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~第五章~

「お久しぶりです、セラフィナイト殿。いえ“シューレンベルグ伯”とお呼びすべきですね」


 公務でシュレキンゲルを訪れたクロサイトは早々に職務を全うし、シュレキンゲルの町から目と鼻の先にあるシューレンベルグ家に立ち寄った。

 あれから二ヶ月の時が流れていた。


「クロサイト殿、水臭い事を。今まで通りで構いませんよ。私は昔も今も貴方を大切な“友”だと思っています」

「ありがとうございます。……ではお言葉に甘えます、セラフィナイト殿」


 一番歳が近く、同じ平民出身のセラフィナイトとクロサイトは四天王の中で一番近しい存在だった。

 セラフィナイトの爵位拝命を一番喜んだのも、このクロサイトであり……そして、授与式当日の顛末を聞いて一番狼狽したのも彼だった。


「セラフィナイト殿。本当はもっと早く、貴方にお会いしたかった。お聞きしたい事が山ほどあります! 私はあの日も公務で貴方の授与式に出席出来なかった。ジェムシリカ殿から事の顛末をお聞きして……正直、信じられませんでした。一体、何故あんな事に? 陛下のお怒りを買うような事になったんです?」

「…………」


「陛下は、シェルタイト様は……貴方の為にっ! 貴方の能力(ちから)を認めて下さっているからこそ、貴方にシューレンベルグ家を継がせようと。貴方に爵位を授けようとご尽力下さったんですよ。それなのに何故、陛下のお心を踏み躙るような真似を?」


 シューレンベルグ家の家督の継承と爵位の授与。

 それは本来ならば、この上ない栄誉である筈だった。

 しかしセラフィナイトは、その栄えある場で……それら全ての辞退を申し出た。

 誰もが予想だもしなかった前代未聞の事態に、その場に居合わせた者は騒然となった。

 シェルは黙ったまま、その様を玉座で唯見つめていたが……



  挿絵(By みてみん)



「陛下……」


 突然のシェルの言葉に騒然としていた場は水を打ったような静けさになった。


「私の命に“否や!”を唱える事は許さない!! お前はもう私の側近ではない。シューレンベルグ伯セラフィナイトだ! これからは領地を治める事に専念しろ! 暫くは登城する必要もない! 王都に足を踏み入れる事も許さないっ!!」



  ☆     ☆     ☆     ☆     ☆



    挿絵(By みてみん)



「爵位など望んではいなかった。初めてシェルタイト様に御目通りを許された時から私は……私の忠誠は、シェルタイト様に捧げると誓った。ムーカイト王家にではなく、シェルタイト様個人にです。私はシェルタイト様のお傍に居る為に、シェルタイト様をお護りする為にずっと努力してきたんだ!」

「お気持ちは分かります。私も……いや、我ら四天王は皆陛下に心酔して、陛下に命を捧げた者ばかりです。しかし……」


「クロサイト殿、私は自惚れていたんです。シェルタイト様の側近筆頭に抜擢され、自分はシェルタイト様の一番近くに居られるんだと。シェルタイト様に一番信頼されている臣下なのだと。それは私自身の力で勝ち取ったものなのだと……。けれど、それは私の錯覚に過ぎなかった。私はシェルタイト様のお許しがなければお傍に近づく事さえ出来ない、ちっぽけな存在に過ぎないのだと……」

「セラフィナイト殿、そんな事はっ! 貴方の才能と力は誰もが認めている事です!!」


 クロサイトの言葉にセラフィナイトは静かに首を横に振った。


(そう、解かっていた筈だった。解かっている……と思っていた。しかし、本当は理解出来ていなかったんだ。シェルタイト様は主君。私は一臣下にすぎない。あの方は、こんなにも遠い存在だったのだ!)

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