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神が与えたいらない能力  作者: 七詩のなめ
第一章 始まりの物語
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第一話 平穏

これは大賞などに投稿しようと思っている作品です。よかったら、感想などをください。お願いします。

平穏


俺こと磯崎京介はどうやら普通の人間ではありえない能力を持っているらしい。

それは妄想や幻想、遇想に干渉するという能力だ。

そのせいで俺はこれまで平穏というものに疎い。それもあってか俺は自分の平穏を壊されることが特に嫌いなのだ。

そんな俺も昔は剣道をしていた経験があり、一時達人とまで呼ばれたことがある。


二日前、俺はこの世ではありえない現象を目の当たりにした。

その日、俺は寝ていたのを教師にバレてしまい放課後、職員室に行くように言われたため仕方なく行ったところなんとそこには鎌を持った死神みたいなものがうじゃうじゃといたのだ。

そんな時、俺は不思議な少女とであった。

その少女の名は花美奈麻那。

麻那は俺の目の前で大きな鎌を取り死神を一掃していくという夢物語みたいな現象を目の当たりにしてからはや二日。

あれからは死神も見えず俺は平穏を取り戻しつつあった今。

俺は三千四百三十五回目の告白に失敗していた。

「なぜだ、なぜ俺の告白が成功しない……」

あれだけ好感度の高い妄想をしている女子ばかりを選んでいるというのになぜ外すんだ!

※この主人公は故意に能力を使っているわけではありません。

「あんなに耳を澄まして聞いたのに!」

※念の為にもう一度、この主人公は故意に能力を使っているわけではありません。

「あーもう! 勝手にしろ!」

俺はなんだか投げやりな気分になり学校の柱を蹴る。

うん。思ったより硬いじゃないか。俺の足が熱くなってきたよ。

「それにしてもフラれすぎだろ……」

はぁ。

思わずため息が漏れる。

そんな時、ふと二日前を思い出す。

あの金髪の女子、確か花美奈麻耶だっけ。その子はどこに行ったんだろう?

どうやらここの生徒じゃないみたいだし、電話番号も聞いてなかった。

もう一度会いたいなぁ。

そんな刹那、俺に再びの奇跡が巻き起こる。

「あら、ここにいたのね。やっと見つけたわ」

目の前に金髪を靡かせる少女が立っていた。

その顔は忘れるわけのない人物。

「麻耶……?」

そう、二日前俺を助けてくれた人物その人だった。

「ええ、どう見たって私だわ。それとも私以外の誰かに見えるわけ?」

「い、いや、違うんだ! 見間違いとかじゃなくて……でも、どうしてここにいるんだ?」

「いい質問ね。率直に聞くわ。あなた、能力者ね?」

麻耶のいきなりの質問に俺は動揺を隠せない。

だが、不思議と首が勝手に縦に動く。

「そう、なら次。あなた、どこかに所属している? どこかの機関とか、研修施設とか」

「い、いや。してないよ」

俺のぎこちない返答に麻耶はうんうんと嬉しそうに首を振る。

「じゃあ最後。あなた、私とパートナーを組む気、ある?」

俺が麻耶のパートナー?

「そ、それはどう言う意味で?」

「えっと、戦いでもいいし、生活の中でも構わないわ。私、二日前のあの日からあなたのその能力が気になるのよ」

俺の能力。

人の心の中を見る能力がそんなに気になるのか?

「さあ、答えを聞かせて。あなたは私とパートナーを組む気はあるのかしら?」

俺の中に大きな分岐点ができたような気がした。

麻耶についていきたい。

でも、ついて行った先には何があるんだ?

そこで俺は二日前の死神を思い出す。

まさか、またあんな戦いをしようって言うんじゃないだろうな。

だとしたら、俺はついて行きたくない。俺はただ平穏が欲しいだけなんだ。

平和な生活の中で平和に暮らして、死にたい。

こんな能力だって必要ない。

俺の中で答えは決まった。

「ご、ごめん。俺はもうあんな戦いはしたくないんだ」

これだけの言葉で麻耶には通じた。

「……そう、なら仕方ないわね。引き止めてごめんなさい」

そう言って麻耶は俺の横を通ってどこかに行ってしまった。

なんか、悪いことしたかな?

そんな罪悪感がそのあと長らく続いた。


次の日のホームルーム。

俺は激震した。

「花美奈麻那よ。みなさんよろしく」

いきなりの転校生。

衝撃の事実。

なんとも言えないこの感情。

この全てがニコッと笑った麻耶によって作り上げられた。

なんであいつが俺のクラスに転校してるんですか!?

驚いている俺の横を麻耶が通過したときふと聞こえた言葉があった。

それは――

「よろしくね、磯崎京介くん?」

微笑みながら俺にしか聞こえない声でそっと呟く声。

その表情は悪魔の微笑みだった。

朝のホームルームが終わり休み時間。

麻耶は案の定クラスの話題となったが途中でトイレに行くと言って席をたった。

俺はこの瞬間しかないと思い麻耶を追いかける。

「ま、麻耶!」

廊下に俺の声が響く。

麻耶は少し振り向き首を傾げる。

「なんであなたがここに?」

「なんでってそれはこっちのセリフだよ! なんで麻耶はここに転入してんだよ!」

「そんなに声を上げなくてもいいじゃない。昨日言ったでしょう? 私はあなたが気になっているのよ。だから、いつでも監視できるようによ」

か、監視って……こいつ、マジで言ってるのか?

「お、俺なんかを監視したってなんの得にも――」

「昔、剣道をしていたようね。それもかなり強い、達人級なんだとか?」

ギクリっ。

「おまけにその能力がある」

ギクリっ、ギクリっ。

「容姿もなかなかの人材で」

嫌な予感が俺の脳裏を掠る。

「それでいて、私に何の利益もないのかしら?」

俺の首すじに嫌な汗が流れた瞬間だった。

やっぱりだ。こいつは悪魔か何かじゃないか?

「い、いや、俺はそんなに強くないし――」

「弱くもないでしょ?」

「かっこよくないし――」

「でも、カッコ悪くもない」

「能力は自分の意思で動かせないし――」

「そんなの学べば大丈夫よ」

……ダメだ。言い返すことができない。

全て正論とは言わないが言い返したら負けな気がする。

さっきから嫌な汗が止まらない。本能的がこのまま行けば俺の平穏は完全に再起不能になると告げてくる。

どうにかしなくては、どうにかしてこの状況を改善しなくては!

「まあいいわ。それより、このままだと私たちがきざまれそうよ?」

刻まれる?

俺は後ろを振り向いた。

そこには鎌を持った死神が――って、おいおいおい!!

そんなのアリですか!?

「って、うわっ! なんで鎌でなぎ払ったの!? ねえ、なんで!?」

すんでのところで鎌を避けて俺は叫ぶ。

今は授業が始まる三分前、みんなは教室の中に入っているおかげでこの状況は誰にも知れ渡らない。

だが、それが俺にとっての得かというとそうでもなかった。

「こいつの本体がまだこの学校に残ってるのよ。それもあって私はこの高校に転入したの」

そうだったのか……ん? 待てよ? 今なんて言った?

「こいつの本体なんかがいるのか?」

「ええ、いるわ」

即答だった。

うわー、マジか!! こんなのの本体がいるのか!

「で? こいつは本体なのか?」

「それはわからないわ。でも、多分違うでしょうね」

違うの!?

てことは、コイツの他にまだいるってこと!?

「ひと目も少ないし、私の能力を使うわ」

そう言ってスカートの中に仕込んであったと見える鉄のシャーペンを手に取り、まるで剣士が鞘から剣を取り出すように構える。

そして、何かを語り始めた。

「鉄よ。固く冷たい鉄よ。鋭く切り裂く劍となれ!!」

シャープペンを剣を抜くように抜くとそこにはさっきまでのシャープペンではなく長い剣が作り上げられていた。

「……!?」

死神が驚いたような反応を見せる。

実際、俺も驚いていた。

前は鎌を振りかざしていた麻耶が今度は剣を振るっていた。

しかも、その剣はただの剣ではなさそうだ。

鉛のように鈍いのに、鉄のように重いのに、それはダイヤモンドのように光り輝いていた。

「神の子。元いた場所に戻りなさい」

麻耶が狭い廊下を華麗に舞い始める。

それはまるでダンスを見ているようで、俺は見とれていたんだ。

「KEEEEEEEE!!」

麻耶が切った死神がそんな奇声を上げながら蒸発していった。

一瞬の出来事だった。羽のように舞う麻耶を見て、俺は口を開けることしかできなかった。

見事、地面に着地した麻耶は髪を整え笑顔で俺の方に向き直り言った。

「さて、教室に戻るわよ。授業が始まってしまうわ」

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