2.精霊達との出会い①
ここから2章です。
主人公がようやく旅に出ました。
「この許可証の影響はすごいなぁ」
ダイがそうつぶやくのも無理はない。
ブリュレ城を出発してから、いくつかの町や村に立ち寄っていた。
どの町でもこの世界で異端のモノであるダイは好奇、
若しくは疑念の目で見られていたが、許可証を見せると歓声に変わっていた。
ブリュレ国とフロウ国との国境付近に或る、
ヴィレットビュレという町にたどり着いた。
ここは他の町とは明らかに雰囲気が違っていた。
町に足を踏み入れた瞬間、火の塊がダイに向かって飛んできた。
「うわっ!」
身を翻して、かろうじてかわしたが、
頭を上げると大勢の町人らしきモノたちに囲まれていた。
「えーっと……。何かご用でしょうか?」
よくわからない状況に、ダイはとんちんかんな問いかけをしてしまった。
すると、周りを取り囲んでいる中の一人が、
「お前はフロウ国の手のモノではないのか?
見たところこの国のモノではないようだが……。」
「フロウ国?」
ダイが、答えに詰まっていると別の一人が、
「いや、背格好があの女剣士とよく似ている。仲間に違いない!」
そう言ったかと思うと、ダイに掴みかかってきた。
「ちょっ、ちょっと待ってください。
私は怪しいものではありません。
これを見て下さい」
ダイは掴みかかった腕を振り払いながら、慌ててそう言った。
そして、懐からブローウ王の許可証を取り出して、周りのモノたちに見せた。
「おぉ、これはまさしくブリュレ国王の許可証!
失礼しました。てっきり、あの女剣士の仲間かと……」
「わかって頂ければ、結構です。
先ほどから何度か女剣士がどうとか言っていますが、
詳しいことを教えて頂けないでしょうか?
力になれることがあるかもしれません」
「わかりました。ここではなんですから私の家に来てください」
リーダー格の男が言うと、周りのモノたちは各々家へと戻って行った。
そして、ダイは男の家へと案内された。
「この町は国境付近にあることから、
これまで何回もフロウ国からの侵略を受けてきましたが、
その度に魔法の力で守ってきました。
しかし、一人の女剣士が現れてからは一方的に押されっぱなしで、
町のモノは疲弊しています。
その女剣士というのは貴方と同じように異端のモノでして、
魔法がほとんど効かないのです。
この国は魔法の力は強いのですが、
剣などの肉弾戦になると全くダメでして……。
逆に、フロウ国はケンタウロスが支配する国で、
肉弾戦は強いのですが魔法には弱く、
これまでは侵略されませんでした。
今は奇襲をかけることで何とか凌いでいます」
そこまで聞いたダイは落ち着いた口調で、リーダー格の男に尋ねた。
「簡単に考えると、その女剣士を抑えれば
この町を守ることができるということでしょうか?」
「その通りです。
しかし、この町にはそんな腕のたつものはいません……。
それに、あの女剣士の実力は我が国で最も剣技に優れているという
ブルーノ隊長とほぼ互角という噂です。
本当に困りました……」
リーダー格の男は無念の表情を浮かべて言った。
それを見たダイはたまらずに、
「どこまでできるかわかりませんが、
私ができる限りその女剣士を足止めしましょうか?
一応、ブルーノ殿に剣を習いましたし……」
と、言ってしまった。
それを聞いた男は飛び上がってダイの手をとり、
「本当ですか?
ぜひお願いします。
あの女剣士さえ押さえて頂ければ、
その他の兵士は我々の魔法で何とかなります。
近いうちに必ず攻め込んで来るはずなので、
それまでこの町でゆっくりとして言って下さい。
今晩、宿屋でレジスタンスの会合がありますのでぜひ参加して下さい。
そこで、計画を立てましょう」
次からは一日、一回更新を目指します。
ご意見、ご感想あればよろしくお願いします。