表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

秘めた恋心

作者: 雨とともに

昼下がりの教室。

黒板から小さく奏でられる音、

先生の話す声が静かな教室に響く。

時折吹く風がカーテンを揺らし、

僕らを優しく包む。


斜め前の君を見る。

船を漕ぎながら、それでも手は動かしおり、眠気に負けじと戦っている姿は

なんとも微笑ましい。

先生の話す声は子守唄のように聞こえているのだろうか。

風はゆりかごのようなのかもしれない。

後で「寝そうになっていたでしょ」なんて言えば

「そんなことないよ」と強気で返してくるはず。

そして「じゃあ、ノート見せてよ。」と僕が言うと、

「いじわる。」と返ってくる。

今まで何回かしたことのあるやりとり。

見られていることが恥ずかしいのだろう。

気持ちはわかる。

でも安心してほしい。

クラスの3分の1は君と同じようなことになっていたし、僕も同じだ。


このクラスになって最初は隣の席だった君。

音楽の趣味が同じってわかってから、よく話すようになった。

それから新曲が出るたびに感想を言い合ったり、発掘してきたアーティストを紹介しあったりした。

僕がおすすめしたアーティストを聴いて、

「いいね、私も好き」と言ってくれたことが何より嬉しかった。

人懐っこい笑顔の君を見ていると僕も元気を貰えた。

そしていつしか君のことばかりを考えるようになっていた。

学校に来れば君に会える。

毎日学校に来るのが楽しみになっていた。


それでも永遠に思えるこの瞬間もいつか終わりを迎える。

このままいけば卒業してそれぞれ別の道を歩んでいき、友達としてたまに会ったりする関係になるのだろう。

もしくは疎遠になってしまってお互い知らない時間を過ごして思い出として記憶に残るか。

本当は君の隣を歩いていたいし、もっと君ののことを知りたい。


もしも今、この先もずっと一緒に隣でいてほしいなんて言ったら、君はどんな顔するのだろうか。

驚いた顔、嬉しそうな顔、それとも。

怖くて言えない。


ある日の古典の授業で先生が言っていた和歌が、僕のことのようだと思った。

この先、その和歌を見るたび僕は君を思い出すだろう。

それと同時に思い出にならなければいいのにと、思う。


かくとだに

えやは伊吹の

さしも草

さしも知らじな

燃ゆる思ひを


今はまだ知られないままでいい。

君の背を眺めながら、想いを馳せる。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ