金髪のお話②
「こ、これは・・・・・・」
自動定期鼓膜破壊装置(旧名:目覚まし時計)によって私が不機嫌にも目を覚ますと、私の目の前にさらに怠惰を強制するかのような光景が広がった。
なんと、水彩絵の具が色とりどりに私の部屋を染め上げているではないか。80万円ほどしたエーロ・アールニオのボールチェアが、なんともカラフルに仕上げられている。
「まさか、奇襲でもされたのだろうか?」
しかし貴重品を取られた痕跡は見られないため、犯人は愉快犯であることは間違いない。しかし、そもそも私は人から恨みを買うようなことはしていないはずである。
「待て・・・・・落ち着け・・・・」
しばらく経過
「待て!これは昨日の夜に起こった出来事だ!」
記憶を巻き戻しすぎて赤子の時代まで戻り、あろうことかそれを懐かしんで昨日の夜に記憶を張り巡らせるまでの時間が掛かったのだが、しかし私は昨夜の出来事をアリアリと脳裏に蘇らせた。
「あの時はふざけた儀式の帰りと酒の酔いで事態を深くは受け入れてはいなかったが・・・・・しかし、日光の下だと尚更美しく見え・・・・・」
色々と回りくどい説明は抜きにする。
悲しかった。
※
結局、水彩絵の具を全て拭くのは昼まで掛かった。
終わった後、2時間も動いていないのに何故かこれから動くのがたまらなく億劫である。腹は減っているのだが、しかしそれでもフライパン片手にじうじうベーコンを炙ることにさえ抵抗があった。
そうと決まればさっさと寝ようと私が床に横たわったところで、床の素材に使われている木材の力のおかげかは知らないが、私の腐りきった脳に一つ思い当たることがあった。
ぶちまけられていた水彩絵の具は勿論私の家の物であり、しかもあの光景を見る限り相当な量を使われているハズである。
恐らくぶちまけられる直前まで水彩絵の具があったであろう部屋を漁ると、見事にゴミ箱から水彩絵の具が詰まっていたであろうチューブを数十個発見した。