っ組み合いのケンカとなる。
「うらあっ」
クロードは、ブラックの胸ぐらを掴み、投げつけた。
ぬかるんだ地面に仰向けに倒され、背中が泥まみれになる。
「貴様…… 俺はお前の命を助けたんだぞ! 本来なら、金貨一万枚を請求している所だっ」
「知らねーよ、お前が勝手にやったことだろ」
ブラックは立ち上がり、はあっ、とため息をついた。
もし、自分に泳げない、という欠点がなければ、ここまで食い下がらなかっただろう。
「……何にしても、協力してもらうぞ」




