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神が与えたいらない能力  作者: 七詩のなめ
第一章 始まりの物語
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第五話 京介、覚醒

京介、覚醒


みなさん! ピンチです! ものすごくピンチです!!

なんだかわからないけど周りに鎌を持った死神がわんさかいます!!

「おいおいおい!! ここはどこのバトル漫画ですか!?」

「馬鹿なことを考えてないでここを突破できる策を考えさい!」

無理だ! 突破できるわけないだろう!!

突如現れた、死神の大群。

力を持つ少女と何の役にも立たない主人公。

さて、ここで問題です。この戦力で死神を撃退する方法を答えなさい。

「無茶苦茶だぁぁぁぁ!!」

俺は頭を抱えて座り込む。

ああ、とうとう俺の平穏もここまでか……。

「出し惜しみはできなわね。――鉄よ。瞬足の愛馬よ。ランスロットの名において顕現せよ!!」

剣を地面に刺し、言霊を唱える麻耶。

すると、地面からなんと鉄の馬が作られていく。

「なぎ払いなさい!!」

鉄でできた馬が死神たちを次々と踏み潰していく。

うわお。そんなことまでできるんですね。

関心が入った頷きを送りながら俺はそんな情景を見ていた。

「乗りなさい。この場を脱出するわ!」

俺の手を取り馬に乗る麻耶。

俺もその後ろに乗ると馬が走り出した。

「って、おいおい! みんなはどうするんだよ!」

「助けるわ。でも、今の私たちじゃ――」

言葉を遮ったのは死神だった。

死神の鎌が麻耶の肩を抉るのが鮮明に見える。

鮮血が飛び、越グロイ肉片が舞う。

俺の中にザワつきが走る。

「ま、麻耶!!」

俺は麻耶の背中を支えると麻耶が笑顔で俺を見る。

「ほ、ほら、あなたが話しかけるから攻撃を食らっちゃったじゃない」

そんな毒づきも今では覇気がない。

出血が止まらず、白い床が赤く染まっていく。

ダメだ。死んじゃダメだ!

「お、おい。死ぬなよ」

「し、死なないわよ。あなたを守ると決めたのだから。死ねないわ」

俺を守る。

こいつは本当にそう思っていたのか。

俺はどうだ?

普通、男子が女子を守るものじゃないのか?

なんで守ってもらってるんだよ!

力が……ないからなのか?

『我を抜け』

麻耶から目を離し教室の方を見ると死神が寝ている女生徒に近づいていた。

『我を抜け』

その隣に男子生徒が死神に襲われていた。

『我を抜け』

そして、俺もまた例外ではなく死神が鎌を振り上げる。

『我を抜け』

振り下ろされた鎌が俺に当たる瞬間、俺の中で何かが爆発したように思えた。

「砕けろ!!!!」

バリンッとガラスが割れたような音をあげて鎌が砕ける。

そんな中、俺の脳裏に言霊が迸る。

「我が手に来たれ。勝利の剣、勝利を約束された剣よ」

俺の目の前に透明な剣が現れる。

「輝きを取り戻し、勝利を与えよ」

俺は立ち上がり目の前の剣を手にする。

『我を抜け!!!!!!!』

「輝け! エクスカリバー!!」

地面に刺さった剣を抜くと剣が輝き始める。

徐々に柄の部分から色を発し、透明だった剣が輝きを取り戻す。

周りにいた死神は剣の光を浴びただけで空気になってしまった。

「俺の平穏を奪ったやつら! みんな血祭りだ!!」

俺は廊下を駆ける。

鎌を持って襲いに来る死神たちを俺は剣でねじ伏せる。

「我流、一の型。『抜き手』」

左手で持った剣を死神の頭部目掛けて振り下ろす。

死神は鎌でガードしようと上に上げて剣を迎え撃とうとする。

そして、剣が鎌に当た――るはずだった。

剣を持っていたはずの左手は鎌を通り過ぎ、その手には剣はない。

剣は空中で浮遊しておりそれを空いていた右手で受け止め再度鎌に打ち込む。

これが抜き手。

人というのはガードするとき、相手の攻撃が当たる瞬間に力を込める。

つまり、ガードは一瞬しか続かないのだ。

そこを狙って俺はガードのタイミングをずらし、力が込められていない時に打ち込んだのだ。

元々力のないひ弱な俺のための剣技。

どんな強靭な力を持った人物も倒して来た俺だけの剣技。

「KEEEE!!」

奇声を上げ空気となっていく死神。

学校中にいるこいつらをどうやって片付けようか。

てか、これって今日中に終わるのか?

「さてと、これで下準備は終わったわ」

すると、俺の背後から声が聞こえる。

「ま、麻耶!?」

振り返るとそこには麻耶がいた。

「ど、どうして……」

「バカね。私は死なないと言ったでしょう? それに怪我を直したのはあなたじゃない」

はい? 怪我を直した?

「まさか、無意識にしたの? うわお、これはびっくりだわ」

笑いながら言う麻耶を見て俺はある種の安堵を覚えた。

「そ、それで、下準備って?」

「ああ、待ってなさい。今すぐ終わらせるから」

へ? それって――

俺の言葉はいらなかった。

なぜなら、麻耶は最後の言霊を唱え始めていたからだ。

「鉄よ。我が下僕よ。神の子を殺める槍となれ」

瞬間校内が揺れた。

地震ではない。麻耶の唱えた言霊がどうやらこの現象を引き起こしているらしい。

「な、何をしたんだ?」

「校内に私特製のシャーペンを設置してきたの。そして、私の言霊で校内にいる神の子を一掃したわ」

うっわぁ。そんなことまでできるんですか。

てか、怖! 怖いよ! ものすごく怖いよ! なんだよその能力!

「まあ、この可愛い私を切り裂いた恨みもあるしスッキリしたわ」

この時、俺は初めて麻耶が根に持つタイプだと気づいたのだった。

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小説家になろう 勝手にランキング 京介「怖いよ! もうちょっと優しく言ってあげて!」
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