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2人の騎士団団長

「なんだこいつ……黒い狼?」

「グルルルルゥ……」


大規模な破壊を伴いながら広間に現れた黒い狼を前にアレスは戸惑いを隠すことが出来なかった。

この狼が城壁を破壊する直前、アレスは直感でこの魔物の接近を感じ取っていたのだ。

この魔物と会う前には自分の知っている存在ではないかと考えていたアレスだったが、目の前にいる黒い狼にアレスは全く心当たりがなかった。


(俺はこいつを知らねえ……だが、こいつは俺を知ってるのかもしれない)


しかしアレスは見覚えのない狼の魔物を前に、心の中でそんな可能性を考えていた。

狼の魔物は目的があるように街を破壊し進んでいたが、アレスを前にしてその進行を止めたのだ。

それゆえに魔物の目的が自分にある可能性を考えたアレスは魔物に声をかけてみようとする。


「おいお前、もしかして俺に何か用が……」

「ウォオオオン!!」

「っ!?」


しかしアレスが対話を試みようとしたその直後、その魔物は勢いよくアレスに襲い掛かってきたのだ。

アレスはその魔物の突進を地面を転がりながら回避する。


「くそっ!魔物に言葉が通じるわけねえか!」

「グルルルル……」

「どんな事情があるか知らねえが、街に被害を出したんだ。ひとまず制圧させてもらうぞ」


殺気を剥き出しにする魔物に対し、アレスは気を引き締め直して剣を構えた。

街への被害を考えると遊んでいる余裕など一切ない。

だからこそアレスは本気でその魔物を倒そうと向かい合ったのだが……


(こいつ……とんでもねえぞ……)


完全な戦闘態勢に入りその魔物と対峙したアレスは、一瞬でこの魔物の恐ろしさを肌で感じ取ったのだ。

鋭い眼光で睨みつけた魔物は地面が抉れるほどの踏み込みを見せ、真っ直ぐにアレスに襲い掛かった。


「くっ!!」


魔物の突進を紙一重で回避したアレス。

しかし自身のほんの数センチ先を風を巻き込みながら通過していった魔物の勢いに冷や汗を流す。

突進を躱された魔物はその勢いのまま向かいの建物に突っ込む。


「また来るっ!!」

「グォオオオ!!」

「がぁ!?」


魔物が突っ込んだ建物は大量の土煙を上げ崩れ去る。

土煙により魔物の姿は完全にみえなくなってしまった。

しかしアレスはすぐに魔物が追撃を仕掛けてくる気配を感じ取り防御の姿勢を取る。

その直後再び突進を繰り出してきた魔物は、今度は鋭い爪の生えた右前足を振り上げ純粋なパワーを持ってアレスの防御をいともたやすく貫いたのだ。


「ごはっ!!」


鋭い爪で引き裂こうとする魔物の攻撃を何とか剣で防いだアレスだったが、魔物のパワーを受け止められず後方へ勢い良く吹き飛ばされる。

そうして建物に激突したアレスはあまりの衝撃に一瞬意識が飛びかけてしまった。


「グォオオオ……」

(まずい……)

「アレス!!大丈夫かぁ!?」

「な、なんですかあの魔物は!?」

「っ!お前ら……」


しかしその時、勢いよく飛び出したアレスを追いかけてきたジョージ達が魔物の前に現れてしまったのだ。

吹き飛ばされていたアレスは魔物から距離が離れており、魔物は近くに現れたジョージ達に視線を向ける。


「来るなお前らぁ!!早く逃げろ!!」

「お、おい。これやばいんじゃねえか!?」

「だから俺様は早く避難したほうが良いといったんだ!」

「まずい!襲われる……」

「グヲォオオオ!!」

「っ!?」

「はっ!?なんでこっちに来るんだよ!!」


魔物と目線があってしまったジョージたちは圧倒的な戦闘力の差に瞬時に自身らの命の危機をさとる。

しかし魔物はジョージ達に一切の関心を示さず、ジョージ達よりも離れた場所に居たアレスに襲い掛かったのだ。

建物に叩きつけられた痛みを押し殺してアレスはその突進を転がりながら回避する。


「お前ら!!コイツの狙いは俺だ!お前らは巻き込まれないように遠くへ逃げてくれ!!」

「あ、アレスさんはどうするんですか!?」

「俺が逃げたら被害が広がっちまう!なんとかするからお前らだけでも早く!!」

「わかりました!!」

「あ、アレス!何とかうまいこと逃げてくれよ!」

「……っ!」

「バンド様も!!早く逃げましょう!!」


今の魔物の動きから、自分が狙われていることを確信したアレス。

この状況で自分が逃げればそれをこの魔物が追いかけて来てしまい被害が大きくなってしまう。

そのためアレスは逃げることなくここでこの魔物と戦い続けることを選んだのだ。

アレスの言葉に素直に従い逃げることを選択したジョージとマグナ。

しかしバンドは魔物による破壊の跡を見ながら静かに拳を握りしめていた。


「グォオオオ!!」

「あんま調子に乗るなよ!神速・韋駄天!!」


またしても突進してきた魔物にアレスは素早い動きで全身を斬りつける。

しかし闇を振り撒く漆黒の体毛に阻まれ魔物に傷を負わせられない。


「グルルル……」

「今度は何だ!?」

「ヴォオオオ!!」

「いっ!?」


突進をアレスに躱された魔物は再びアレスを正面に捉えると、何やら禍々しい魔力を増幅させ始めたのだ。

そして魔物の鋭く生えた牙の隙間から黒い炎が漏れ出たと思った次の瞬間、魔物は口を大きく開き黒い火の玉を放った。


「いきなりそれはナシだろ!!」


突然の遠距離攻撃にアレスは不意を突かれ回避に専念する。


「ヴォオオオ!!」

「んの野郎!!あんまり調子に乗るのもいい加減にしろよ……」


ボガァアアアアン!!


「アレスさん!!……っ!」

「黒炎!炎獅子の咆哮!!」

「ギャオォオオオ!!」


必死に回避をしたアレスに魔物は追撃の炎を浴びせる。

それを正面から喰らってしまったかに見えたアレスだったのだが、その火球を切り裂き、さらにその黒い炎を纏った状態で魔物に渾身の一撃をお見舞いしたのだった。

周囲の空気が震えるような一撃に魔物の体から鮮血が飛び散る。


「はぁ……はぁ……やっとこさ1発か。しんどすぎるな」

「グルルル……ウォオオオン!!」

「お前ら!!いい加減逃げろってんだ!」

「す、すみません!!早く逃げましょう!!」

「お、おう!」

「くっ……」


アレスの渾身の一撃を喰らった魔物だったが、その一撃は致命には至らず威嚇するように低いうなり声を上げていた。

その隙にアレスは再度ジョージ達に逃げるように促す。

その声にジョージとマグナは急いで広間から走り去り、悔しそうに歯を食いしばっていたバンドもまた2人の後を追うように走り去っていったのだ。


「さてと……本当は俺も逃げたいところだが……」

「ウォオオオン!!!」

「逃がしてはくれないよね。しょうがねえ。こうなったらどっちかがくたばるまでとことん……」


ヒュ~~~……


「ん?なんだこの音は……」


ドドドドドゴォオオオン!!


「っ!?な、なんだ!?」


再び魔物との1対1となったアレス。

倒すか倒されるかのこの状況にアレスが笑みを浮かべたその時、上空から無数の水の槍が降り注いだのだ。


「そこの少年、大丈夫かしら?」

「誰だっ!?」

「アレス君!?なんでこんなところに!?」

「っ!?ソシア!?お前こそなんでここに……ってことはまさか、その人は!」

「あら、なあに?あの少年、ソシアの知り合いなの?」

「ミルエスタ騎士団団長……スフィア様!?」


魔物はとてつもない威力の魔法に飲まれ土煙の中へと消えてしまった。

その魔法の威力に驚いたアレスは近くの3階建ての建物の屋上に目をやる。

するとそこにはソシアとその隣にたたずむ1人の女性の姿があった。

青みがかった銀色が美しい長い髪に宝石のような翠色の瞳。

紫の鍔の広い三角帽子とマントが特徴のグラマラスな美女。

それらの外見とソシアが一緒に居ることから、アレスはその女性がミルエスタ騎士団団長のスフィア・ラスケラだということに気が付いたのだった。


「スフィア様がどうしてここに」

「おかしなことを聞くのね。街に魔物が現れたのならそれを私が退治しに来るのは何も不思議なことじゃないでしょう?それよりも君、怪我はないかしら?」

「多少の擦り傷や打撲ははありますがなんとか……」

「ウォオオオン!!」

「なにっ!?」


ミルエスタ騎士団団長が助けに来てくれたということでアレスは一瞬魔物への警戒を緩めてしまっていた。

だがスフィアの魔法が直撃したはずの魔物は一切の傷すらなく土煙から飛び出るとアレスへの攻撃を再開したのだ。


(まさか、さっきの攻撃を喰らって無傷!?いや、それよりも……)

「アレス君!!逃げてぇ!!」

(まずい、油断した……)


魔物が動けないと思い込んでいたアレスは完全に回避が遅れてしまう。

スフィアも同様に警戒を解いてしまっていたため次の魔法が間に合わず魔物を止めることができなかった。


「グォオオオ!!」

「くそが……」

「冥帝・零!」

「グギャァアア!」

「こ、こんどはなんあ!?」


無防備なアレスに魔物の鋭い牙が迫る。

しかしその牙がアレスの肉にめり込む直前、どこからともなく声が聞こえ地面を抉る斬撃が魔物を直撃しそのまま吹き飛ばしたのだった。


「大丈夫か少年!危ないところだったな!」

「あなたは……まさか、オルティナ様!?」


やってきたのは赤茶色の髪を後ろでまとめた男。

燃えるような真っ赤な瞳にパワフルさを感じさせる引き締まった肉体。

紫色に薄く輝く大剣を携えたその男はミルエスタ騎士団と並んでこのエメルキア王国で2大騎士団の1つに数えられるダーバルド騎士団の団長、オルティナ・ディランだったのだ。


「アレス君大丈夫!?」

「ああ、大丈夫だソシア。それにしても2大騎士団と呼ばれる2つの騎士団の団長と同時に出会えるなんてな……ん?」


建物の屋上から降りてアレスに駆け寄って来たソシア。

心配するソシアに大丈夫だと返答したアレスだったのだが、その時アレスはとんでもないことに気が付いてしまったのだ。


『その2つの騎士団は滅茶苦茶仲が悪いんだ』

『40年ほど前に当時の2人の騎士団団長が殺し合い寸前の騒動を引き起こし……』


アレスの頭の中に浮かんでいたのはいつの日かクラスで2つの騎士団について話をしたときの会話。

エメルキア王国にある2つの大きな騎士団、ダーバルド騎士団とミルエスタ騎士団。


「おや!?あの屋根の上に居るのはまさか!?」

「あら?あの少年を助けたアイツは……」


その2つの騎士団はとんでもなく仲が悪く、その2つの騎士団の団長が相対してしまったこの状況はとてつもなくマズいんじゃないかとアレスは思い至ったのだ。

土曜日は昼くらいまで寝ることに決めた

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