船の上? アレー?
短いけど気にしない!
精霊と女神が作り出した世界―――この世界がそう呼ばれるようになったのは、もはや誰も分からない。
人と亜人、精霊、魔獣、この世界には多種多様の存在が確認されている。
そんな中、奇妙な噂が流れていた。
“最大の大陸”ことユアンパル大陸、全陸地面積の4割を占める巨大な陸地。
そこから北へ向かうと、誰もが一度は聞いたことがある伝説があった。
精霊が滅び、女神の慈悲が消えしとき
この世は滅びに包まれよう
滅びに世界が嘆きしとき、蒼穹の神子舞い降りる
神子の祈りが滅びを討つ
さすれば世界は新たなる道を築くであろう
もはや埃が被ったような伝説は、とある海の果てから伝わったとされている。
奇妙な噂とは、その海に亡霊が現れたという物だった。
常に霧に覆われた海に、美しい音色と共に巨大なガレオン船が現れる。
誰が音色を奏でているのか、乗組員の姿も見つけられない。
しかし、一人だけ居るのだ。
灰色の鎧を纏い、何も無い霧の向こうを見つめる者が。
故郷か、友か、恋人か、その者は何も語らない。
船の主か、それとも船に縛られた存在か。
ただ一つ分かるのは、けして関わってはいけない。
関われば、待つのは永遠の地獄なのだそうだ。
視点:運搬者
何だろう、不吉な話を聞いたような・・・
あーどもども、無職ネトゲ廃人ことジョッシュです。
気軽にジョーって呼んでね☆(キランッ
・・・うざい、猛烈にうざい。
双眼鏡を片手に霧を見つめています。
気を失った後、気づいたら船の上だったよー
周囲に人影無し、でっかい船に一人だけ。
しかも格好は厳つい鎧姿、手には物々しい凶器の山。
一発で理解したね、これは夢だ。
夢の中ってのは非情にあやふやだ、記憶が入り交じって変てこな代物になる。
だってそうだろ?
自キャラとそっくりな姿になるわ、オクトパス号に乗ってるわ、それが一月くらい続いているわ。
ご丁寧な事に水と食糧も完備、ほとんど底をついてるけどwww
最後のパンと水を胃に放り込むと、大きく伸びをする。
甲板に寝そべり、もはや飽きるほど嗅いだ潮の臭いと波の音。
あーあー、もう何ともならんねぇ。
そんな事を考えてたら、顔の横にナイフが刺さってたでござる。
え? 何なの? アレー?
視点:旅の青年&従者
「おいおいおいー! 何でナイフ投げやがった!?」
甲板の陰に隠れながら、二人の男女は息を潜めていた。
男性は腰から剣を提げ、フードで顔が見えない。
片割れの女性はメイドだった。
メイド服・エルフ耳・ミニスカートの三拍子である。
「動きが有りませんでしたので」
「それがどうしてそうなるの!?」
巷で噂になっている亡霊の姿を(従者が強引に)見に来たまでは良い。
小舟をかっぱらったまでも許容しよう。
「何を考えてんの?! 滅茶苦茶強そうだよ!?」
武器は持っていないが、それでも溢れ出る強者の風格。
ナイフが顔の横に突き刺さっても、身じろぎ一つしない。
やばすぎる、ハッキリ言ってやばい。
「良いから逃げるぞ、このままじゃ―――」
メイドは自分を見ていなかった。
正確には、その後ろを見ていた。
後ろには―――先ほどのナイフを片手に、二人の正面で鎧が佇んでいた。
心臓が止まりそうになりながらも、男は平静を保とうとする。
剣の柄に手を掛け、メイドは懐からトランプに似たカードを取り出した。
「・・・まいど」
鎧はナイフを眺めながら言葉を紡いだ。
「・・・何処へ行く」
ど、何処へ・・・ってまさか!
海の怪物の腹の中? あの世!?
「―――此処から南の街に行ってください」
あれやこれやと顔を青ざめている男を無視して、メイドは地図を鎧へ渡す。
メイドの指し示す街を確認すると、鎧は数秒ほど何かを思案するかのように佇んだ。
―――その時、“空”が歪んだ。
水面に小石を投げたように波紋が広がり、穴のような物が出現する。
光のない“黒”から何かが落ちてきたと思ったら、“声”が鼓膜を震わせた。
視点:勘違いされそうな鎧
目の前には男女の二人組、恐らく先ほどのナイフは彼らだろう。
いやはや、驚いた。
まさか船賃がナイフだったなんて。
速い、安い、凄いがオクトパス号ですよっと。
彼らもナイフだけでは安いと思ったのだろう、腰の剣とカードみたいな物を出そうとしている。
「何処へ行く」
HAHAHA、此処でもぶっきらぼうにしか話せないや♪
するとメイドさんが地図を渡してきて、南の街に行きたいと言ってきた。
ほうほう、成る程ね。
それじゃま向かいますか、え? 行けるのかって?
大丈夫だ、問題無い(キリッ
街は既に見つけてるし、船だって風が無くても動かせる。
ただ一人だけじゃ怖いから行かなかっただけだ!
さてさてさて、まんずは客室で待っていて貰うか。
水しか出せないけど。
そんな事を考えてると、何やらマストの辺りがぐにゃ~ってなってた。
《メッセージが入りました》
《ミッション追加:神子の守護者》
《ミッション内容:蒼穹の神子の全クエストをクリア》
《達成条件:神子の生存、クエストの完了》
頭の中にそんな感じに浮かび上がった。
そしたら空から落ちてきた物に、視界が埋め尽くされた。
真っ白な布地が見えると、衝撃が体を走る。
「いたたた・・・」
それはこっちの台詞だよ。
モロパンを見せてくれたのは何処ぞの学校の制服なのか、ブレザーを着たポニーテールの少女だった。
黒髪黒目、日本人の心だ。
ううむ、この子もお客さんかね?
まぁ、どうせ夢だ。
適当にやってくかー
まったく話は進むんでいないが、頑張ろう。
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