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あの時、っていつ
本当に20秒で読み終わります。
翌日から、現実世界にも綻びが現れ始める。
昨日、確かに話したはずの会話を、
相川が覚えていない。
「そんな話、したっけ?」
逆に、俺が知らないはずの出来事を、彼女が当然のように語る。
「あのとき、あなた泣いてたよね」
――そんな“あのとき”は、存在しない。
――あの時がわからない。
街を歩いていても、奇妙な感覚が続く。
同じ信号なのに、赤になるタイミングが微妙に違う。
同じ看板なのに、文字の配置が昨日と違う。
歪んでいる。ズレている。俺は今どこを歩いている。
世界が、細かい選択の積み重ねで揺れている。
俺はわかっている。分岐点は、あの事故だ。
救ったことで、救わなかった世界が切り捨てられたわけではない。
両方が残ったまま、重なっている。
あっちの相川は死んだんだ、予告通りに。
じゃあ、俺は何回「俺」を殺したんだ?
何人俺は誰かをこっちから消した?
一体俺は誰なんだ。




