取調
最近天気が不安定~。
城門に備え付けられた部屋の中。
そこまで広くはないが、息苦しさは特に感じない。家具は生活しないためか特に置かれておらず、あるのはテーブルといくつかの椅子のみ。
そんなテーブルの上に質が良いとはいえない紙を広げ、地球ではもう滅多に見ない羽ペンにインクを付ける守衛。その対面に、俺とサクラは座っていた。と言っても、サクラが座っているのは俺の肩だ。
「じゃあ今からちょっとした質問をしていくから、正直に答えるように」
「分かりました」
「はーい」
羽ペンを持っていないもう一人の守衛の言葉に返事をする。
あの後連れてこられたのは、日本で言えばいわゆる取調室だ。逃げることも一瞬考えたが、仮に逃げ切れたとしてその後どうすれば良いのか分からないため、大人しく従うことにした。
「それじゃあまず名前は?」
「拓哉です」
「私はサクラだよ」
「はい。タクヤとサクラね」
……何語だ?
俺とサクラの名前を聞いて、インクを付け足しながらサラサラと羽ペンを動かす守衛。しかしそれは確かに文字なのだろうが、平仮名でも片仮名でも漢字でもない。今まで一度も見たことがない文字だ。
「この街に来た目的は?」
「取り敢えず外よりは安全だろうと思いまして。これといった目的は特に無いです」
何も知らない場所にいきなり来て、目的など答えようがない。
「まぁ外よりは安全かもしれないが……なら銅貨一枚すら持っていないのは何故だ? お金がなければ食べ物は買えないし、宿にすら泊まれないぞ」
「色々とありまして……。気付いたらこんなことに」
思わず苦笑いで答える。馬鹿正直に答えても、余計に怪しまれるだけだろう。
その様子を見て、守衛の人はお互いにどうするかと顔を合わせると。
「水晶の反応に問題は無かったし、これ以上他人の事情は聞かないが、生憎私たちはお金を貸すことは出来ない。だからと言って、このまま外に追い返すことも心が痛む。そこで、今の時間は人の出入りが少なくて暇だし、困っている人がいれば助ける義務がある。今回だけ特別に、少しの間同行することで街に入れよう。お金を調達出来るかもしれない場所も近いからな」
「本当ですか? ありがとうございます」
「おお! ありがとう小父さん!」
一時はどうなることかと思ったが、ここまで面倒を見てくれるとは。この人達の優しさに感謝するばかりである。
けれど、どうお金を調達させようとしているのだろうか。
サクラの小父さんという言葉に少し眉を動かした守衛の人は。
「そう言えば自己紹介をしてなかったか。俺の名前はガルバ。こっちはニムロだ」
「ニムロです。よろしく」
「よろしくお願いします。ところでどうお金を調達するんですか?」
何気ない俺の疑問に、ガルバはニヤリと不敵な笑みを浮かべると。
「簡単なことさ。最悪衣服を脱ぐだけだからな」