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10.ゾンビのリミッター

・・・・・・どうなったのだろうか。真っ暗だ。体は動かないし何も見えないし。これが死後の世界というものなのだろうか。俺は死んだのか?意識は残ってる。四十九日とかいうあれなのかな。 

 あれこれ考えていると、目の前がぱあっと明るくなった。


「まぶしっ!」


 叫び起き上がる。


「トイレ・・・・・・?」


 そこはトイレだった。目の前には大鏡。はっ、確か俺は恵に噛まれたはずだ。恵はゾンビになっていた、しかし俺はゾンビにならなかった。というか、なぜ俺は噛まれたのだろうか。謎である。


「・・・・・・恵、助けられなかったな」


 恵を助けることができなかったことに後悔する。しかし、しょうがないと思う自分もいた。だって、女子トイレでそんなことが起こる何て思わないだろう?いや、結構そういうシチュエーションはゲームやアニメであったな。


「くそっ」


 思い切り壁を蹴る。ガーンと大きく鳴り響き、ガラガラと蹴った場所が崩れ去る。思い切り蹴ったにも関わらず足に痛みは不思議とない。


「な、なんなんだ」


 疑問に感じた俺は同じように壁を殴る、蹴るの一連の動作を繰り返す。今までに感じたことのない爽快感だった。豆腐のように簡単に壊すことができるからな。


「た、楽しい!」


 感じたことのない強さに自分に酔ってしまう。その動作を繰り返しているときに俺は気づいた。もしかすると、俺はゾンビなのかもしれない。

 ゾンビは人間と違って力のリミッターが外れている、ならばこの力については納得だ。なぜ噛まれたのか、なぜウイルスに侵されていないのかは未だに謎ではあるがそんなことはどうだっていい。

 

「それよりも、こんだけ暴れてよく骨折れねえな」


 確信はした。俺はゾンビだ。大鏡で自身を注意深くみる。顔は元のままか、うん、特にあれだね。人間だよ。


「ちょっと気になることがあるなぁ」


 そう、俺が人を噛んだ場合その人はどうなるのか。俺がゾンビだという仮説が正しければウイルスが体内に浸食されてゾンビになるはずだ。試したい、そんな好奇心が今俺を蝕んでいる。


「とりあえず人を探すか」


 呟きトイレへ出て二階へと昇る。

 

 懐中電灯を右手に歩き出す。そのおかげで照らす部分は明るい。あれ、照らしてない部分も明るいな、照明ついたのか?疑問に感じ上を見上げる。電気はついていなかった。しかし、明るい。

 すぐに結論へとたどり着いた。


「ゾンビだと暗くても見えるんだな、便利だ」


 そう言って懐中電灯をポイと捨てる。ガンと音を鳴らしながら落ちていく懐中電灯の音に反応したのか、ゾンビが何体も飛び出してくる。

 

「ヴヴヴ・・・・・・キシャアアア」


 雄叫びを上げながら懐中電灯の方へと迫るゾンビ。俺は襲われる心配はないともうわかっている。なぜ恵には襲われたのかは本当に謎ではあるが、きっといつかわかるだろう。

 ゾンビは数にして六体。ちょうどいい数だ。

 俺は自身の肉体が強化されていると感じていたため、試したいという気持ちが強かった。

 懐中電灯に群がるゾンビに向かって俺はグーでパンチをした。


「ハアッ――」


 ブシャアと気持ちのいい音をさせて頭が吹き飛ぶ。吹き飛ぶというか、消し飛んだ。

 

「なんだ・・・・・これ・・・・・・」


 残りは五体。今度は背中に蹴りを入れる。

 ゴキッと奇妙な音をたて胴体はだるま落としのように吹き飛ぶ。残された足と頭はゴトンと地面に落ちる。返り血を大量に浴び、それが目や鼻や口に入る。

 しかし、不思議と嫌な気持ちなんてなかった。

 むしろ・・・・・・


「・・・・・・美味しい」


 口元についていた血をペロリと下で舐めとる。美味しいと感じてしまった俺は完全にゾンビだ。


 生きた人間の血を呑んだらどれだけ美味しいのだろうか。 



 残りの四体を残して俺は生存者を探しに行った。

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