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未知なる世界の歩み方  作者: 月見幻
4/6

知的生命体

 暑い……。

 城壁の役割が何かと問われれば、それは外部からの攻撃を少しでも防ぐため。つまりはこの世界に、これだけの城壁を作らなければならない敵がいるということでもある。そして、交戦するための武器もあるかもしれない。

 だが街道が存在することも考慮すると、一応この街と何処かで交流があり出入りが行われている。ならば友好的に接してくれる可能性もあるだろう。


 次第に近づいてきた七メートルはありそうな城壁を見ながら、様々な考察を立てていく。

 先程までの列はもう無いようで、今は門の前に何人かの人が立っている。人だと分かったのは、ここに来るまでの街道で馬車とすれ違ったからだ。


 ――二十分前。


「ねぇ。何でこんな場所で待機するの?」

「ただ個人的に確認したいことがあるだけだよ。サクラは俺の隣を飛んで付いてくるようにな」


 俺とサクラは、街道から少し離れた茂み裏に隠れていた。街から出てくる、なるべく戦闘力が無さそうな相手を狙って。

 別に襲うわけではない。俺らを見たときの、相手の反応と対応を確認するためだ。


 俺とサクラがどの様な目で見られるかを確認するのに、いきなりあの大きな街に入ろうとするのはリスクが高い。ならば街から出てきた、なるべく逃げやすそうな相手で先に見ておくべきだろう。敵対的ならば襲うか逃げるだろうし、何もなければそのまま通りすぎるはず。あわよくば言語が通じるか分かればいいのだが。

 暫くすると、一台の馬車がこちらへ向かってきた。馬に乗っている御者以外確認できず、最適な判断材料だろう。


「よし、いくぞ。何も気にせずあの馬車とすれ違うようにな」

「よく分かんないけど、分かったわ」


 茂みから街道に入るところを見られないよう、死角になっている場所から向かう。

 次第に先程の馬車が見えてきて、お互いの姿が確認できる距離まで近づく。なるべく顔を向けないよう、チラリと目だけで相手を見る。

 その姿を見て、一先ず安心した。相手の外見は、どこからどう見ても人間だったからだ。これでいきなり襲われる可能性はかなり減っただろう。


 服装に関してはやはり文明が進んでいないのか、日本のそこらで買った安物にも劣っている様に見える。服装の違いに関してはどうしようもできない。いざとなれば、適当にはぐらかすつもりだ。

 後は相手の反応次第だが……。


 すれ違うまで後数メートル。さて、相手はどう出るか。

 再び顔を確認すると、俺ではなく視線はサクラに向いており、驚いた顔をしている。更に小声ではあったが「本物の妖精か?」とも聞こえた。

 だがそれだけで、特に何か行動を起こしそうにはない。ならばこちらからいくべきか。聞き間違いでなければ、言語が通じる可能性も十分ある。


「こんにちは」

「え、あ……こんにちは」


 すれ違いざま挨拶をしてみると、少し戸惑ったようだがしっかりと返事がきた。そしてそのまま、何事もなく馬車は街道を進んでいく。

 それを確認し、街道を外れてもう一度別の茂みに隠れる。


「ふむ……」

「突然挨拶したときは驚いたけど、ちゃんと通じたみたいね」

「そうだな。街から出てきたのが人間だというのも分かった。けどサクラが目立つかもしれないな」

「私が?」


 あの御者は俺よりも、明らかにサクラを見て驚いていた。本物の妖精か? と言っていたし、一応サクラの様な存在は他にもいるのだろう。だが妖精はもしかしたら珍しいのかもしれない。

 本物かどうか驚くということは、偽物もいるという事か。それとも滅多に目にしないから、思わずその様な言葉が出たのか……。

 どちらにせよ、周りの目を集めることになりそうだ。


「なら、私は隠れていた方がいいかな?」


 俺の説明を聞いたサクラが心配そうに訪ねてくる。


「いや、外を拠点にするならそれもいいだろうが、今後も街や何処か人目につく生活になるはずだ。地球に帰る方法も探さないといけないしな。それなら寧ろ、初めからいるとアピールしておく方がいいかもしれない。その方がサクラも動きやすいだろ」

「じゃあ私はこのまま?」

「一先ずそうしよう。俺からは絶対離れるなよ」

「言われなくても、私とタクヤは一心同体だから!」


 大体の動き方が決まったので、バッグの中身を確認する事にした。

 といっても、記憶していた通り大したものは入っていない。地元に帰るとはいえ特に荷物は持たず、あるのは財布や筆記用具・メモ帳、自宅の鍵など。

 小銭やお札を取り出してみるが、スマートフォンの様に文字化けは起こっていない。メモ帳や筆記用具に書かれた文字も大丈夫そうだ。機械か機械じゃないかの違いだろうか。


 それらの事を確認し終え、俺とサクラは門へと向かった。


 何かあればお気軽に。

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