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生活レベルって言葉があるのか無いのかは分からないけど、生きていく上では大事なことだと思う。
ずっと家に篭る生活だと、運動不足になる可能性があるし、栄養のある物を食べないと病気になるかもしれない。
それで病院に行くことになってしまったら、引き篭る意味が無くなってしまうわけではないが、なるべく避けるべきだろう。
ある程度の運動と規則正しい生活と食事は家に篭っていてもいなくても人間にとっては大事なことだと思う。
事実、薄暗い部屋でモニターをずっとにらみ続けて、自殺しようと思ったくらいだ。
生活のレベルは低くしないが、家にはずっと引き篭る。
そういう思い切った生活をしないと、1年間を棒に振ることになるだろう。
中途半端なのが1番良くないはずだ。
そう思っていたが、ずっと家に引き篭ることが出来ない理由が1つあった。
ゴミの問題だった。
普通に生活をしていれば間違い無く出る物だから、ずっとゴミを出さないというわけにはいかない。
異臭がしてきて、近隣の住民から苦情が出て家を追い出されるわけにはいかない。
だから、週に1度はゴミを出しに行く理由で外に出てもいいことにした。
布団の中にずっと入り、こんなことを考えていると、なんだか笑えてくる。
昨日までは仕事をしていた僕が、引き篭るためにはどうしたらいいのかとか考えている自分はついに頭がおかしくなったのかと思う。
でも、それを本気で考えるのには、今はなにもなくても、引き篭っていくうちに少しずつ分かってくるのかもしれない。
この先どうなるのかは分からない。
不安はあるけど、楽しみもある。
ずっと仕事をしていたから、今日から自分のために時間を割けることが一番の理由だとは思う。
とにかく今日はなにもしないでずっとぼーっとしていよう。
1日くらいなにもしていなくても、誰からも怒られるわけではないし、迷惑がかかるわけでもない。
ずーっと布団に入っていたら、気づいた時には夕方になっていた。
なにも食べていなかったから、お湯を沸かしてカップ麺を食べた。
僕はカップ麺が好きだ。
それなりに美味しいし、手間も掛からないし、種類も多いから飽きない。
色々なカップ麺を食べてみたけど、カレーヌードルが1番気に入っている。
カレーが好きなのも大きな理由だけど、カレーヌードルには独特な癖になる味わいがある。
だから、カレーヌードルは多めにいつも買ってあるが、そろそろ無くなりそうだった。
1週間くらいはなにも買わないでも困ることはないだろう。
お米もあるし、玉ねぎも卵もある。
肉も冷凍していたものがあるから、それなりの食事を取ることが出来る。
冷蔵庫に冷やしていた缶ビールを飲む。
お酒を飲むと頭がふわっとして気持ちがいい。
仕事をしていた時は毎日浴びるように飲んでいた。
それくらいストレスの溜まる仕事だったのか、自分の意思の弱さのせいなのかは、辞めた今考えても分からない。
今は明日、明後日、一週間後、一ヶ月後のことを考えるべきだ。
煙草を吸いながらぼーっとして、吸い終わったらすぐに布団に入って寝てしまった。
ぱっと目が覚めると、時計は深夜0時を指していた。
家から出ないルールを作ったのは自分だけど、どうしても外に出たくなり、近くの公園を散歩することにした。
冬と春の間だったから、中途半端に寒くてなにを着ていくか悩んだけど、結局厚着していくことにした。
お酒も飲みたくなるだろうから、鞄に缶チューハイと缶ビールを入れて。
暗いから、懐中電灯も一応持った。
外に出てみると、やっぱり寒かったから厚着をしといて正解だった。
ここから歩いて10分くらいの場所に、大きな公園がある。
近隣の人達が犬の散歩をしていたり、子供連れの家族がサッカーやバドミントンをして遊んでいる。
遊ぶには最適な場所だったけど、ここに住み始めてからほとんど行くことは無く、休みの日に1度行ったくらいだった。
余裕が無かったのは、自分の精神面が大きいだろう。
家に帰っても、お酒を飲んですぐに寝て、休みの日は昼過ぎまで寝ていた。
そういう生活は当たり前だと思っていたし、日本にいる半分以上の人はこういう生活を送っているのだろうって思う。
友達が少ない僕は確かめる方法が思いつかなかった。
ゆっくりと歩いていたから、いつもより10分くらい遅く公園についた。
夜になると電灯が消えるから、懐中電灯をつけないと転びそうになるくらい暗くなる。
雨が降っていたから地面がぬかるんでいた。
足元をライトで照らしてみると、かなりの雨が降っていたことが分かる。
うまく足が汚れないように、ゆっくりと下を確認しながら歩く。
暗闇の中を歩いていると、自分は本当にこの世界で生きているんだと実感出来る。
自分の吐く空気や、歩いて足が重くなっていく感覚が分かる。
ここはどっちかというと公園よりも小さな山と言ったほうがしっくりする。
1番上の方まで行くと、街灯も付いてないから、天気の良い日だと星がよく見えるらしい。
靴に泥がついてくるけど、気にしないで前に進んだ。
もう少しだと思うと、不快な感じも気にならなくなり、夢中で前に向かって歩いている自分がいた。
人はいつだって遠回りをしている。
誰かが言った言葉だったと思うけど、それに反して僕はただ真っ直ぐに、遠回りをせずに今は歩いている。
ちょっと息が苦しくなってきたぐらいで、上まで登りきった。
空を見上げてみると、小さい星が点々と見えた。
すごく見えるとまでは言えないけど、それなりに光って見えて綺麗だと思う。
青森に旅行に行った時に見た星空は本当に凄かった。
空が星で埋めつくされていて、ずっと見ていられた。
すぐ近くにあったベンチに座り、鞄から缶ビールを出して飲む。
冷たいビールがゴボゴボと喉を通り抜ける感じが気持ちいい。
ジョッキで飲むビールと、缶で飲むビールはどっちが美味しいかってよく考える。
よく冷えたジョッキに鮮やかなビールの色に芸術性を感じるし、飲み口が広いから美味しいと思う。
でも、缶で飲むと空気と一緒にビールが入ってくる感覚も良い。
色々なビールを飲んだけど、結局答えは出てこないから、どっちも好きだってことだろう。
ビールを飲み終えて、缶チューハイを開ける。
酔った頭でぼんやりとしていると、時間がゆっくり流れているのがよく分かるような気がする。
特にやることもないから、もう30分くらいたったら家に帰って寝よう。
色々なことが頭の中でぐるぐるとして、気づいた時には目から涙が出ていた。
理由は分からないけど、なんとなくぼんやりしていたら、なんとなく出てきた涙だろう。
少ししたら忘れるだろうと思い、僕はベンチから立った。




