表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/4

落ちた少女の視点

視点:落ちてきた少女


ハッキリ言おう、今日は厄日だ。


私、如月(きさらぎ) (かなで)の不幸は朝から始まった。


幼馴染みの二人と共に学校へと向かう途中、犬の糞を踏んだ。


昼休みに水道管が破裂して全身がずぶ濡れになった。


課題は忘れる、重い実験器具を運ばせられる、いつものように幼馴染み二人のストロベリーで初々しい空気に当てられる。


なにより学食の日替わり定食が、エビフライからカキフライになっていた!?


もう踏んだり蹴ったりな日に辟易し、さっさと帰ろうと朝と同じ面子で下校した。


「あーもう! もう厄日としか言いようがないわ!!!」


途中で買ったクレープを片手に、ぷんすかと頭から煙りを出す。


その様子を見て、長い髪を三つ編みで一つに纏めた少女が吹き出す。


「かなちゃん、もう良いじゃない。ぷりぷりしないで?」


彼女は雪代(ゆきしろ) 鈴香(すずか)、子供の頃からの親友だ。


昔から体が弱く、その所為で虐められた事も多かった。


そんな鈴香を守るのは自分の役目だった、しかしそれもお役御免になる筈。


その理由は・・・


「おーい、待てよ―!」


後方から男性の声が聞こえてくる。


声と共に現れたのは、スポーツバッグを肩にぶら下げている少年だった。


狭霧(さぎり) 悠真(ゆうま)、私のもう一人の幼馴染みだ。


「何してたの?」


「いや、雑誌の新刊を見つけたから買ってた」


他愛ない会話をする二人の幼馴染み。


私はそれから一歩半ほど下がりながら付いていく。


どちらもお互いを憎からず思っている・・・というよりも、恋愛感情手前まで至っているのだ。


高校生になり、どららも自分の思いに気づく頃合いだろう。


ならば自分は一歩下がり、それを温かく見守るのだ。


何? 手伝わないのかって?


あはは♪ こんなラブコメ臭のひどいバカップルと一緒に居たいと思う?


私はMじゃない、だから離れる!


そんな感じに脳内会議を終わらせると―――異変に気づいた。


「鈴香! 悠真!」


目の前にいたはずに二人が、足下に浮かび上がった魔方陣?の光で、その姿が砂のように消えていった。


慌てた私は手を伸ばし、消えかけた二人を追った





―――と思えば、気がついたら空の上だった(泣)






「い、いやぁぁぁーーーーーーーーーーーーっ!?!?!??!」


今まででこんなにも必死な声を出した事は無かった、重力に退かれ真っ逆さまに落ちていく。


一瞬、死を覚悟したがそれほど高度は無かったのか、痛みは許容範囲内だ。


目の前にいるそれは、ハッキリ言って外の外だった。


灰色の鎧(全身を覆うフルメイル?)、プロレスラーも真っ青の体躯。


一瞬の出来事に言葉が出ない。


「あ、うぁ・・・」


言葉を出そう、そう思っても呻き声にしかならなかった。


そしたら、鎧は手に持っていたナイフを・・・





               振りかぶった。





ザシュッという音、頬に掛かった生臭い液体。


その色が赤だと知覚すると、すぐに脳は【血】であると連想させた。


しかし体に痛みはなく、【血】も頭上から降ってきたのだと分かる。


思わず上を見上げると、そこには【異形】が存在した。


人型ではあったが体格はは一般男性よりも一回り大きく、全身に鱗はあり手足に水かきのような物が付いている。


映画や漫画などに登場する半魚人(マーマン)、それが鱗のない首にナイフを突き立てられて身悶えしていた。


深々と突き刺さっていたナイフを難なく抜いた鎧は、くるりと片手で柄を回し逆手持ちにすると背後へ投擲する。


「ぐぎゃァッ!?」


海から甲板によじ登ってきた半魚人は、眼球にナイフを投げつけられ短い悲鳴と共に海へと落ちた。


間髪入れずに身悶えているもう一匹の傷口に手刀を押し入れ、なんとか残っていた血管毎 引き千切った。


びちゃりと、吹き出た返り血が鎧を赤く染める。


その様を唖然として見ていた私を含めた三人は、血まみれの鎧に引っ掴まれて無理矢理に船内へ入れられた。


「な、何なんだ!?」


「この海には魔物は出現しないと聞いていましたが・・・」


「何よ! 何よアレ! 何なのよ!?」


状況について行けず、フードの男と一緒に叫んだ。


見たくはないが、状況を確認するため外へと繋ぐ扉の窓を覗き込む。


何が起こっているのか、たとえ幻覚のような物でも知りたかった。


しかし、すぐに後悔することになる。


窓から飛び込んできた映像は、自身の想像を遥かに超えた代物だったからだ。


先ほどの半魚人が群れになって甲板によじ登って来ていた。


どれも飢えた表情を貼り付け、鋭い牙が涎を滴らせながら垣間見える。


10数匹は降らないであろう異形の群れが周囲を囲み、一人に向かって明確な殺意を向けていた。


すると、鎧は壁に立てかけていた二振りの剣を鞘から抜いた。


剣は両刃の中央の溝に文字が刻まれ、鍔には赤い宝石が埋め込まれている。


もう片方は片刃であり、柄頭には青い飾り毛が付けられていた。


ヒュンと二本の剣を振り抜くと、だらりと両腕を垂らして構えた。


「「「ぐぎゃぎゃぎゃ!!!」」」


人の声とはかけ離れた濁音を響かせながら、手始めとばかりに三匹が無防備な構えの鎧に向かってくる。


しかし、それに対して動揺の色をまったく見せない。


半魚人が噛みつこうと飛びかかり、鋭い牙が触れようとした瞬間。


襲ってきた三匹の首が、明後日の方向に飛んでいった。


まるでバネ仕掛けのように飛んだのかと錯覚したが、二本の剣に付いた血が【斬った】のだと証明している。


一瞬、一瞬ではあったが見えた。


同時に飛びかかった半魚人だが、最後の一匹だけ僅かに遅れていた。


向かってくる二匹を両方の剣により首を刎ね、最後の一匹を剣を十字に交叉するように斬りつけたのだ。


こうも簡単に切り倒されたことに驚いたのか、異形の群れは動きを止める。


鎧は風のように駆け抜けたかと思うと、端の方から順に半魚人を切り刻んだ。


剣を一度、たった一度だけ降るだけで腰から上は力なくずり落ちる。


一匹、二匹、三匹四匹斬り伏せる姿は、優美も華麗さも無い愚直のな姿ではあったが―――美しかった。


まさに竜巻、敵を引きずり込み両断する。


気がつけば、群れはたったの一匹だけになっていた。


しかし、異形は逃げるという選択肢を思いつかなかった。


「ぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃーーーーー!!!」


寄生を発しながら、異形は飛びかかる。


―――だが、それさえも許さず脳天から股間まで両断された。


斬られた肉体は突如として燃え上がり、瞬く間に灰になって空へ消えた。


残った屍に両刃の剣を突き刺していく。


そうすると、また同じく燃えて灰になる。


剣を鞘に納め、鎧は空に向けて何か呟いていた。


「―――せめて、安らかな眠りを」


予想だにしていなかった優しげな声音は、私の疲れ切った脳と精神の糸を切り、気絶へと追いやったのであった。





まだまだ勘違いが出せない・・・!

感想、ご意見などがございましたら気軽にお書きください。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ