11.五万円の使い道
この階には生存者はいないようだな。二階はあらかた探した。しかし、一人の生存者も確認されなかった。このイオンという建物は三階建てだ。ならば、三階に集まっているという可能性も高い。
そう考え、三階へと足を運んだ。
エレベーターは止まっていたため、エスカレーターか階段ということになるのだが、ゾンビ避けなのか、1,2メートルほどの高さの家具で入れないようにしてあった。もちろん、それはゾンビだけにしか有効ではないため、人間であればよじのぼることはできる。
俺はエスカレーターできたため、それをよじ登り、着地する。
周りを見渡す。ゾンビはいないようだ。生存者はどこだ?
「こっちかなぁ」
言いながら俺は歩き出す。三階はゲームセンターや、飲食店が並んでおり、服や家具などは全て二階である。一階はいろいろある。
「ふーん」
ここにいそうだなと思いながら歩いていると、生存者らしき人が居た。
何をしているのだろうか。あぁ、自作銃みたいなものか。暴発したりしねえか?怖いな。
「こんにちは」
歩み寄り、声をかける。銃を制作していたグループは三人で、俺の方を一斉に振り向く。
「いや、怪しいものじゃないですよ。銃、下ろしてください」
怖い怖い。何?あー映画でよく見るよね、鍛えてあるの?
「あ、こんにちは。ここ、初めてですか?」
「あ、はい。さっき来ました。命からがら逃げ延びたわけですよ」
「そうですか。大変でしたね・・・・・・。あっ、ゾンビに噛まれてないですか?確認してもよろしいでしょうか?」
「はいどうぞ」
男たちは立ち上がり、俺のほうへ詰め寄りライトで俺の体全身をくまなく調査し、噛まれてないことを確認するや安堵した。
あれ?まてよ。俺、ゾンビになった恵に噛まれたはずだぞ・・・・・・。噛まれた腕を確認する。
「・・・・・・治ってる」
「はい?どうしました?」
「いえ、なんでもありません!」
治っていた。噛まれた方の腕は治癒していたのだ。これはゾンビの特性なのか?自然治癒恐ろしい。あれこれ考えていると、男たちに呼ばれた。
「あんた、生存者はこっちにいっぱいいるから連れてってあげるよ」
言われるがままについていく。
「ここにいます」
そう言われたので頭を上げる。よりどりレストラン?店名が謎だがどうでもいいや。
「ここにいるんですか?」
「そうですよ」
それを聞き、俺は店に入る。ガランと音がなり、扉を開ける。店に入ってから少し歩くと集団がいた。
「あ、こんにちは。さっきここに来たばかりの新人です」
俺が伝えるが、返事はない。数秒の沈黙の後代表者らしき人が来た。
「こんにちは、僕は戸塚栄治。よろしくな」
「あー俺は田中悠斗だ。こちらこそよろしく」
自己紹介を終えてから握手をする。ここで何をしているのかと質問したら、飯を食べてるところだって。なんでも、一階から結構くすねてきたらしく、食糧が減ってきたら一階から調達するらしい。それで犠牲になってしまった人もいるらしいが、しょうがないの一言で片づけられる。
実に残酷な世界である。
「そ、そういえば。ここにお金はあるか!?」
俺は声を張り上げて聞く。
みんなは戸惑っていた。それもそうだろう。だって、
「悠斗君、お金?もうお金に価値はないよ・・・・・・。盗む、盗まれるという残酷な世界になったんだ、ただの紙切れだよ」
わかってる。ていうか、歴代の名を遺した諭吉さんとか野口さんとか可哀想だな。全国に出回って今じゃ邪魔者扱いか!
「いや、いいんだ!ちょっとお金が欲しいんだ・・・・・・」
懇願。すると、
「レジにお金があるはずだ。誰もいらないだろうから全部貰ってくれていいぞ。何に使うのかは知らないが」
「ありがとう」
レジの方へ行き、レジを開ける。
二十万はあるだろう。諭吉さんが二十一人になった。野口さんは盗らなかった。
合計二十一万となり、俺は諭吉をポケットに収納する。ポケットの中の諭吉さんはグシャグシャになっているだろう。悲惨である。
「ちょっとトイレ行ってくる」
おなかが痛いという合図をしてトイレへ逃げるように走る。よし、誰もついてきていない。トイレへ行き、ドアを閉める。
何がしたいのかって?
俺は左ポケットから赤色のスマホを取り出す。
「このスマホは慣れないなぁ」
ボソボソと独り言を放ち、メニュー欄から選びだす。
『特別枠 五〇〇〇ポイントで生き返らせる。
一ポイント一〇円』
それをタップし、諭吉を五人取り出し、スマホに投げ入れる。
スマホはブラックホールのようにそれを吸い込む。
「すごい・・・・・・。この世の科学では証明できない不思議な力ってか」
関心し、少し待つ。
スマホは光だし、新たな項目が表示される。
『誰を生き返らせますか?
フルネームで記入してください。
※顔を想像して記入してください。一致しない場合は不正とみなし五万円は返金されません』
こんな文が映し出される。すごい、これで本当に生き返ってみろ。なんでもできるぞ。
「俺のすることは一つ・・・・・・。加賀恵を生き返らせることだ」
俺は恵の顔を思い浮かべながら一字一字丁寧に打ち込む。打ち込みが完了してから、一息ついて実行ボタンを押す。本当によろしいですか、と再確認画面が出てきたのではい、と打ち込む。
瞬間、画面は真っ暗になり、ぱあっと光りだす。
画面が逆流しているような、そんな感覚だった。ブラックホールだったからこれはホワイトホール?実在しているという証拠はないためあれだけど。
「うおっ!」
驚いたぜ。辺り一面が携帯のフラッシュによって光るんだから。目、開けてたせいで少しの間目が開けられない。
「え、わ、わたし・・・・・・。あれ、ゆうとさん!?」
聞き覚えのある声がした。お、目が開けれるようになった。
「め、めぐみ!?」
「ゆうとさん!な、なんで私・・・・・・。あれ、ゾンビに噛まれて意識が朦朧として」
「あ、あぁ。なんていうか、その・・・・・・あれだよな」
「何ですか?」
「その・・・・・・自分の格好見てみろよ・・・・・・。その、直視しづらいです」
恵は自分の体を見る。ボッと赤面させて胸や大事なところを隠す。それがまたエロイ。
「あの、きれいでした」
瞬間、俺の顔面にパンチが飛んできた。お、綺麗な乳首。