1.水の精霊の導き④
部屋から出た瞬間、数人の侍女らしき女性が
一斉に、頭を下げて朝の挨拶で迎えられた。
「おはようございます。よく休めましたか?
ブーロウ王がお待ちでございます」
そう言うと、ダイは大広間へと案内された。
そこには、ブローウ、ブルーノともう一人、
ブロンドの長く美しい髪がとても魅力的な女性が隣に座っていた。
ダイの顔を見るや否や、ブローウが口を開いた。
「昨日は良く休めたか?
早速だが食事にしようか?」
「はい、ありがとうございます。
遅くなって申し訳ありません」
ダイは謝りながら、空いている椅子へと腰掛けた。
それを確認したブーロウ王は手を合わせて、残りの2人の顔を見て言った。
「これで全員揃ったな。
では、食事にするとしよう。
精霊とあらゆるモノに感謝して、頂きます」
「頂きます」
3人はそう言うと、目の前に並べられた、
様々な料理に各々が手を伸ばし食べ始めた。
その様子を見てダイはサラダのようなものと
パンのようなものを手にとり、食べ始めた。
正直、ダイは異世界の食事に対して、若干の不安があったが、
意外と味は元の世界のものと同じだと感じていた。
食事もある程度、落ち着いたところで、
ダイはブーロウに尋ねた。
「先ほどから気になっていたのですが、そちらの女性は?」
「おぉ、紹介するのをすっかり忘れていた。
この子はワシの娘でウンディアーナと申す。
なかなかのじゃじゃ馬で、嫁の貰い手がなくて困っておるのだ。
どうだ、ダイ殿!こんな娘でよければ貰って頂けないだろうか?」
ブローウがそう言った瞬間、
ブルーノの顔が引きつっているのを横目に、
「はぁ……。たちの悪い御冗談を!
私はこの世界のものではないですし……、
皆さんとは初対面ですよ!
しかも、姫の気持ちもありますし、何より結婚するという事は、
将来この国の王になるかもしれないという事ですよね?
それはさすがに不味いでしょう」
真面目な表情をして、怒りを露わにして言った。
「ははっ! ダイ殿、申し訳ない。
やはりそなたは良い男だ。
下心等がない事がよくわかった。
そなたみたいな男がワシの跡を継いでくれれば、
我が国は安泰なのだが……」
ブーロウはにっこりと笑ってそう言った。
それを聞いてダイは自分の思った事を素直にブーロウにぶつけてみた。
「私なんかよりブルーノ殿はいかがでしょう?
私から見てもきちんとして立派な方ですし、
ウンディアーナ姫とはお似合いかと思いますが……」
それを聞いたブルーノが慌てて、
「私なんぞ滅相もございません。
ダイ殿もこのような冗談を言うなんて……。
そんな事よりも、ダイ殿はこれからどうするつもりでしょうか?」
何とか話を逸らそうと、ダイに質問をぶつけてきた。
それを聞いたブーロウが、
「ワシもそれを聞きたくてウズウズしていたのだ。
もしよかったら、しばらくこの国にいてはくれまいか?」
と、ブルーノの質問に乗っかってきた。
ダイは二人の質問に対して、少し困った表情を浮かべ、
頭をポリポリと掻きながら答えた。
「そうですね……。
まだ、少し調べたいことなどがありますので、
しばらくはお世話になると思います。
ところで、この世界やこの国のことなどについて知りたいのですが、
書物等はあるのでしょうか?
あれば拝見したいのですが……」
「そうか…。では、ゆっくりしてくだされ。
調べたいことについては、ブルーノに尋ねてくだされ。
ブルーノ、ダイ殿に可能な限り協力するように」
「はっ!かしこまりました。
ダイ殿、何なりとお申し付けください」
「ありがとうございます。
こちらこそ無理を言ってすみません……」
ダイは深々と頭を下げた。
すると、胸元から精霊の証が零れ落ちた。
それを見た、三人の視線が一点に集中し、
「それは……。もしや、精霊の証……、では?」
と、ブルーノが尋ねると、ダイは精霊の証を手にとり、
「これですか・・・・・・」
昨晩、起こったことを簡単に説明した。
「……と言うことでこの証を手に入れました」
「やはり、ダイ殿は精霊様の導きによりこの世界に……。
そうとわかれば、尚のことこの国に居てはくださらぬか?
よろしく御願い致す」
「お気持ちはありがたいのですが
私にはやらなければならないことがありますので……。
申し訳ありません」
ダイは目線を逸らして、申し訳なさそうな口調で謝った。
すると、今まで黙ってやり取りを見ているだけだったウンディアーナが、
「お父様! 我侭を言ってはいけませんよ!
ダイ様の気持ちも考えずに……。
ダイ様、父が我侭を言いまして申し訳ありません」
「いいですよ。そこまで私を必要としていただけて、
私としても光栄です。ただ……」
「みなまでおっしゃられなくとも結構です。
私共としても可能な限り協力させて頂きます。
お父様、そろそろ王としてのお仕事の時間ではございませんか?
ブルーノ、ダイ殿を御願いしますね」
「全く、口うるさい……。誰に似たのか……。
では、そろそろ失礼する。後のことはよろしく頼んだぞ」
「はっ!お任せください。では、ダイ殿書庫の方に案内いたします」
そう言うと、ブルーノは席を立ち、ダイをある一室へと案内した。
「ここは、我が国の知識と歴史がすべて記録してある書庫です。
おそらくここならばダイ殿の知りたいことがわかると思います。
まだ、何かありましたら何なりと仰って下さい。」
ブルーノがそう言って、部屋を出て行こうとした時、
一人の兵隊が飛び込んできた。
そして、ブルーノに耳打ちをすると、
一瞬驚いたような表情を浮かべたが、すぐに落ち着いて、
「わかった。すぐに行く。
ダイ殿、急用ができましたので何かありましたら
そこのものにお申し付けください。では!」
そう言うと、ブルーノは颯爽と部屋を出て行った。
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続きは夜に更新します。