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1.水の精霊の導き③

ダイは部屋に入り、これまで起こった事について整理するため、

ベッドに横になった。

「こんないい部屋いいのかな? 何か気が引けるなぁ。

 まぁ、ジタバタしても仕方がないから、とりあえず今の状況を整理しよう。

 確実に言えることは、現在起こっている事は現実であって、

 俺はおそらく別世界に来てしまった。

 その理由、原因は正直、よくわからない……。

 それから、この世界にはおそらく人間は存在していない。

 取りあえず、この国の王は俺に悪い印象は持ってはいないだろう。

 多分、あの予言書が俺の事を指しているからだろうな。

 予言書の内容から考えると、

 この世界に迷い込んだ人間はおそらく何人かいる。

 この世界の精霊の数だけ呼ばれている可能性があるな……。

 そして、間違いなくこの世界で何かしらの異変が起ころうとしている。

 それを追っていけば何かしらの答えが見つかるかもしれないな。

 そして、人間の世界から呼ばれたということは、

 この世界での異変が向こうの世界へ影響を与える可能性がある

 ということか……。

 取りあえず、今の段階で考えられる事はそんな所か、

 明日からはもっと情報収集をして、これからの動きを考えようか……。

 はぁ、今日は色々あって疲れた……。

 取りあえず休もう」

と呟き、目を閉じて全身の力を抜いた。


――しばらくして城全体が深い眠りについた頃、一筋の光が城へと侵入してきた。

その光は真っ青に輝きながらなんの迷いも見せずに、一つの部屋に入る。

そして、青い光はダイにまとわりつくように周りを飛び回り、

ダイはその気配を感じて目を覚ました。

「一体、何だ?」

ダイは落ち着いた口調でそう言うと、

まだ周囲で弧を描くように瞬いている光を見据えた。

その瞬間、一気に閃光が走り、目の前が真っ白になった。

遠く深い意識のどこかで呼びかける声が響く。

ダイは頭に響くようなその音で覚醒した。

目を開けるとそこには、白一色で覆われた空間が広がっていた。

「気がついたか?」

という声が頭に響いてきた。

まだ、状況を把握できていないダイは、

「誰だ?」

そう訊ねるのが精一杯だった。

「私の名はウンディー。この世界では水の精霊と呼ばれている」

少しずつ冷静に判断できるようになってきたダイは心の中で、

――精霊? あぁ、俺をここに呼んだ奴か……。

などと考えていた。

「そうだ、私が貴方を呼び寄せた。すまない……」

「いえ、そう言うつもりでは……。

 あれ? 声に出したつもりはなかったのに、どうして分かった?

 それに別世界なのに言葉が通じているし……。

 まぁ、それ以外にも聞きたいことは山ほどあるのだが……」

「ダイ、貴方の言いたい事は嫌と言うほどわかっている。

 取りあえず、貴方の疑問に答えないと話が始まらない。

 まずは言葉の件だが、この世界の中では私が貴方に宿っているから、

 言葉に関しては心配することはない。

 そして、私と貴方の意識はシンクロしているから

 考えていることも分かるのだ」

「そうか、何となくわかった。

 それで、どうして俺なのだ?

 貴女はこの世界で俺になにをさせるつもりだ?」

ダイはウンディーに矢継ぎ早に疑問を投げかけた。

それに対して、ウンディーも聞かれる事がある程度分かっていたのであろう、

事のあらましを説明し始めた。

「この世界は私を含め光、闇、火、水、風、地の6精霊が存在する。

 数百年の間、互いに気が合わないなどの理由から、

 小さないざこざはあったが、

 それぞれが牽制し合いながらこの世界は均衡を保ってきた。

 しかし、最近になって光の精霊がこの世界に新たな王を迎えるために

 一人の人間を導いた。

 それに気付いた他の精霊達も競うように自らが選んだ人間を

 この世界へと一人また一人と呼び寄せた。」

そこまで話を聞いた所で、ダイは声を荒げた。

「ちょっと待て!

 貴女が俺を呼び寄せたのは俺をこの世界の王にするためなのか?

 それだったら俺は下りる」

「話は最後まで聞け!

 私がそのつもりなら貴方は呼ばない。

 私は一人の王が支配する世界が良いとは思っていない。

 これまでは、均衡を保つことでこの世界は何とかうまくいっていたのだ」

 ウンディーは冷静な口調で、ダイを宥めるように言った。

ダイにもウンディーの真意が少しは伝わったのか、

申し訳なさそうな表情を浮かべて、

「話の腰を折ってしまってすまなかった……。

 まだ、納得はしていないが、

 簡単に元の世界に帰して貰えそうな雰囲気ではないのはよく分かった。

 それで俺はこれからどうしたらいい?」

「貴方にはこのくだらない争いを収めて貰いたい。

 貴方の冷静沈着な判断力、和を持って人と接する気持ち、

 そこに私は希望を持ったのだ。

 私はこの世界とここに住む生物のことを守るために貴方を呼び寄せた」

「ウンディーの考えは何となく分かった。

 俺の出来る限りのことはやってみよう。

 ただ、俺にはそんな力があるとは思えない……。

 武術をやっているわけでも、

 特に身体能力が優れているわけでもないから……」

ダイはウンディーの話に納得したものの、

ウンディーの自分に対する期待に対しては自信がない事を伝えた。

それを聞いたウンディーは優しい表情でダイの方を見て、話を続けた。

「貴方にそのような腕力を期待しているわけではない。

 そなたは現状を冷静に分析して次の一手を考え、

 周りの者を使えばよい。

 それから、貴方には水の力が宿っておる、

 それも上手く使ってやってくれ」

「まぁ、出来る限りやってみるよ。

 まずはどうしたらいい?

 正直、皆目見当もつかないが……」

「まずは、風の精霊シルフィーとその導かれし人間を探し出せ。

 おそらく奴は私と同様にこの世界を変えようとは考えてはおらぬし、

 貴方と争うつもりもないだろう。

 それから、他の精霊が攻撃を仕掛けてくるかも知れぬから気をつけろ。

 特に火の精霊が私を敵視している……。

 ん?そろそろ、陽も昇る頃だ、話を終わりにしようか?

 それから、これは精霊の証だ。

 何かの役に立つかもしれない」

そういうと、簡単な装飾の施されたペンダントがダイの胸元に現れた。

そのペンダントを手に取った瞬間、目の前にカラフルな天井が広がった。

「夢か……、やけにリアルな……、えっ!」

ダイの胸には夢で見たそのままのペンダントがあった。

「夢じゃなかったのか……。

 仕方がない、まずは情報収集だな。

 後は、腹ごしらえをしないと……」

そう呟くと、身体を起こし、そのままの格好で部屋を出た。

取りあえず、説明回終了です。

感想等貰えると嬉しいです。

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