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16.大切なこと

とりあえず、撃ちたいとのことでゾンビを探しています。いざ探すってなるとなかなか見つからないものだ。俺と恵はハンドガン一丁を手にし、もう一つをポケットへ入れて構えながら歩いている。テレビでよく見るような感じでやっているのだが、結構さまになってね?


「ゾンビいないですねぇ」


 恵が確認するように言うので頷く。


「そうだな。別に試し撃ちとかしなくていいだろ?」


「いやです。撃ってみたいのです」


「そか」


 恵が勇敢というか好奇心旺盛というか、怖くなってきている気がする。と思いつつも自分自身も撃ってみたいため拒否できないでいる。


「あっ!」


「ん?」


「あそこに!」


 無邪気な子供のような目で訴えかけるのでそちらへ向く。


「・・・・・・ゾンビ、か?」

 

 確認するように呟くが、確信は持てなかった。距離にして七メートルってところか?もう少し近づかねばわからない。


「「・・・・・・」」


 一歩また一歩と確実に近づき、銃を向け、テレビなどで警察がよくやることを真似してみる。


「動くな!!!手をあげろ!」

 

 恵は私もやりたかった、みたいな顔をしてこちらを睨むが、すぐに視線を戻す。その人はこちらを見るでもなく、動く気配もなく、息をしていないんじゃないかと感じてしまうほどの異様な空気を感じた。いや、ゾンビだとしたら息しないよな。


「おい!」


 声を張り上げるも返事がないのでゾンビだと確信する。しかし、もしもの可能性がある。ゾンビにしてもこちらの音に反応して動いてくるはずだ。いや、まだ可能性があるではないか、ただの死体という可能性が。

 ゴクリと喉を唸らせ額に汗を流しながら近づく。その間恵はと言うと俺の後ろで待機していた。くっそぉ。


「おっらああああ」


 それの肩を掴み投げ飛ばすようにして飛ばす。その物体は狙った通りに飛び、壁にぶつかる。しかし、反応はない。


「・・・・・・死んでいるのか」


「そうですね・・・・・・」


「いや、お前、自分だけ安全だっただろ!どれだけ怖かったことか!なにがそうですねだよ!」


「私女じゃないですか・・・・・・?しょうがないですよ。ゆうとさん、怒らないでください」


「あ、うんなんかすまん」


 俺が悪いのか?あれー、恵さんなんかあざとくなってきてませんかね?これはあれだ。捻デレだ!ゆうとてきにポイント高いっ!


「とりあえずどうします?」


「そうだな、まぁ、もう試し撃ちとかいいだろ?」


「そうですね」


 お互い顔を見合わせ、何とも言えぬ雰囲気になる。


「「・・・・・・」」


 何か言ってくれよ、恥ずかしいじゃないか!なに頬染めてんだよ・・・・・・!やばい変な気分になってきた。


「あの・・・・・・」


 恵が口を開く。


「な、なんだ・・・・・・?」


「その、前から言いたいことがありました。あの、」


 言いかけたところで俺が遮る。恵の肩を掴み、俺の方へと抱き寄せる。恵は「ふぇっ!?」と声を上げ俯きながら俺の胸元で顔をうずめる。


「その、ゆうとさん・・・・・・」


 (心臓の音、ゆうとさんに・・・・・・聞こえそう・・・・・・)


 俺は拳銃を構えぶっ放す。

 ドン、と銃声がなり、恵の後方のゾンビ(・・・)めがけて突き進む。鉛玉はゾンビの脳を通り抜け、ゾンビは行動不能になり倒れこむ。


「え!?」


 素っ頓狂な声を上げ俺を見る。


「ゾンビだよ・・・・・・」


 言い、恵の肩をはなす。


「そう・・・・・・ですか・・・・・・」


 なぜか残念そうだ。ゾンビ・・・・・・か。脳を撃ちぬけばゾンビでも行動不能になるみたいだな。というと、やはり脳が命令をして体を動かしているみたいだな、人間と同じだ。 


「きゃっ!!」


「どうした!?」


 振り向くと恵の足がゾンビに掴まれていた。


「おい!」


 叫ぶもゾンビは俺が銃を撃つより早く恵の足に噛みついた。だが俺は焦らない。


「きゃあ!!」


 一拍おいてから銃でゾンビを撃ちぬいた。脳天めがけて撃つと綺麗にまっすぐに飛んでいった。脳を撃たれたゾンビはその場で項垂れる。


「はぁはぁ・・・・・・。もっと早く助けてくださいよ・・・・・・」


 ゾンビに噛まれた恵の顔は青いが、焦る必要はない。ゾンビの毒が体内に充満してゾンビになるのだろうが、俺には秘密の道具がある。たかが五万で人間を生き返らせることができるのだから、焦ることはない。


「すまんすまん、まぁ、大丈夫だろう」


「あは、まぁそうですね・・・・・・。でも・・・・・・」


「なんだ?」


「また・・・・・・死ぬのは怖いです・・・・・・」


 涙を浮かべ俺の方をまっすぐ見ているが、どうすることもできない。俺ができるのはせいぜい死人を生き返らせることだけだ。毒を直すなんてことは解毒薬かそんな感じのものがないと無理だ。


「・・・・・・すまん」


 俺はそれ以外にかける言葉は見つからなかった。


「もう、だめです・・・・・・」


 恵はそう言い残し、項垂れた。動く気配はなく、まさかもう死んだのだろうか。まだ十分ほどしか経っていない、ありえない。

 

「めぐみ・・・・・・」


 近づき、脈を確認する。


「・・・・・・ない」


 続いて心臓を確認する。


「ない」


 まったく機能しておらず、死んでいるようだ。


「うそ・・・・・・だろ・・・・・・」


 早い、早すぎる。二回目だと毒が早くまわるのか?

 おもむろに携帯を取り出し、生き返らせる準備をする。生き返らせますか、の選択にYESを押し、誰を生き返らせるか思い浮かべながら名前を記入する。


「加賀恵、と。これであとは想像するだけだ」


 想像し、しばし待つ。しかし、何の反応も起こらない。失敗したのかと思い、同じように繰り返し二度目を行う。


「・・・・・・なんでだっ!!!」


 二回目もできなかった。携帯が鳴り、画面に警告画面が出る。


「なんだよ!?」


 携帯の方へ顔を近づけ読み上げる。


『※警告


 同じ人間を二回生き返らせることは出来ない。次同じようなことが続けば、携帯は機能しなくなる』


「は!?まてよ!」


 どういうことだ?同じ人間は無理?じゃぁ恵は生き返らないのか!?そんなわけがないだろう、五万だって入れたぞ!?なんでだよ・・・・・・。


「なんで・・・・・・なんでだよ・・・・・・」


 声が震え始め、拳を強く握りしめていたことに気付く。今やっと気づいたことだが、右手は骨が折れて動かなくなっていたはずなのに、治っている。驚くべき治癒力ではあるが、そんなことどうでもいい。恵・・・・・・。

 今もなお俺の腕の中で安らかに眠る恵に一筋の滴が落ちた。


「なに、俺泣いてんだよ・・・・・・」


 自分が泣いていることに気付き、どれだけ恵が大事な人だったかを気づかされた。失ってから気づくものは多いのだ、分かっていたはずなのに、分かっていたはずだったのに・・・・・・。


 


 恵は死んだ。

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