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8.移動 GO イオン

ゴクゴク、ぷはぁと飲み干す恵。


「ジュース、ありがとうございます」


 お礼を言う。その顔は満面の笑みで、果汁百%のオレンジジュースがお気に召したと推定される。飲み干されたコップにもう一杯いれてやる。


「あ、すいません。ありがとです」


 何度も御礼をされるが、悪い気はしない。恵はお礼をするとき座った状態でも少し頭を下げるため、胸元がチラリと見える。そのためにジュースを何杯も入れてあげてるといっても過言ではない。

 俺の目線に気付いたのかはわからないが、鋭い目つきをして言う。


「・・・・・・これ、勝手に冷蔵庫開けたんですか・・・・・・」


「え、いや、あの。あっ!ゴキブリ!!!」


「ひぇっ!?」


 咄嗟に思いついたことを口走る。それにビックリした恵はこちらへと飛び跳ねる。そして俺に抱き付くようにして、「退治してください・・・・・・」と懇願してくる。面白いなぁ。


「はは、嘘だよ」


 ジョークジョークと笑いながら連呼する。恵は嘘だとわかりホッとするが、こちらを睨みつける。その目には涙が浮かんでいた。


「・・・・・・ごめん」


「・・・・・・うん」


 謝ると恵は俯いてしまう。悪いことをしたなと思いながらも、恵の胸元へと視線が吸い寄せられてしまう。これは一種のブラックホールか何かだろうか・・・・・・。俯いて肩をガクリと下ろしている恵の胸元は寄せられるため、胸の谷間がすごい。もう一人の俺が疼き始めそうなので目を反らそうとするも、ブラックホールには敵わず凝視していた。

 ・・・・・・綺麗だ。




×××


「そろそろ、移動するか」


 俺の突然の提案。恵はなぜ、という顔をしていた。


「いや、生存者とか助けたり・・・・・・。食料の調達とか安全な場所の確保とか。まぁいろいろだよ」


「ゆうとさんって結構いろいろ考えてるんですね。変態なのに」


「まぁね。って、変態って関係ある!?」


 ありますよと返され口ごもるしかなかったが、出かける準備をし始めると、恵もそれに続くように準備し始めたためこれ以上の追及はなかった。

 俺は思った。

 ・・・・・・俺は普通だ。お前の魅力的な容姿とか胸が全部わりーんだよ。


 準備を終え、いよいよ出発である。


「んじゃまずはどこにしようかなー」


「あ、ショッピングモールとかどうでしょうか?」


「あー、まだ行ってないところとかあるしなー。とりあえず適当にぶらついてみるか」


 ということで適当に街中をぶらつき始める。


「ゾ、ゾンビの大群が・・・・・・」


 前を見るとゾンビが何十体もいた。おろおろとしている恵を見て微笑む。


「はは、怖がりだな」


 馬鹿にするように言う。それが気に入らなかったのか恵は堂々と歩き始める。


「怖くなんかありません。余裕です」


 そうは言うがゾンビとの距離が近づくにつれ次第に弱々しくなっていく。

 ゾンビもこちらに気付き近づいてくる。


「ゆ、ゆうとさん・・・・・・」


 もはや涙目の上目づかいで懇願してくる。やばい、治まれ、下の俺っ!!

 

「はは、ちょっと試したいことがあったから丁度いい」


 余裕綽々の笑みで俺は石を拾う。恵は何をしようとしているのか分らないらしく、引きつった笑みで首を傾げる。


「まぁ見てろ」


 言って、拾った石を遠くのマンションへ思いっきり投げる。


 カツーン、音が鳴り、ゾンビ達はそのマンションへと歩き始めていった。ノロノロと遅いスピードではあるが俺の実験は成功だ。


「え・・・・・・?」


 恵は何が起こったのという顔だ。説明してやるか。


「ゾンビは音のする方へと歩くんだよ」


 簡単な説明をする。

 


「・・・・・・ゆうとさん」


 何かを言いたげだが、声のトーンが低い。怖い。


「ん・・・・・・?」


 少し身構えるかのように低い姿勢になり罵声を浴びる用意をする。

 だが、恵はこちらへと走り、


「すごいですゆうとさん!あなたは天才ですか!?」


 笑顔でこちらに抱き付く。俺の胸には恵の胸が押し付けられており、・・・・・・柔らかい。

 俺の顔が赤くなっていくのに気付いたのか、恵はハッとする。そして俺から離れていき、


「・・・・・・すいません。ちょっと気が動転していました、すごい発見だったので」


 ・・・・・・残念。俺の発見に素晴らしいと感じたのならもっと抱き付け。


「え、あの、えっと・・・・・・。すいません!まだそういうのは早いです・・・・・・」


 そう言って俯き始める。

 ・・・・・・心の声が洩れていたみたいだ。若干引いておられる。さっきより二歩ほど離れている気がするが気のせいだろう。そう思いたい。

 俺はこのことを無くすかのように指を指し、大声で言った。



「あれはイオンだ!!!!あそこに行けばきっと!!!」


 声を張り上げ言う。喉が痛い。

 恵は若干渋い顔をしていたが、すぐに表情を変える。



「イオン、いいですね!あそこなら食べ物や洋服に困りませんね」


 顔をぱあっと明るくさせる恵に俺はドキリとした。 

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