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神が与えたいらない能力  作者: 七詩のなめ
第三章 暗闇に輝く王
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第十三話 異名

異名


俺の家にいきなり子供が出来ました!

名前は磯崎水姫ちゃんです!!

よくわからないけど養子で家にやってきました!

わーい、今日から楽しい生活が――

「できるかぁぁぁぁぁあああああ!!」

俺は手に持ったおもちゃのマイクを床に叩きつけ悲しみの悲鳴をあげる。

「おかしいよ! 俺なんかおかしいよ!!」

「ええ、十分におかしいと思うわ。取り敢えず、頭を冷やしなさい。水姫、やってあげて」

「うん!」

水姫が如何にもザ・冷水的なキンキンに冷えた水の塊を宙に浮かばせている。

「い、いや待て! 俺は冷静だ! 俺は冷静なんだぁぁぁぁああああ!!」

ジャボンっ!

そんな音を上げながら頭からつま先までびしょ濡れになる。

季節が夏だったのが幸いだった。でなければ凍って死んでいた。

「なんでこんなに冷たいんだよ!」

「そりゃあ、氷になるかならないかの瀬戸際まで冷たくしたものだからよ」

「お前は俺を殺す気か!」

「ちっ!」

「舌打ち!?」

なんか、この頃俺の扱いがひどくなってきているような気がするんですけど!?

夏のひどく暑い日。朝目覚めれば大騒ぎな生活。

まあ、コレはこれで楽しいからいいんだけどな。

俺の中でこんなやり取りが日常となりつつある今日。

俺に新たな最悪が静かに、着実に近づいていた。


学校の昼休み、俺はやってはいけない事をしてしまった。

「弁当が……ない……」

朝、麻耶に作ってもらった弁当を入れ忘れたようだ。

ま、まあ、購買で買えば……

そう思い、財布を探すが一向に顔を出しはしない。

そこで思い出す。

俺、この前水姫の服買ってすっからかんじゃん……。

冷や汗が吹き出す。

まずい。このままでは昼飯が食えない。

「ぱぱぁ!!」

ん? 幻聴か? 水姫の声がしたような……。

「ぱぱぁ!! お弁当忘れてるっておばさんが言ってたよぁ!」

後ろを見ると高校に小学生が来ていた。

日本では珍しい蒼い髪に青い瞳。妖艶な美しさと、純粋な笑顔。

ああ、水姫だ。

水姫が教室のドアのところで俺に手を振っていた。

「ははっ! ぱぱおバカさんだ」

そう言いながら手に余る大きさの弁当を抱えて俺のところまで来る水姫。

「み、水姫。なんでここに……」

「はい、お弁当。ぱぱがお腹減ってると思って」

「持ってきたのか……。水姫は優しいな。ありがとな」

「うん!」

俺は水姫の頭を撫でる。嬉しそうに笑顔を見せる水姫は撫でられてすぐに帰って行った。

さて、俺もご飯を――

あれ? クラスがざわついている?

「さっきの子、磯崎くんをぱぱって」「ねえねえ、これってどういう……」「子作りを完了していたというのか!!」「相手はやっぱり――」

……墓穴を掘った!!

容易に水姫にパパと呼ばせなければまだ弁解の余地はあったんだ!

ど、どうしよう。さっきまで暖かかった弁当が今では氷点下まで達している気がする。

「み、みんな。さっきのは――」

「「「「お前は黙ってろ!!」」」」

「……うん。わかった」

ダメだ。こいつらどうでもいいことに一致団結してやがる。

俺は優雅に昼飯を食べている麻耶に助けの視線を送るが麻耶はニコッと笑ってそっぽを向いてしまった。

……誰か助けてはくれまいか。

教室に今までにない黒い感情が渦巻く。

だが、それを切り裂く英雄がいた。

「よぁ、兄弟! 昼飯は終わったかぁ?」

そう、悪友亮二の手によって。

「だが、だがしかし、なぜお前なんだ……」

俺は早々に頭を抱えたくなった。

こいつは確かに適切だよ! どんな空気もぶち壊してくれるやつですよ!

でも、でもだな! こいつは同時に俺を貶めるかもしれないのですよ! 神様!

「おいおいおい。そんなに俺に期待すんなって」

「してないわ!! どちらかといえば落胆してるわ!!」

「なっ……そんなに褒められたのは久しぶりだぜ!」

「褒めてない! 俺は褒めてないぞ!!」

にししっと笑う悪友。

そんなやり取りをしているといつの間にかクラスに流れていた黒い感情は消えていた。

ふぅ、今回はどうやらなんとかなったみたいだ。今度からはむやみに水姫を学校に来させるべきじゃないな。

「そうだ兄弟! お前に伝言があってきたんだった!」

「な、なんだよ急に……遺言か?」

「ちゃうちゃう。麻耶さんに頼まれてた件がわかったよ。今月、あいつらが動くぜ!」

「あ、あいつら?」

「あっれぇ? 麻耶さんがお前に言ってもわかるって言ってたのになぁ。ま、いいや。そういうことだから。じゃあなぁ」

そう言って手を振りながら去っていく亮二。

あいつらが動く? はて、何のこっちゃ。

俺は考えても出そうにない答えを早々に諦め、遅めの昼飯にありつくのだった。


放課後、俺は久々に麻耶と一緒に下校していた。

「そういやぁ、昼間。亮二が変なこと言ってたけど知ってるか?」

「ええ、キングが動くのでしょう?」

「……キング?」

「あ、そっか。あなたにはまだ話してなかったわね。エンペラーと8人衆のこと」

……ああ、今日はなんだかよくわからないことばかりだなぁ。

エンペラーって皇帝だっけ? 8人衆は……よくわからん。

「エンペラーっていうのはそのまま皇帝。まあ、私はキングと呼んでるわ。水姫は王様と呼んでるみたいだけれどね。8人衆っていうのは私と水姫を入れてあと六人いる能力者のことで最初はキングを守るためのものだったわ。でも、私のようにキングに仕えないもの出てきているのよ」

うーん。説明が難しくはないか?

「まあ、簡単に説明すれば私たち能力者はキングを守るために集められ、キングは私たちを守るためにいるのよ」

「ちょ、ちょっと待て! てことはそいつは強いんじゃないのか?」

「ええ、少なくとも私たち八人が束になってかかっても小指一本でやられるでしょうね」

めちゃくちゃだ。そいつかなりめちゃくちゃだぞ。

「ん? 待てよ? さっきの話をまとめるとそのキングはお前たちより強くて、しかもそいつはここに向かってるっていうのか?」

「ええ」

麻耶は当たり前のように即答する。

逆に俺は冷や汗が止まらない。

「な、何のために?」

「それはもちろん。あなたという十人目の能力者ができたからでしょうね」

ああ、どうやら俺はまた、はたメンドくさいことに巻き込まれそうだ。

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