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14.金庫はやーめた

金庫前へたどり着いた俺たちはどうしようか悩んでいる。だってさ、金庫開けられないじゃん。なに?鍵とパスワードみたいなやつ打たないとダメなんだけど、無理じゃん。困るわー。

 

「開けられませんね・・・・・・」

 

 金庫へ向かっている最中に会話をするようになったのだ。あの時の俺はどうかしていた。もちろん、間違ったことは言っていないと思うが。それでも、手を出したことに対しては反省しなければならない。


「そうだな、開けられねえな」


「どうしますか?」


 聞かれたが、どうしようかなんて考えてない。いや、一つ方法があった。


「・・・・・・壊す」


「へ?」


「壊すのさ。この金庫を」


 俺が言いきると、恵は何言ってるのこいつみたいな顔をしていた。誰もがそんな顔をするだろう。でもな、俺にはゾンビの力がある。本来人間の出せる力の限界まで引き出すことができるのだから、金庫ごとき楽勝。


「いくぞっ!」


 助走を付けて右拳で金庫を殴る。砕け散ったと感じたが、キーンという嫌な音をたてただけだった。そのお礼にと言われんばかりの痛みを俺にくれた。


「いってえええええええええ」


「だ、大丈夫ですか!?」


 心配そうに駆け寄る恵。あぁ、優しいな。てかいてえ。


「あ、あぁ。だ、大丈夫・・・・・・」


「右手・・・・・・」


 俺の右手を見た恵は驚愕していた。そんなにか、と思った俺は自分の右手を見る。


「・・・・・・なんじゃこりゃあ!!!」


 え、嘘だろ?すごく痛いとは思ったけどさ、右手が潰れてる。なんていうかな、グシャグシャで黒い血がドバドバ出てるし、もう病院行っても手遅れレベル。病院なんてもう再起不能だが。


「ゆ、ゆうとさん!と、とりあえず・・・・・・」


 言いかけたところで恵はスカートの一部を破り、包帯代わりに俺の右手を優しく包み込んでくれた。よく破れたな、はさみもなしに。

 その包帯代わりの物はなかなかな大きさ長さであり、恵のスカートはだいぶ短くなっている。もう少しで見えそうと思い、スカートの中を覗く動作をする。そうだなぁ、あっ!腕立てでもするか!それで、上を見る。完璧。思い立ち、実行する。


「いってええええええええ」


 腕立てをするために、手を地面につけた瞬間、ものすごい痛みが俺を襲った。そうだった・・・・・・俺の右手はもう再起不能なのだ。


「くっ」


「だ、大丈夫ですか?」


 恵の言葉を無視し、何をしようか考える。

 そうだ!腹筋をしよう!

 先ほどと同じように思い立ったらすぐ行動。腹筋をするために寝転ぶ。寝転んだら気づかれないようにスカートの中を覗く。もう少し・・・・・・もう少しなんだ・・・・・・。

 俺の頑張り(視線)に気付いたのか、恵はニッコリとほほ笑む。そして、おもむろにスカートをまくりあげる。


「おぉ!」


 期待を胸に。だが、その期待は砕かれた。その願望をぶち壊す!

 なんと、スカートの中に短パンを履いていたではありませんか!


「ゆうとさん変態ですね!わかってましたけど。ざんねんでしたぁ!」


 ふふんと勝ち誇ったように笑う恵。くっそう、短パン忌まわしい。

 そんな楽しい時間はすぐに消え去った。


 笑いあっていた俺たちの後ろで急に金庫が開く。

 

「なに!?」


「え!?」


 ギイと重いドアが少しずつ開いていく。中からは人の声はしない。風か?いや、地下だし。まてよ、鍵は元々開いていたのかもしれない。俺たちがそれに気づかなかったんだ。あー、なら中は空っぽかぁ。

 誰もいないと頭の中で思いながらも半信半疑でいた。だから、開いていくドアをずっと見ていた。

 ドアが完全に開く。中は真っ暗で見えない。


「行くか」


「・・・・・・はい」


 慎重に金庫へと近づいて行く。三メートルを切ったところで構える。何かが出てきたら怖いからな。


「血・・・・・・?」


 恵が呟いた。恵が下を見ていたので俺も下を見る。

 ドロドロと黒い血が流れていた。その量は、一人分ではないだろう。何十人というほどの量だ。そりゃぁ、憶測だから間違っているかもだが。


「気を付けろよ」


 注意を呼びかけ、金庫の中を見る。


「・・・・・・暗くて見えませんね・・・・・・」


 恵が言う。確かに暗い。でもな、俺は暗くても見える力がある。ゾンビの力だとは思うけど、便利だ。


「入りましょうか・・・・・・」


「待てっ!!!」


 俺が大声で止めると恵はビクッとする。そして、踏み出した一歩をもとに戻す。


「どうしました?」


「ちょっとこっち来い・・・・・・」


 怒られる!?といった顔だ。恵の顔は俺に恐怖している顔だ。俺嫌われたもんだなぁ・・・・・・。

 恵が恐る恐るこちらへ近づき、俺の目の前に来る。

 俺は、近くに来たのを確認して、恵に抱き付いた。強く、強く。


「へ!?えっと、え!?」


 恵はこの状況を理解できていないらしく、「え!?」と何度も連呼していた。何十秒か経ったところで、落ち着きを取り戻した恵は俺の胸に顔をうずくませていた。若干、顔が赤い。俺もだが。


「ちょっと息苦しいです・・・・・・」


 咄嗟に離した。解放された恵はケホケホと咳こんだ。そして、深呼吸を済ませ、こちらへと向き、尋ねる。


「どうしちゃったんですか・・・・・・?」


 急になぜ、といった顔で聞いてくる。


「いや、ごめん。嫌だったか?ちょっと汗臭かったよな」


「いえ、嫌じゃありません!むしろ・・・・・・」


 言いかけたところで止める。むしろってなんだよ?それ、あれじゃん、なんか俺、変な勘違いしちゃうよ?まるで俺に好意ありますみたいな感じ醸し出してるけど、俺にはわかるぞ。そうやって俺の好感度上げておいてこれからも助けてもらおうみたいなあざといあれだろ。


「そういえば、なんで金庫入らないんですか?」


 そう、今俺は恵の手を握って銀行を出ようとしている。なぜって聞かれても困るなぁ。言えるようなものでもないし。


「いや、お金なかっただろうし、危険だし」


「そうですかぁ・・・・・・。なんかもったいない気がしますね・・・・・・」


 俺は見た。金庫には、お金はあった。でもな、あの中に何十という死体が転がっていたし、恵の両親もその死体となって転がっていた。

 なぜ恵の親だってわかるかって?生徒手帳だよ。後ろの方に顔写真が貼ってあったよ。なんで貼ってたのかは俺には分からないけれど、何か理由があるのだろう。

 

 だから、金庫は諦めたんだ。生き返らせるっていう選択肢もあったのだが、焦っていた俺にその案は浮かばなかった。


「もったいないーーーーーー」


 恵はもったいないもったいないと何度も何度も言う。お前はもったいないばあさんか。


 

「じゃ、次は警察署にでも行きますか」


「へ?」


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