魔法使いのおっさん
館の中は、豪華な作りだと思っていたが、薄暗く見るからに幽霊屋敷だ。今にも崩れそうな床で歩く度にギシギシと軋んでる。大きい蜘蛛の巣まである。外見は立派なのに。
物静かで不気味な長い廊下を歩かされた。そういえばさっきまで一緒に居たじいさんがいない。まぁ、どうでもいいか。
気持ち悪かったし。
牛さんに地下室まで連れて来られ、牢に入れられた。これから牢獄生活か誰かの奴隷になるのか…。
上からの水が床に弾く音以外何も聞こえない。突然、孤独感が襲ってきた。寂しさや、恐怖。一人でいると気が狂いそうだ。
壁にもたれかかり、絶望に浸るしかない。
羊野郎といい、あの牛さん。ここは自分が知っている地球ではない。
あぁ……元の世界に戻りたい。家が恋しい。どうやって戻ればいいのか。
そういえば、あの本は見当たらない。
羊野郎が取ったのか。
あの本がなければ元の世界に帰れない。
帰れると決まった訳でもないが…。
どちらにしろこの状況は最悪だ……。
色々と考えてるうちに眠りに入った。
数時間後。
牢の扉が開く音で起きた。
「おい、一緒に逃げるか?逃げるなら早くしろ」
黒い服を着たおっさんが言ってきた。
おぉ…神様。まだ俺は見捨てられてない。
神様に感謝と思いおっさんについて行くことにした。
こいつも捕まってたのか?それとも俺を助けに来てくれたのか。
色々と疑問があるけど今は、逃げることに専念しないと。しかし、こいつは走るのが早い。
おっさんのくせにまるで忍びみたいだ。
逃げてる途中にあの牛さんに出くわさないか心配だ。
静かな館の廊下を駆け走る。今アドレナリンMAXだ。心臓が飛び出そうなくらい振動が伝わってきた。
ドキドキしながらも、無事に館の外に出れた。
逃げれてよかった。安心して溜め息をついていたら、おっさんが話かけてきた。
「ここから早く離れた方がいい。ついてこい」
まともな人間がいてよかった。
とりあえずこのおっさんについて行けば、助かる。そう思いついて行くことにした。
館の裏にある森林に入っていった。
町の外に向かってるのか?まぁ、牛さんに見つかると危ないし、今はこのおっさんを信じるしかない。
おっさんは黙々と森林の奥を突き進んだ。
だいぶ時間が経ったのか、空が段々と暗くなって、肌寒くなってきた。
息を切らして必死について行くが、もう体力が持たない。
おっさん、結構歩いたよ。
もう疲れたよ。パトラッシュ。
ギブアップ宣言を言おうとしたとき、おっさんは振り返って言った。
「ここだ。足元を見てみろ」
足元?下には枯れ葉や草しかない。
何言ってるんだよおっさんって思ってたら、おっさんが足元の枯れ葉を避けた。
すると、何やら赤色の模様が出てきた。
「いま呪文を言うから待ってろ」
はて?呪文?やっぱりただの変人かおっさん。
やっぱり付いてきたの間違いか。一人で逃げたほうがよかったか。
黙っておっさんを見てると、ぶつぶつと何かを呟いている。すると、足元が赤く光だしたと思ったら、瞬く間にどこかの家に俺は居た。