13.金集め!!
日差しが熱い。いつのまにか昼になっていたようだ。今は六月に入るころだということで、これからもっと暑くなっていくのだろう。夏の日差しでゾンビどもはやられないのだろうか?皮膚が溶けていくとかそんな感じのこと。
俺もゾンビだからそうなった場合困るけど。
「どこ向かうんですか?」
質問されたので正直に答える。
「金集め」
「は?」
は?ってなんだよ。お金は大事じゃん?
「で、金集めの為にどこ向かうんですか?もしかしてあれですか。銀行強盗とかそういう類ですよね?」
「あー、大体あってる。いや、正解。それに、金が欲しいってのはあれだよ。スマホの能力についてのあれだよ」
俺がそう言うと、あっと表情を変えてウンと頷く。わかってくれたようだ。
「だから、銀行強盗だ」
恵は俺の横につき、共に歩いている。銀行はどこにあるのだろうか、俺はこの場所を良く知らないからな。恵ならわかるかな。
「あ、こっちです」
わかっているようだ。恵はふふんと鼻歌を歌いながら歩いている。俺の横にぴったり歩いているので手を繋いでもいいのかな。何か口実・・・・・・。
「あっ、恵、俺とはぐれたりしたらやばいから・・・・・・。その、手つながないか?」
少し緊張気味に俺が言う。恵は驚いていたが了承してくれた。
恵が手を差し出してきたのでそれに応じるように手を繋ぐ。・・・・・・恥ずかしい。
手を繋ぐと恵は頬を染め、ぷいと横に向く。恵も恥ずかしいのだろうか。
しばらくその状態で歩いていると、銀行が見えた。
「あれです!」
なかなかでかいな。金ありそうだな・・・・・・!銀行に近づくにつれてでかさが増す。下までたどり着くと、ばかでかい。やばい。
ぼけーっと見ていると、不意に銀行のドアが開かれる。人が来たら自動で開くらしい。電気通ってるの?おかしいなぁ。
ドアから現れたのは一体のゾンビだった。
「恵、下がれ」
恵は指示通り下がってくれた。周りを確認するがゾンビは一体だけのようで、警戒することはないようだ。楽勝だと確信し、ゾンビを見る。
とぼとぼと決して速くない速度で近づいてくる。
距離で言えば十メートルだな。五メートルくらいになったら殺す。
「・・・・・・」
残り七メートルくらい。
「ヴヴ・・・・・・ウゥアァナンデ」
何だ?
「ヴヴ、ナゼコロ、ヴヴヴサレナイト・・・・・・」
「ゆ、ゆうとさん!!ゾ、ゾンビが・・・・・・」
「あぁ、わかってる・・・・・・」
嘘だろ?ゾンビが少しだけだが話しているような気がする。気のせいだ、そんなわけがない。
ゾンビが五メートルくらいの距離に達したので俺はゾンビへダッシュし足を蹴る。
ボキっという骨が折れる音がなり、ゾンビは崩れる。
「ヴヴヴ・・・・・・イダイ、イダイイダイイダイイダイイダイイダイ」
ゾンビは言葉を発しながら手で這いずるようにして近づいてくる。まさかゾンビが話すようになるとは、驚きだ。
「ゆうとさんっ!!」
ゾンビは俺の方へと這いずり、俺の足をガシっと掴む。その瞬間、俺はその手を踏み、頭を何の躊躇もなく蹴りとばす。
サッカーボールのようにスパーンと飛んでいく頭を眺めながらため息をつく。
「ゾンビが・・・・・・話しただと・・・・・・。」
独り言のつもりだったが、恵は聞いていたらしく返事をする。
「ですね。驚きました。時間が経つにつれて進化していくのでしょう・・・・・・?まだ二ヵ月でこれだと・・・・・・もう無理です」
諦めモードである。それも当然だろう。しかし、俺にはもう一つ深刻な悩みがあった。
俺が襲われたことだ。襲われないと高を括っていたのだが。あれは、完全に獲物を捕らえるときの目だった。知能が向上したゾンビは俺を敵とみなすのかどうかを確かめるつもりで見ていたのだが、残念なことに足首を掴まれたからな。俺もこれから注意しておかねば。
「銀行・・・・・・入るぞ」
「はい」
銀行に入る。なぜ自動ドアなのかはわからないが、気にすることではないだろう。気にしないといけないけど。
「ゾンビはいないようですね」
「あぁ」
すかさず銀行の中を探索。普段行けない場所を探検するのって楽しいよね。特に、この銀行は他のところと比べて広いからなぁ。楽しいけども、探すの大変。
「あ、この下、金庫ありそうです」
恵の言ったほうへと行き、見てみる。地下への階段か?結構きれいにされている。
「行くか」
階段は、鉄でつくられており、歩くたびにコツコツと音をたてる。その音にゾンビは出てこないかとビクビクしてしまう。
「ゆうとさん・・・・・・。失礼かもですが、ちょっとビビリすぎてません?さっきまで堂々としてたのに・・・・・・」
いやあ、しょうがないじゃん!俺の安全が保障されていないんだから!怖いものは怖いです。
「そ、そんなことはないじょ!?」
「噛んでますよ・・・・・・」
コホンとわざとらしい咳をする。
「そんなことはない!」
言い切り、堂々と階段を下りていく。
突如、ガーンと後ろの方で大きな音がなる。ビクリっと大きく体をのけぞらせてしまい、階段から落ちそうになる。やばい―
そう思った瞬間、恵は俺の手を引いてくれた。
「・・・・・・ありがとう」
「いえ」
俺も恵も恥じらいながら礼をしている。
「ていうか、さきの音は!?」
ゾンビが来たのか?俺は焦った。恵の方へ顔を向けると、なぜか笑っていた。
「ププ、面白いです」
「・・・・・・何が?」
「ゆうとさん、私がただ靴で階段をガーンと強く踏んだだけなのにすごく驚いてたし、その上落ちかけるなんて」
恵は言いきってずっと笑っている。恵にとっちゃあ笑い話だろう。でもな、
「今後そういうことは一切やめろ」
冷徹な声で俺は言った。その上、恵の顔をパーンと叩いた。叩かれた恵は頬を抑え、俯く。恵は顔を上げ、謝る。
「ごめん、なさい」
頬を抑え、涙を溜めながら俺に謝罪する。
「あぁ」
そこからは一緒に金庫へと向かったが、会話をすることはなかった。