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神が与えたいらない能力  作者: 七詩のなめ
第二章 ウンディーネ
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第七話 雨降り

さあ、新章開幕!!

主人公の能力の説明をそろそろしなくちゃなー

雨降り


六月下旬、今年は梅雨入りが遅かったせいもあってまだジメジメした気温が続く。

俺はこの季節が大嫌いだ。

なぜなら、この暑さに耐えて、クソ眠い授業にも耐えなければならないからだ。

ああでも、女子がプールに入っているのを遠目で見るのはいいかもしれない。

「はぁ~」

俺はいつものように深い溜息を着いてしまう。

「どうしたの? あなたらしいっちゃらしいけど。ため息は幸福を持って行くわよ?」

隣の席の麻耶が俺を小突く。

麻耶は知っての通り俺の家に勝手に入って来て家庭崩壊を仕向け、尚且つ俺の家の住人になった人物だ。

そして、俺はこの麻耶に毎朝起こされている。

それもものすごく大胆な起こし方で。

朝、まだ目が開かない時間帯。

1、麻耶が静かに俺の部屋に忍び込む。

2、俺の上に静かに乗っかる。

3、鳩尾に強烈の一撃を放つ。

4、痛みで目が覚めた俺に可愛らしく『おはよう』と声をかけてくる。

最早何がしたいのか意味不明だ。

もうひとつ言わせてもらえば、なぜ俺の鳩尾に攻撃をしたんだ?

おかげで食べ物が口を通らないよ。

「なあ、麻耶」

「何かしら?」

「朝起きる前の無防備な体に強烈な一撃を受けて元気が出ると思うか?」

「思うわ。充分に」

ダメだこいつ。精神科か、脳外科に連れて行かないと。

「むっ……なぜか今、失礼な事を言われた気がするわ」

うわお。勘だけは鋭いのですね。

俺は机に力なく頭を落とし外を眺める。

梅雨入り、確か今日からだっけ? いや、二日前からだっけ? まあ、どうでもいいや。

外は曇っている。雨は降ってはいないが振りそうな気配がモワンとしていた。

「傘……持ってくるの忘れたな」

俺は何気ない事を口にする。

何も考えてはいない。ただ、目の前の物を見て感じたことが口に出ただけ。

「そうね。雨が降ったらあなたに鉄の傘を持ってもらうわ」

「うわー、なんかすごく重そうだな」

「そんなに重くないわ。五十キロくらいかしら」

一般ではそれを重いと言うんだよ、麻耶。

常識がわかっていない麻耶に心の中でツッコミを入れて再び空を見る。

そこにはやはり曇り空があった。

ただ、違うのは人が浮かんで――人が浮かんで!?

俺は立ち上がり目を擦る。

嘘だ! 嘘だ嘘だ!

だが、何度見てもそこには人が浮かんでいた。

背丈は子供のようで髪は青。幻覚ではない。妄想でもない。そこには本当に人が浮かんでいた。

「お、おい、麻耶!」

「何よ、私は勉強で忙しいのだけれど」

「あ、あそこに人が、人が浮かんでる!」

俺は麻耶を浮かんで人が浮かんでいた場所を指差す。

「は? 人が浮かんでる? そんな馬鹿なことが――どういう人だった?」

「え? こ、子供のような背丈で髪の毛は青かったけど……って、アレ? いなくなってる……」

さっきまでいたはずの人がいなくなっていた。

やっぱり、幻覚か?

「……そう。なら大丈夫だわ。それはきっとあなたの幻覚だと思うから」

そういう麻耶。

だが、麻耶の目はそうは言ってはいなかった。

何か、もっと確信的な物を見ているような目で麻耶は窓の外をずっと見ていた。


学校が終わり下校。

俺は特に何の部活にも入っていないので授業が終わったら即下校だが麻耶は色々と肩部をしているため帰りは基本別々だ。

俺の予想は当たり下校時間には雨が降り始めていた。

なので俺はカバンを傘の代わりにして走っていた。

「チクショウ。なんで俺が濡れて帰らないといけないんだ」

俺は自業自得な事を他人のせいにしてその他人に毒づきながら帰っていた。

そんな時ふと神社の中に目が行く。

そこには今朝空に浮かんでいた人が水たまりを踏んで楽しんでいた。

見たところ少女のようだ。体型は小学生くらいで髪は青く、そして目も青かった。

少女と目が合う。

少女はニッコリと笑うとこう言った。

「お兄ちゃん。遊ぼ?」

その言葉に一瞬、殺気を感じる。

言い逃れのできないほどの強い殺気が感じられる。

俺が動揺しているといつの間にか少女は俺の目の前に来ており俺の服を掴もうとしていた。

まずい。なんだかわからないけどすごくまずい気がする!

俺は後ろに避けようとするが何かにそれを阻まれる。

少女の手が俺の服に触れようとした時、ダイヤモンドの輝きを放つ剣が少女の手を切り落とさんとばかりに振り下ろされる。

だが、その剣は簡単に避けられ少女はニッコリと笑ったままステップで再び水たまりを踏む。

「そこまでよ、ウンディーネ。 どういうつもりか知らないけれど、私の京介に手を出したら……殺すわよ?」

本気の目で麻耶は少女を睨む。

え? 待って、俺ってお前のだったの?

少女はそんな麻耶のやりとりを見て笑っていた。

「あ、鉄のお姉ちゃん。私、お兄ちゃんと遊ぼうと思ってただけだよ?」

小学生特有の濁りのない笑顔で少女は言う。

待て待て待て、理解が追いつかんぞ?

ええーっと? この二人は知り合いで、しかも嫌悪する関係で……ってことは俺の敵?

「あなたの遊びは遊びを超越しているわ。簡単に人を殺せる遊びがあっていいわけないでしょ?」

ひ、人を殺す!?

依然として剣を構える麻耶。

笑顔でそれに対応する少女。

ああもう、なんかよくわからなくなってきたぞ!

「あはは、お兄ちゃん、またね」

そう言って少女は消えた。

そこには水たまりだけが残り、少女の姿は完全に消えていた。

「あ、あれって、もしかして……」

「能力者よ。しかも水を媒介として発動するもの。固有名『流水』、神話名『ウンディーネ』」

り、流水……。

また何か、俺の平穏を壊しそうなやつが現れたよ……。

「全く、勝手に近づくなんてどういう神経してるの?」

うっ……。麻耶のお説教が始まってしまった。

「い、いやだって、あんな子供が能力者なんて気づかないだろ?」

「そんな考えだからすぐに死ぬのよ」

「まだ死んでないけどな!?」

「全く、これだから若い人は」

「まるでお前が年上のように聞こえるよ!」

そんなやり取りをしていると麻耶が近くにコロッケ屋を見つけ、興味津々で買いに行く。

金を持っていないというのでしょうがなく俺が買ってやったが以外にも高く俺の今月分の小遣いがなんとふた桁なってしまった。

「今月、これで何とかしろと? まだあと二日以上あるのに……」

「いいじゃない。お昼ご飯は私が作るのだし、水筒を持ってきてるし。ほら、何の心配もない」

すごいでしょっと言わんばかりのドヤ顔で麻耶が語る。

俺は半分諦めの入った溜息を着くと家への道をひたすら歩いた。

一層増した雨が明日への不安を醸し出す今日。

俺は一体いつになったら平穏を手に入れられるのだろう?

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小説家になろう 勝手にランキング 京介「怖いよ! もうちょっと優しく言ってあげて!」
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