1.突然の出来事
初作品なため、至らない点多いと思いますm(__)m
春。そう、春というのは新しい出会いを想像させる。また、別れという悲しいことも想像してしまう。新しい世界が広がるなんて思う人だって多くいるだろう。
俺だってそうだ。今日でやっと高校二年生になるのだ。クラス替えはすごく気になるし、入学する人たちについても気になる。気になるあの子に接近しちゃうぞ、なんて思う平和ボケしている人だっている。
そんな平和はすぐに崩れ去った。
俺たちの階のワークスペースには人だかりができている。クラス替えの発表だろう。気にはなるが、この人だかりでは入ることは厳しいだろう。あとで確認しようと思いトイレへ向かおうとすると、声をかけられた。
「ゆう、また俺と同じクラスだぜ」
振り向くと、親友である香川康太が爽やかスマイルで報告してくれた。
こいつは完璧超人である。スポーツは万能、頭脳明晰、性格までよく、容姿までいいときた。こんなステータスなため人気者である。当然だ。
俺はというと、すべてにおいて普通だと思っている。ゆうというのは俺の名前で、田中悠斗という名前のためそう呼ばれている。
「お、おぉ、また同じか」
「なんだー?いやなのかー?」
いやじゃないよ、と返してからクラス発表を確認しにいった。
二クラスかー。お、伊藤恵ちゃんだ、お、鈴木香苗ちゃんじゃん。学校の中でのトップ三に入るほどの容姿の女子が同じクラスに二人!!やべー、興奮してきた。
俺と同じことを思っていたやつは他にもいたらしく、周りでは「うらやま」、「くっそぉ」なんて声が聞こえてくる。
ふっと鼻で笑ってやったよ。
「えー、一年間よろしくな。自己紹介とかはいらないよな」
先生は体育の先生だけあって適当だ。いや、偏見だな。
今日は始業式や、一年生を迎える会だのなんだので授業らしい授業はなく、午前中で終わる予定である。
「もうすぐで、---------」
新しいクラスに心躍っている俺は、先生の話など上の空だった。なんせ、トップ三に入るほどの美少女がクラスに二人もいるからな!うれしい。
「では、体育館に向かうぞ」
先生が指示したので一斉に席を立つ。
瞬間、地震が起きた。
「キャァァァァ」
女子が叫ぶ。
「大きいぞ、みんな。机の下に隠れろ!」
先生が叫ぶ。
俺はこんな状況だというのにどうでもいいことを考えていた。
かくれんぼだったら、机の下に隠れたってすぐ見つかるよなぁ、なんて。
「おい、田中、早く隠れろ!」
先生が俺を名指しで命令する。我にかえった俺は隠れた。
地震は相当大きい、そして、なにより長い。女子だけではなく男子までもがブルブルと震えている。
周囲を見渡し、親友である康太を探す。
え。
困惑した。
自分を疑った。
だって、康太がいないんだから。
「先生、香川康太がいません!」
俺は先生に伝えた。周りの悲鳴(雑音)がうるさく、伝わったかわからなかったが先生は聞きとれたらしい。
「なんだと。だが、今は危ない。地震が収まってからさがす」
そんなことでいいのだろうか。手遅れにはならないだろうか。そんな心配はしたが、過保護すぎるだろう。大丈夫なはずだ。
地震は収まった。生徒の悲鳴も収まった。だが、俺の焦りは収まらなかった。それも当然、だって、親友が戻ってこないのだから。
「先生。香川がまだ・・・・・・」
「あ、あぁ」
探しに行くぞ、と先生は俺を連れて教室を出た。他の生徒については、2クラスの隣である1クラスの後方についていけと指示をしていた。
今現在、俺と先生は二人で学校中を歩き回っている。実に不思議なペアである。
「あの、僕も探していいんですか?」
俺の質問に先生は、「あっ・・・・・・」なんて間抜けな声を出していた。体育会系の人は忘れっぽいなぁ。これも偏見だな。
探し回ること二十分、未だに見つからない。大きな地震だったため被害も相当だった。見た限りでは死者はいないだろうが、照明やガラスなどはそこら中に飛び散っている。スリッパのありがたみを初めて感じたよ。
「えっと、グラウンドにもう出てる可能性もあると思うんですが」
俺がそういったのには根拠がある。火事や地震が起こったときは、全校生徒がグラウンドへ集合するからである。もしかすると親友だって避難した可能性だって否めない。
そんな俺の願望は次の言葉で打ち砕かれた。
「それはない、あいつは成績だってよく、先生の間でも有名だったから、顔は把握している。先生たちには、香川が行方不明、見つけ次第連絡してくれと伝えておいたのだが、まだ連絡がきていない」
そんな、まだ可能性が・・・・・・。そう、連絡し忘れているかもなんて考えたが、ありえない。こんな状況で忘れるなんてない。いや、こんな状況だからこそあるいは・・・・・・。
「おい、香川がいたぞ!」
先生の指さす方へ俺は目を向ける。
香川だ。
「おい、香川、」
俺は言葉を止めた。止めたのではない、何かによって遮られた。そう、声に出すことができなかった。
「香川、何していたんだ」
先生は香川に近づく。香川は座り込んだまま無言でいる。顔は青ざめていた。手からは血がだらだらと流れ出ていた。意識はある、目がぎょろぎょろと動いているからだ。「ヴヴヴ・・・・・・」という奇妙な声まであげていた。俺は親友に対して気持ち悪いという感情を初めて抱いた。何かのドッキリだろうか、それにしてもタチが悪い。ましてやこんな状況でそんなことするわけがないだろう。
「香川」
先生が香川の横まで行き、香川の肩に手を置いた時だ。
俺はこの現実を疑った。自分を疑った。これは夢だ、と思った。
香川は、肩に置かれた手を素早い動きで噛み千切った。
「ぐぁぁぁ、いってえええ」
先生は叫ぶ。手からは血が流れている。先生は痛みでへたり込んでしまった。すると、次は先生の首を噛み千切った。
「うぁぁぁぁぁぁぁっぁあ」
先生がどんどん噛まれていく。皮膚などはなくなり、骨まで見えてくる箇所まであった。
俺は逃げた。
恐かったから逃げた。親友を置いて、先生を置いて。
急いでグラウンドへ飛び出した。
だが、俺の目の前に見えるものは、いつもの日常ではなかった。
なぜだか、グラウンドには、どうやってかバスが倒れこんでおり、何台もの車が炎を上げていた。
その炎に目を見張ると、皮膚は溶かされ腕をダラーンとした状態で歩いている人が何人もいた。何人?いや、何十人、下手すると何百人かもしれない。その光景は、世界大戦を思わせるようなものだった。
爆撃?という言葉が脳裏に浮かんだ、でも、それにしては俺に被害はない。
いったい何なんだ、と訳の分からない状況に戸惑った。
だが、すぐに答えにありつく。
皮膚がただれている人が人を喰らっていた。
皮膚がただれている人は顔が全員青ざめており、声は「ヴヴヴ」としか発さない。
一方の喰われている方は青ざめていないし、叫び声まであげている。
俺は映画やゲームはすごく好きだ。
「まんまゾンビじゃねーか・・・・・・」
落ち着いた口調で自分で自分に確かめた。
俺は普段からゾンビが現れたらなぁ、勇者のようになってやるのになんてことを思っていた。
そんな非現実的な話をして盛り上がっていたこともあった。
その時は本当に思ったりもしたが、いざそうなってしまうと。
そんな考えをしている間にもゾンビは人を喰らっていた。俺は動けない。何が勇者だ。足がすくんでいる。自分の足じゃないみたいだ。
あぁ、また一人、また一人。
そんな俺に一体のゾンビが気づいたのか、俺の方向へ向かってノロノロと歩きだした。
「あぁ、終わった」
一人で呟いた。短い人生だった。可愛い女の子と同じクラスになれたのに・・!
そんな中、ゾンビはしっかりと歩いてくる。残り二メートルといったところだろうか。
確実に、少しずつ近づいてくる。
「あぁ、本当に終わった・・・・・・」
同じことを呟いた。人間、死が近づくと何度も同じことを呟くみたいだな。走馬灯だって見てしまった。ほんの数秒が何十秒にも感じるって本当なんだ、と実感した。
もう俺との距離は五十cmを切っている。
目を閉じた。諦めよう。
何秒経っただろうか。いや、何分という時間が経ったのかもしれない。今の俺には分からない。
一つ、わかることはゾンビは俺を喰わずに歩いて行った、ただそれだけだ。
なぜなんだ?疑問は残ったが深く考えないようにして安全な場所を探しに歩いた。
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